第6話夏休み中お泊り

「一回家に帰っても良い?」

目覚めると彼女は気まずそうに尋ねてくる。

「ん?全然良いけど?」

「色々と泊まる準備したいから」

「え?今日も泊まるの?」

「ダメ?」

それに首を左右に振って応えるとさらりは嬉しそうに微笑んだ。

「じゃあ一回帰るね」

さらりはカバンを持つと寝起きの状態で足早に家を出ていった。

眠気眼の状態でさらりを見送るとお隣の白砂家の玄関がガチャリと開いた。

「こんにちは」

挨拶を交わすとその相手、白砂零は気まずそうな表情を浮かべる。

「こんにちは。今の彼女?」

「はい」

「高校生でお泊り?感心しないなぁ〜」

誂うように言葉をかわす彼女に顔をひきつらせていると白砂零は微笑んで首を左右に振った。

「ごめんごめん。からかっただけ。真田さんの両親が旅行に行ったのは聞いてるよ。一人で大丈夫?」

「はい。彼女も助けてくれるみたいですし」

「良い恋人を持ってよかったね」

「ありがとうございます。これから仕事ですか?」

「うんん。私もこれからデート」

「そうですか。楽しんでください」

「ありがとう。じゃあまたね」

白砂零は車に乗り込むとそのまま駐車場を出ていくのであった。


さらりが僕の家を再び訪れるまで掃除機を掛けて過ごす。

リビングと各種の部屋に掃除機を掛けると洗濯物の存在に気付く。

掃除機を掛け終えると脱衣所に向かい洗濯機の中を覗き込む。

「僕一人分だから全然ないな…今日は良いか」

洗濯機の中身は僕一人分の洗濯物しか存在しておらず本日はそのまま放置することを決める。

さらりが家を出てから二時間近くが経過していた。

スマホを手にすると数分前にさらりから連絡が届いていた。

「後数分で着くよ」

それに了承の返事をすると彼女が来るのを待った。

宣言通り彼女は数分で家を訪れる。

「おかえり」

「ただいま」

なんて夫婦のようなやり取りをすると彼女を家に招いた。

「色々準備に手間取って。他人の家に泊まるのなんて初めてだったから」

「そうなんだ。だからそんなに大荷物なの?」

「ん?雪見くんの両親が帰ってくるまで泊まろうと思って」

「え…?」

「ダメだった…?」

「いや、全然ダメじゃないけど…良いの?」

「うん」

彼女はそれに頷くと荷物をリビングに運んだ。

「遅いお昼にするか、夕飯を早めにするか、どっちが良い?」

「夕飯を早めにしよ。まだお腹空いてないかも」

「わかった。じゃあこのままスーパーに行こうか」

「そうしよ」

僕らはそこから家を出ると最寄りのスーパーに向かい買い物を済ませるのであった。


余談だが買い物に行く途中に近くの川で水切りをして過ごす。

お互いの実力は五分五分だったため何の諍いもなく朗らかに過ごすのであった。

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