第17話久しぶりの休日デート
休日の日曜日のこと。
僕らは街に出かけていた。
久しぶりに思い出したかのようにさらりの学校とは違う姿を目にして心が弾んでいた。
いや、別に夏休み中も彼女はメガネを外してコンタクトで過ごしていたのだが…。
ただ街に溶け込むさらりを目にして不思議と気持ちは高揚していた。
「今日もおしゃれだね」
思った感想を口にするとさらりは軽く微笑む。
「ありがとう。今日はちょっと気合を入れておしゃれしてきたから」
「どうして?」
「ん?ライバルの出現に少しだけ危機感を覚えたからかな」
「ライバル?」
「何でも無い」
さらりに華麗に話をスルーされるとショッピングモールに入っていく。
中の店舗を出来るだけ隅々に周っているとクラスの女子グループを発見する。
「面倒だから隠れよ」
さらりは身を潜めて回避をしようと努めていた。
思惑通り女子グループは僕らに気付くこともなく通り過ぎると顔をあげる。
「やり過ごせたね」
「良かった。この姿がバレたら面倒そうだったから」
「そうだね。僕も浮気を疑われていたかもしれない」
「普段の私と相当違うからね」
「どっちも良いと思うけど」
「前はそんな風に思ってなかったでしょ?私のことモブ女子だと思ってたでしょ?」
「それは…」
「そう思わせてたんだから良いんだけどね」
「ごめん…」
「謝る必要なんて無いよ」
「そっか…ありがとう」
会話が途切れることはなくショッピングモールで平和に過ごしていると尿意を催して近くのお手洗いに向かう。
お手洗いに入るために角を曲がって用を足すと手を洗って外に出た。
「あれ?真田くん?一人?」
お手洗いを出ると偶然にも姫野と鉢合わせて僕は多少の混乱を覚える。
「えっと…」
「あぁ。デートね。それで彼女は?」
「今はお手洗いに…」
「そう。休日に外で会うことも無かったし。どんなファッションしているか見てみましょう」
姫野は学生らしくおしゃれなファッションをしていて少しだけ自信に溢れた態度を取っていた。
僕よりも遅れてお手洗いから出てきたさらりは姫野を見て確実に表情を引き攣らせた。
「雪見くん。行こ」
さらりは僕の腕を引くと先を急ごうとする。
「え!?ちょっと待って!副嶺さんなの!?」
さらりの姿を見て明らかに動揺している姫野に少しだけ同情した。
「そうだけど。姫野さんは休日に一人?」
「そうだけど…。え…?学校と全然違うじゃない!」
「まぁね。彼氏にしか見せたくない姿ってあるでしょ?」
「ぐはっ…!私には経験がないのでわかりませんが…」
「そうだったね。姫野さん。ずっと彼氏居ないもんね」
「………うわぁ〜ん!」
さらりからの唐突な精神攻撃に姫野は泣き声を上げながらその場を後にする。
「姫野さんにバレちゃった…誰にも見られたくなかったんだけど…」
「姫野さんなら黙っていてくれるでしょ?他人の秘密をペラペラ話すような人じゃないと思うし」
「やけに信頼してるんだね」
「相手は優等生だから」
「それだけ?」
「それ以上の理由なんて無いよ」
「そう。なら良かった」
本日は勉強の息抜きのために久しぶりにしっかりとしたデートをして過ごした。
勉強に関する話も一切せずに何もかもを忘れて完全休養日にしていたのだ。
「また明日から勉強に力を入れようね」
「うん。色々と面倒を見てくれてありがとうね」
「同じ大学に通いたいって私の我儘だから」
「そんなことないよ。僕も出来れば一緒の大学に通いたいし」
「そう。それならよかった。じゃあまた明日ね」
駅前で別れるとそれぞれの帰路に就く。
帰宅すると明日の時間割を見て顔をしかめた。
「LHRは体育祭の種目決めだよな…目立たないようにしよ…」
そんな消極的で弱気な言葉が部屋の隅に消えていくと明日に備えるのであった。
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