第18話消えた体育祭
五限目のLHRの時間に担任教師が教壇に立つと申し訳無さそうな表情を浮かべて口を開く。
「えぇ〜楽しみにしていた人には申し訳ないのですが…今年から本校では体育祭がなくなりました」
教師の言葉を耳にした運動のできる陽キャ達は反論の言葉を口にする。
「は?意味分かんないんだけど!なんで!?」
「体育祭楽しみにしてたのに!」
「横暴だろ!」
一部の生徒たちの声に耳を傾けている担任は本当に申し訳無さそうに口を開く。
「えぇ〜理由としては全ての生徒が楽しめないことが原因となります」
担任の簡潔な言葉で標的になったのが陰キャたちだった。
「出来ない奴らにあわせるっていうのかよ!」
「俺たちには関係ないし!」
「ってか誰がそんな横暴を認めたの!?」
未だに反論のある生徒たちの言葉を耳にした担任は最終的に彼らを宥めるように口を開く。
「生徒会と教師陣で話し合った結果です。皆が楽しめない学校行事には意味がないと言う結論に至りました」
「そんな事言ったら楽しみにしていた俺らの気持ちはどうなるんだよ!」
「そうですね。代替案としては文化祭の日数を増やすということで落ち着きました」
「いや、文化祭だって楽しめない奴ら居るだろ」
「ですが体育祭よりかはハードルが低いかと…楽しめなくても誰でも参加することが出来ますから」
「体育祭だって同じじゃね?」
「そうかもしれません。ですが同じ学校の生徒で順位をつけて競う必要は無いという生徒会からの意見でして…」
「文化祭だって順位付けあるでしょ?切磋琢磨って言葉もあるし」
「今年から文化祭での順位付けもなくなりました。各々のクラスが伸び伸びと催し物楽しめるようにということで落ち着きました」
「そんなの生徒会の勝手な意見じゃないの?」
「そうかもしれません。でも少なくとも皆さんの文句よりも生徒会の申し出のほうが説得力がありましたので」
「もう覆せないんですか?」
「少なくとも今年は無理ですね。決定事項なので」
「そんなの勝手すぎる!」
文句を言っているのは一部の陽キャグループだけで他の生徒は特に意見はなさそうだった。
僕もその一人で体育祭がないことに安堵していると前の席に座るさらりが僕の方に振り返る。
「体育祭がないのは少しだけ残念だけど…文化祭が多くて楽しみ」
「そうだね。生徒会の意見も理解できるし。全校生徒の事を考えてくれたんだろうから納得かな」
「出来る人たちが文句を言うのも理解できるけどね」
「クラスの様子を見ると体育祭を楽しみにしていた人のほうが圧倒的に少なさそうだけど…」
「そうだけど…少数を切り捨てるようなやり方は少しだけ気に入らないかな」
「でも文化祭の日数が増えて最終的には殆どの生徒が楽しむんだと思うよ」
「そうだね。とにかく次の文化祭を楽しみにしよ」
「だね」
運動のできる陽キャと担任の話は決着して文化祭の出し物の話に移行した。
結局、僕らのクラスの出し物はお化け屋敷に決定して僕とさらりは宣伝係に任命されるのであった。
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