第25話 満月の奇跡

ダンジョンが満月の夜に僕らは集まった。


今、ルルナが悪役令嬢ソフィーナとして配信中。


ルルナはファンの人たちをとても大切にしてる。


最近は炎上のせいで新しいファンの人たちが増えたけど、いちいち、個人個人のコメントを拾ってファンを退屈させないように頑張って配信をやっているんだ。そういうのって尊敬できるよね?


「じゃあ、下僕さんたち(ファンネーム)。これから、1000匹のゴブリンを彼女が倒すわ。ちょっと見ものだから観ててね」


> おっ、玉石じゃん。Bクラスの。


> 玉石クナイは強いよね。楽しみ。JK最強。


> いい見物になるなぁ。


玉石さんが走って行って、ゴブリンをズバズバ舞うように二つの剣で倒して行く。


満月の夜に舞う姿はすごくきれいで、僕は圧倒されて見ていた。




1000匹のゴブリンを倒した後に出てくる魔石を僕は拾い上げて袋に集めてる。


「隆起は魔石拾いね。この魔石が集まるとすごいことが起こるらしいの。期待していてね。下僕さんたち」


> ほいほい。伊藤くん。がんばれ。


> ゴブリンの魔石ちっちぇえ。


> まあな。魔石燃料にもならないのがゴブリンの魔石だ。


ルルナのファンに見守られながら、僕は魔石を拾い続ける。そこに乙姫セリカもいた。


なにか今日も乙姫セリカは肌が艶々で、唇もぷるんぷるんしている。


気合の入ったメイクだけでもなく、僕の手に入れた情報で気力がみなぎって、魅力もマシマシになっているみたいだ。


見てると魅せられるような色気があるなぁ。


「はい。みなさん。私は10日後にゴブリンで世界を救うって言いましたね。みなさん、私の言うことを覚えてますか?」


> うぉおおおおおお。セリカ。覚えてるよ。


> セリカは世界を救う。


> 伊藤市ね


乙姫セリカもライブ配信で今日はすごいにぎわいになってる。ただ、僕のアンチも多い。


> 婚約したからと言って、セリカに触れるな。伊藤。市ね。


ううーーーん。どこまでもセリカのファンは僕に厳しいんだ。



そのうちに、1000体のゴブリンを玉石さんが倒して魔石が山となる。


爪みたいな魔石だから1000個集めても小さな小山ぐらいだけど、玉石さんはすごい。


「・・・準備運動には・・・ゴブリンを・・・倒すのは・・・ちょうどいい。・・・緊張感も・・・あっていい・・・」


そこから、夜の上岡ダンジョンの広い平原に僕らは集まった。


> 不思議とダンジョンには月の満ち欠けもあるんだよね?


> 法則性があるみたいだけど、なにが関係してるんだろ?


「へええ。法則性がちゃんとあるのね。なんとなく、満月の日があるというのはわかっていたけど。どういう法則なの?」


> 12日周期でいきなり満月になるんだ。前の日は下弦の月だったのに、突然満月


> コンピューター管理みたいで。詳しくはわからないな


ルルナが下僕さんたち(ファンネーム)と話しているのを横に聞きながら、僕はレアメタルの生成の準備を始めた。





「まずは1000個の魔石を小山になるように並べて、そこに聖水を振りかける」


「・・・聖水は教会からもらった・・・府中キリシタ協会のもの・・・」


「うん。協会はいくつもあるけど、異世界の協会と違いがあるか分からないけど」


「・・・でも、だいじょうぶそう。・・・魔石が光ってる・・・」


玉石さんの言うように小山にした魔石が、まるで月の光のようにほわほわと光った。


乙姫セリカがそこにやって来て、ライブ中継をしながら笑った。


「後は私が魔力を注げば、ここで奇跡が起こります。みなさん。これで私の宣言した通りに世界は救われることになりますっ」


はは。


乙姫さんテキトーなことばっか言って。


まあ、僕は1億円払わなきゃならなくなるのを止められればいいや。


乙姫セリカが魔力を魔石に注ぎ込み始める。


するとまばゆいばかりの光が魔石から起こって、そこから闇褐色の金属が現れたんだ。


> はは。こりゃすごい。


> なんだ? こりゃ。


> うーん。謎金属出現。


中継を見ていたファンの人間たちはその奇跡をのほほんと見ていたけど、その金属のものすごさはそのとき誰にもわからなかった。


ただ、翌日、その金属を乙姫セリカが日本ダンジョン省に提出した後がすごかった。


海外でものすごい勢いで今回の動画はバズったんだ。


それは中国、ロシア、アメリカと、世界中にものすごいバズの嵐を起こしたんだ。


僕は海外バズった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る