第3話 錦鯉って高いんですか?

吉本の家を出て、軽トラで街を流す。

ルイヴィトンのバックを持った女子大生。

血統書付きの犬を散歩させるマダム。いかにもなロードバイクが横からすり抜けていく。


「お前らの持ってるそれの方が、よっぽど鯉より高えよ。」

ふと窓から外を眺めてつぶやいた。


品評会の会場で、必ず聞かれることがある。

「この鯉は、いくらくらいするんですか?」

「錦鯉って高いんですか?」


彼らに悪気は無い、答えたからといって買ってくれるわけでは無いが、ただの興味本位なのだ。


人は高い金額を見ると、媚び諂うか、悪事に手を染めている人間でも見るかのような眼で見てくる。


そう言う時俺は決まって答えるようにしている。

「どうなんでしょうね。ただ、大きくするには時間とお金がかかるようですよ」


そう答えると今度は

「あの大きい鯉は何年くらいで、あの大きさになるんですか?」

「そうだよな… 大きな池も必要だし、餌も食べるだろうなぁ」

と、勝手に別の話題に移ってくれる。


「アホくさ…」心の中で呟く。


きっと彼らは、この鯉達の値段を聞いて、驚きそしてこう思うはずだ。

『10万円で買った鯉は、成長する場それ以上の値段で売れる』と。


残念ながら、鯉はそんなことはない。

あくまでもその時点での金額と価値であり、

アマチュアが買った鯉は上がることなどほぼない。 よっぽど血統やタイミングによって親として評価をされれば別だが。


だから気がついてほしい。

『鯉なんて買った時点で、価値がなくなることを』


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