有名美少女配信者救済

 昼間に家を母親から追い出された。俺の部屋の掃除をしたいからって。母親は俺を邪険に扱っている。俺を面倒な存在だと思っているらしい。


 俺は家での立場がない。43歳で無職だから。


 はあ。やっぱり固定給20万のサラリーマンがいいよな? 俺、80憶しか持ってないし。普通の仕事なんて不器用だからできないよ。


 今更働きたくないんだよな。陰キャラだし、職場でイジメられたくない。やっぱり俺、陰キャだからイジメられるよな。人に挨拶とかするの怖いし。


 はぁ、先々のこと考えて暗くなっても仕方ない。80憶で島でも買おうかな? きれいな南の島。そこで、俺を好きな妹と二人で暮らそうかな?


 まあ、妹に言われたんだけど。ただ、気が進まないんだよな。妹には普通の結婚してもらいたいし。


 はあ、まあいいや。暇つぶししよう。


 奈落のダンジョンに行き過ぎて最近ドラゴン減って来たし、普通のダンジョン行こう。今日は昼間だし、狩りはいいかな? 敵も弱いし。


 転移!


 俺は渋谷のダンジョンに来ていた。ここの21階の泉のフロアが俺はお気に入り。


 なんだかいつも昼間で太陽がきれいだし、人もいないし、釣りとかたまに一人でやる。ぼーっとしながら、釣り竿をたれて、1日暇をつぶすのがいい。


 敵が敵が強いから誰もこのフロアに来ないんだよな。女の子とか人気出そうなきれいなフロアなのに。まあ、そこが陰キャでボッチな俺にはいいんだけど。


 ただ、今日は人がいた。


 なんか一人でしゃべってるカワイイ18歳くらいの美少女だ。5人の屈強そうなムキムキの男たちとカメラに囲われて守られてる。


「はい。今、私、メグミは渋谷のダンジョン21Fの泉のフロアに来てまーーす。こんメグ~! みんな元気? このフロアはね。敵が強いから誰も知らないけど、すごく泉と景色がきれいなんだよ。今日は最強のSSランク冒険者チーム「勇者の梯団」さんたちに守られてここまでやって来ましたーーーーっ♪」


> こんメグ

> こんメグ

> メグミちゃんかわいい

> すごい配信楽しみにしてた

> 100万人のファンがみんな君を観ているよ。


 俺はそっちの方を見たら、黒髪のショートカットで目がオレンジのすごいかわいい女の子が動画配信をやってた。


 俺は動画配信とかよくわからないけど、なにかすごく儲かるらしい。ただ、俺は目立ちたくないからなー。陰キャだし、人の注目浴びるの怖いよ。


 メグミちゃんっていうのはすごい人気の配信者らしい。なんか切り抜き動画で見たことある。水着でシャボン玉をいっぱい作ってた。


> メグミちゃんの配信を観るために会社を辞めました

> メグミちゃん好きすぎる

> 俺、メグミちゃんにマシュマロ読んでもらわなくてもいい。ずっと応援してる

> ただ、メグミちゃんの声を聴いているだけでいい

> メグミちゃん。アイドルよりもかわいい。たぶん、日本で1番かわいい


 音声通信で俺にも声がすごい聞こえてくるけど、熱狂的なファンが大勢いるみたいだな。すごいな。陰キャでおっさんな俺には近づくことすらできないすごい子だよ。


 ただ、そのとき、まずいことが起こったんだ。


「きゃぁああああ」


 なにかオーガーの大群がいきなり襲って来た。SSランクの5人の冒険者が戦っていたけど、一瞬でボコボコにされて殺されてしまったよ。


 まずいな。


 オーガーたちはメグミちゃんがオーガーに掴まって攫われそうになってる。


「きゃあああああ」


 カメラくんも殺されそうだ。


 仕方ないな。二人を助けてあげよう。目立ちたくないから配信は切ってもらって。


 俺はオーガーをポイポイやって、カメラくんにこそこそ言った。


「・・・君。配信を切ってくれないかな?」


「うわああああ。ひ、ひぇええ。オーガーぁああ。ひ、ひ、あれ? た、助かった? あ、 あなた、だ、だ、誰ですかぁああ?」


「君を助ける。ただ、・・・俺は目立ちたくないんだ」


「わ、わかりましたぁあああ。お願いしますぅううっ。ううう。メグミちゃんを助けてください。オ、オーガーのしゅ、集団に攫われて、て、てて」


「大丈夫だ。・・・俺が助けるから」


 ふう。これで配信を切ってくれたろう。


 後はオーガーをやって、メグミちゃんを助けるだけだな。


ワンパン!


 俺はごおおおおと走って行って、適当にムチャクチャいるオーガーを倒したよ。


 なんかすごい数いたな。1000匹はいたかな? なにかスタンピートでも起きてたか? まあ、いいや。メグミちゃんも助けられたし。


 俺はめぐみちゃんのお姫さま抱っこしていた。


「大丈夫?」


「・・・あ、は、はい」


 ん? なんか真っ赤になってる。メグミちゃん。怖かったのかな?


「オーガーに攫われてこわかったんだな。もう大丈夫だよ。俺が助けたからね」


「・・・あ、は、はい」


 困ったな。なにか会話が続かないよ。真っ赤になってて。メグミちゃん、同じことしか言わないよ。どうしたのかな?


「あの・・・すいません」


 ん? カメラくんだ。どうしたの?


「カメラ・・・止めろって言われてたけど、僕、パニックしてて、配信切り忘れたんです・・・だから、あなたの活躍、100万人に見られてます」


「えっ?」


 うわ。参ったな。陰キャでおっさんで目立ちたくなかったのに。俺が戦ってるとこ100万人に見られちゃった。


 メグミちゃんはとろんとした顔をしながら、じっと俺のこと観てるし。どうしよう。居心地悪いな。お姫様ダッコしてるんだけど、下ろそうとするイヤイヤするし。


「まだ、怖いの?」


「・・・あ、は、はい」


 やっぱり真っ赤だなぁ。どうしたんだろ?


 配信も100万人に見られたし、はあ。どうしよう。サイキョーだってバレたかな? はあ。困ったなぁ。

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