プロローグ 乙姫バージョン

アイドル乙姫セリカは熱っぽい目で僕を見ている。まるで恋するような目だ~!


そんなわけないよね? 言ってることは仕事の話だし~!


「私どうしても伊藤くんにライブに出て欲しいんです! 世界のために。がんばった人が報われる世界にしたいんです! 私ッ」(ぷるるん♪ぷるるん♪)


・・・む、胸を振わせて迫られても・・・



それから、週末千代田区にある武道館にやって来た~! ここで、乙姫セリカが所属する道玄坂48がライブをやる~!


19時からの開演で、ライブ終了の21時に僕は乙姫セリカに花束を渡す予定~!


プロデューサーは上機嫌だった~! 僕は一応、今話題ナンバーワンらしい~!


たまにテレビのコメンテーターが、僕の名前は伏せて僕の話題を口にすることがある~!


一時的な話題だと思うけど、それなりの頻度で~!


「そういえば、まるで戦えない非戦闘員の図書館栄養士の人がすごいモンスター倒したらしいですよ。凄いですね! その人! かっこいー!!!」


・・・このくらいで僕は語られる~!


およそ10秒くらいの話題だ。ただ、いまいち自分が語られている実感はわかない~!




LIVE出演~!


いよいよ、乙姫セリカの激励で全国報道に僕は出る~!


リハーサルで本番前の打ち合わせは済ませてる。何を僕が言うのかも決まっているし、簡単なことを言うだけ~!


そして、本番~!


ライブを終えた道玄坂48の前に、僕がステージ上に花束を持って現れる~!


「今日はサプライズゲストです! ガルキマサラを倒した伊藤隆起さんが応援に駆けつけてきてくれましたーーーー!!! なんと、伊藤さんは乙姫ちゃんのファンだそうでーーーす!!」


わあ!! と、ライブが盛り上がる中、僕はステージへ~!


ダンスで汗に濡れながらも、キラリと光る妖精のような乙姫セリカが目の前にいる~!


ひときわ目立つ白金色の髪と、青いきれいな目が超絶人気のオーラに輝く~!


そして、ひときわ誰よりも大きくて美しい胸が目立つ~!


他の美形ばかりのアイドルたちが見守る中、僕は用意された花束を緊張しながら渡す~!


「わあ。ありがとうございます!」


「いえいえ。僕は昔から乙姫セリカさんのファンで」


「ほんとですかっ!! 感激です!!! 私も伊藤くんのことが大好きですっ」


(ぷるるん♪ぷるるん♪)


あれ?


なにか、リハーサルのときのコメントと違ってる。確か、ここで、乙姫さんが、全国の冒険者を褒めるはずじゃ・・・。


おかしい~! 乙姫セリカは僕のことを好きとかリハーサルでは言わなかったはず~!


ん? どういうことだろ?



僕が少し疑問に思って嫌な予感を覚えて冷や汗を掻いていると、突然だ!!!


乙姫セリカが僕に近づいて来て、もう一度言った~!


「私・・・あなたのことが好きです・・・!!!」


そして、乙姫セリカは、いきなり僕にLIVE中にキスしたんだ。生放送のテレビ中継がある前で~!


ぎゅっと、大きな胸が体にむぎゅと当たった~!


(ぷるるん♪ぷるるん♪)


その日、僕は神になり、バズった~!





僕がアイドルの乙姫セリカにキスされた瞬間はライブ中継で全国に流れていたんだ~!


僕の名前はそれで一遍に世界に広がった~!


ただ、そのときは大変だったんだよ~! いっぱい、色々な人にTVが観られてたんだ~! 生放送のテレビだから、全国の話題もすごく、


一気に僕の名前は全国区になったけど~! テレビを観ていた掲示板ではこんな風だった~!


それは乙姫さんがダンスを踊ってるところぐらいから始まったんだ~!


【乙姫セリカファンスレVol.26】


407.無名の語り人

うおおおおおお。乙姫ちゃーーーん。今回のライブも最高だったぁ。


408.無名の語り人

いいよねー♪ 道玄坂48のライブぅーー。


409.無名の語り人

メンバーさいっこうッ


410.無名の語り人

みんなで、ダンス♪ ダンス♪


411.無名の語り人

感動した! 感動した! 感動した!


412.無名の語り人

乙姫ちゃんのロリ巨乳。ばるんばるん。ぐふふ。


413.無名の語り人

おっ


414.無名の語り人

おっ


415.無名の語り人

おやっ?


416.無名の語り人

サプライズゲストあるみてえ?


417.無名の語り人

えっ? なになに?


418.無名の語り人

俺スマホなの。情報わかんない。誰か解説して。


419.無名の語り人

解説。なんぞ知らないけど、乙姫ちゃんたちのライブにサプライズゲストで高校生の少年がでとる。花束抱えて乙姫ちゃんに挨拶じゃのー。なんか、乙姫ちゃんのファンらしいけど。伊藤隆起? 誰?


420.無名の語り人

えっ? 誰。


421.無名の語り人

ああ。ガルキマサラっていうモンスター退治したヤツ。


422.無名の語り人

知らん誰?


423.無名の語り人

ちょっと有名になっとるでぇ。


424.無名の語り人

が! ががっががががががが!


425.無名の語り人

うおっ。


426.無名の語り人

うおっ。


427.無名の語り人

おおおおおおおおお。なんじゃそりゃあああああ。キスぅうううう。



428.無名の語り人

なにがあった? なにがあった? 解説はよ。


429.無名の語り人

乙姫ちゃんがキスしよった。好きですとか言いながら、伊藤隆起に。


430.無名の語り人

にわか。乙姫ちゃん、探してた相手。


431.無名の語り人

えっ?


432.無名の語り人

乙姫ちゃんが命救われた相手。ブログに書いてた。


433.無名の語り人

刺す刺す刺す刺す札


434.無名の語り人

伊藤隆起っていうんだ。乙姫ちゃんの恩人。


435.無名の語り人

恩人でもゆるさん。乙姫ちゃんのキスを。


436.無名の語り人

信じられぬい。乙姫ちゃんのファーストキスを。しかも、神聖なライブでで。




それが起こったのはちょっと後のことだった~!


僕はそれまでただの高校生だったんだ~! そこから僕のモテモテ人生が始まったんだ~!

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