第11話擬似的旅行

さらりの家で過ごしたのは一週間程度だった。

その間、僕らは宿題をして過ごしたり時々イチャイチャして過ごしていた。

けれどそんな日も終りを迎えて僕は自宅に帰ることになる。

何か特別な事情があったわけではなく…。

単純に学生なため家を空けすぎるのは良くないと両親から連絡があったのだ。

帰宅すると僕はさらりにメッセージを送る。

「宿題は予定通り終わったね。明日は何処に行こうか?」

「擬似的な旅にいこうよ。夏休み前に話したでしょ?」

「わかった。じゃあ明日は朝から駅に集合で良い?」

「うん。10時でも良いかな?早すぎる?」

「一日中遊ぶならそれぐらいが良いかもね。わかった」

僕らはそこで明日の予定を決めると準備を整えるのであった。


翌日。

目が覚めると素早く準備を整えて家を出る。

駅前に9時55分に到着するとさらりのことを待った。

彼女はその数分後に姿を現すとバス停を指さした。

「暑いからバスにしよ。降りたい所で降りて気ままに旅している気分を味わおうよ」

「良いね。何も調べずに行こうか」

「そうしよ。スマホの電源も切って」

それに頷くと僕らはスマホの電源をオフにしてバスを待った。

数分後にやってきたバスに乗り込むと景色を眺めながら車内で揺られる。

「こんなところに喫茶店ってあったんだ」

バスに揺られて30分程が経過した場所にひっそりと建っている喫茶店を目にした彼女の一言により僕らはそこで降車した。

店内に入ると雰囲気のある内装に感嘆のため息をつく。

「おしゃれなお店だね」

さらりは思わず口から漏れた感想を口にすると嬉しそうに微笑む。

ウエイトレスが席に案内をすると僕らはメニューを開く。

「何にする?軽食も食べようか」

「じゃあカフェラテとサンドイッチにする」

「僕もそうしようかな」

ウエイトレスを呼ぶと僕らは注文を済ませてそれらが運ばれてくるのを待った。

「ご両親は怒ってなかった?」

「何に対して?」

「私に」

「怒るも何も世話になってたのは僕の方だし…むしろ感謝してたよ」

「そうなの?」

「うん。今度家に連れてきなさいって」

「お説教される?」

「されないでしょ。ごちそうしたいって」

「そっか…それは嬉しいな」

「また今度、予定合わせて家においでよ」

「うん。楽しみにしてる」

他愛のない会話を繰り返すと注文した食事が運ばれてきて僕らはそれを食す。

店内に居た時間は45分程度だったのだが十分な満足感だった。

会計を済ませて店を出ると再びバス停に向かう。

「次に来るの20分後だって…どうする?」

「じゃあこの辺、散策する?」

「そうしよっか」

僕らはそこから歩道を歩くと今までに入ったことのない道に積極的に行ってみる。

林道の抜け道を通ると見たこともない場所に出て僕らは軽く笑いあった。

「何かの映画で見たような景色じゃない?」

僕の一言に彼女も頷くと頭を悩ませているようだった。

「なんだっけなぁ…出てきそうで出てこないタイトルの映画」

「僕も思い出せそうで思い出せない」

「でもそのシーンの景色は凄い覚えてるの。ここにそっくり」

「だよね。あれなんだったかな…」

そんな何でも無い会話を一日中繰り返すと僕らの擬似的旅行は終了を迎えるのであった。

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