第7話 鯉には名前が書かれていない1

久々の休日、予定もないのでのんびり寝てるか、買い物でも行くか。


携帯を見ると吉本から着信がある。

とりあえず折り返す。


『もしもし、山越くんか?相談があるんだが…』


『どうされましたか?』


『実は、春に200万で買った鯉を、そのまま預けたら、秋に死んでしまったとの連絡と写真が送られてきたのだが、別の人がよく似た鯉が先日の九州大会で総合優勝になっていたんだけど、俺の鯉かどうかわかるかな?』


『写真はまだ保存してますか?』

『これなんだ』


写真には、鯉が横たわっており、ご丁寧にその日の日付の新聞が敷かれている。


『原因は聞いてますか?』


『エラ病とのことです。本当にあっという間に、進行して、外傷もなく死んでしまったとのことだ』


『そうですか… とても素敵な鯉でしたので、残念でしたね』


『しかし、よく似ていると思わないかい?頭の模様以外は、同じじゃないか! 大きさは10センチほど違うがとてもよく似ている!』


『私に言われても… その新潟の生産者の方か、九州の方にどこで購入した鯉か聞いてみてはいかがですか?』


『新潟の生産者に聞いて、関係が悪くなるのも嫌だし、九州の方は連絡先がわからないから、代わりに調べて欲しいから頼んでいるんだ!

本当にこれだから、若い奴は…』


俺が売った鯉でもないし、なんで俺が?

そもそも物を頼む態度かよ?


まあ、当てがないわけではないが…

『わかりましたよ、少し時間をください。』


『早く頼むよ!私の鯉だったら、怒鳴り込んでやる!』


面倒臭いが、吉本に、そんなことを言っても喧嘩になるだけなので、とりあえず軽トラで新潟に向かう。


『あの野郎…相変わらずだな…』

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