第10話夏休み後半戦

我が家で過ごす二人きりの最後の夜。

僕らは示し合わせたようにリビングのソファで肩を寄せ合ってテレビを眺めていた。

お互いの気持ちは明らかに一つだった。

だけど僕らはその一歩を踏み出せずに居た。

いつものように映画を観て過ごしているとベッドシーンが流れてきて僕らの心拍数は急上昇していた。

どちらからともなく顔を見合わせるとそのまま吸い込まれるようにキスをする。

「今日は僕の部屋で寝る?」

そんな誘い文句にさらりは静かに頷く。

僕らはそのまま手を繋いだまま自室へと向かう。

ベッドの縁に腰掛けると再び熱いキスをして…。

一夜を共にするのであった。


目が覚めて辺りには朝がやってきていた。

さらりは落ち着かない様子で帰宅の準備を整えると足早に僕の家を後にした。

「後で連絡してね?先帰って掃除しておくから」

「うん。両親にも話は付けておくから」

さらりはそれに頷くとそのまま帰路に就く。

彼女が帰宅してから数時間後に両親は帰宅してくる。

「ただいま。一人の生活はどうだった?」

母親からの問いかけを耳にして言葉に詰まってしまう。

「あぁ〜…彼女を連れ込んでたな?」

それにギクリと表情が引き攣ると母親は軽く笑う。

「まぁ良い経験だったんじゃない?」

「そうだね…これから友達の家に泊まりに行ってくるから」

「あんた友達居たっけ?」

「居ないこともない」

「嘘言いなさい。彼女の家に行くんでしょ?」

完全に見透かされている僕は再度言葉に詰まってしまう。

「まぁいいけど。迷惑かけるんじゃないわよ?」

「わかった。しばらく家を空けるから」

「はいはい。母さんが渡したもの覚えてる?」

それに頷くと母親は再度注意のようなものをしてくる。

「するときはちゃんと使うのよ?」

「わかってるよ…」

返事をすると僕は荷物を持ってさらりの家に向けて歩き出すのであった。


メッセージで送られてきた住所に向かうと高級そうなマンションがそびえ立っていた。

インターホンを押すとさらりはオートロックを解錠した。

そのままエレベーターに乗って目的階に向かうと家のインターホンを押す。

中からさらりが姿を現すと招いてくれる。

「帰ってきた両親にすぐにバレたよ」

「泊まってたこと?」

「そう。なんでバレたんだろ?」

「きれいに使いすぎたかな…」

「どういうこと?」

「両親が居ないのに掃除が行き届いてて不思議に思ったんじゃない?」

「僕一人じゃしないと思われてるってこと?」

「そうでしょ。男子高生なんてそんなもんじゃない?」

「たしかにね。一人だったら気付かなかったかも」

さらりはそれに微笑むと自室に僕を迎え入れた。

「今日も一緒に寝ようね?」

それに静かに頷くと僕らの夏休み後半戦は始まろうとしていた。

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