最終章・「伝説っていうか」編

どっちかにしよう!



「それで君たちが……」


「はい。ユウキの友人のイツキです」

「ヒナタです」


 俺の前にはユウキの友人がいる。

 アルマに心の声で避難民に呼びかけて、それで彼らを呼び出したのだ。


 避難民たちに怪しまれることになったが、まぁ大丈夫だろう。

 これはスキルです! と言い張れば、そんなもんかと思うもんだ。


 騎士たちの野営地の一角を借りて、俺たちは彼らと話すことにした。

 

「君たちのことはユウキから聞いていたよ」


「本当ですか?」


 アルミ製のテーブルに座った少女は、身を乗り出す勢いで俺を見る。

 反面、長髪の少年はどこか居心地が悪そうだ。


「あぁ。君たちがお台場の都市にはいった後のことだ。彼は門前町に残り、都市に入るチャンスを狙ってた。それで彼と知り合ったんだ」


「ユウキは門前町に残って……入れたんですか?」


 ヒナタという少女は心配そうに聞く。

 少し刺激の強い話だが……仕方あるまい。


「あぁ。都市の連中が胸クソ悪いオーディションを始めてな。ユウキは覚悟を決めて腕の肉を切り落として、それで都市に入ったんだ。」


「そんな……料理や工芸、漫才なんかの一芸で都市に入るテストはありましたが、そんなものは聞いたことがありません!」


「ユウキは君たちに追いつこうとあせっていたからな。」


「僕らはそんなつもりじゃ……」


 イツキのほうは、どうやらユウキに罪悪感を感じているらしい。

 居心地が悪そうにしているのは、そのせいだったか。


「もちろんだ。それはわかってる。君たちを責めようとして呼んだわけじゃない」


「え?」


「今ユウキは意識を失っていてな。俺たちが保護しているんだ」


「!!」

「どこに居るんですか!?」


「いまはダンジョンに作った仮拠点で――信頼できる奴が保護してる」


 安心してほっと息を吐く二人に、俺は少々の引け目を感じていた。

 なりゆきとはいえ、俺は彼を巻き込んだ形になる。


 彼らに安心しろなんて言える資格はない。


「俺はこれから彼の治療に行くが……もしすべてがうまく言って、ユウキがここに戻ってこれたら、彼のことを迎えてやって欲しいんだ」


「はい、もちろんです!」

「俺も……はい」


 いい仲間じゃないか。

 もしユウキが俺と関わることがなかったら……。

 きっと彼は友人たちとここに来ていただろう。


 全てはたられば・・・・の話だ。

 だがオレの心には、少しささくれだった後悔が残っている。


 終わらせないとな。




「ふぅ……ユウキの友達と話してきたよ」


「どうだったね?」


 師匠が投げてきた缶ビールを受け取って、俺は続ける。

 お、キンキンに冷えてる。


「とくに問題は無さそうだ。彼の身元も引き受けてくれるとさ」


<プシッ!>


「よかったじゃないか」


『ではあとは……ユウキくんを目覚めさせるだけですね』


「あぁ。それが終われば問題はシンプルになる。ダンジョンの事に集中できるな」


「ふぅん……で、ラレースはどうするんだい?」


『え、私が決めることって、何かありましたっけ?』


『センパイ……』

「まぁ、ラレースだからね」


『え、えぇ? 私、何か間違えましたか?!』


「今後ツルハシは、ダンジョンの中にこもりきりになるだろうからね」

『今生の別れってわけじゃないけどねー?』


『あ、なるほど……たしかにそうですね』


『センパイがツルハシの護衛に回るって言うなら、都合はつけるよ―?』


『ありがとうございます。ツルハシさんをそのままにはしておけませんからね』


「師匠もバーバラさんも忙しそうだしな。また以前みたいにコンビでやるか」


『そうですね。ちょっと懐かしいですね』


「……これは重症だね」

『せやねー』


『???』


『まぁうん。あとは事務的な部分もあるよねー』


『そうですね。今までは特例処置で自由に外出していますが、本来はもっと制約が多いんですよね……』


「バーバラ、それって何かやりようがあるのかい?」


『うーん。遍歴中ってことにするとか?』


「なるほど、旅をしてる最中とか、そんな扱いにする感じか?」


『そうですね』


『来月には人員の補充も来るし、新しい団長も着任するからねー。色々ごまかせるのも今のうちみたいな?』 


「時間は無いから早めに決めろってことだね?」

『せやせやー』


『なるほど。ではバーバラ。私は遍歴中ということで処理をお願いできますか』


『はい出た。決めろつってるのにこれですよ師匠』

「こりゃ参ったね」


『えっと、決めましたけど……?』


「だよなぁ。何か2人ともちょっと挙動不審じゃ……」


『はいセンパイ聞いて、今後もツルハシと一緒に行動する気はある?』

「それもずーっと。」


『あ! えっと……そういう?』


「俺は別にかまわんよ。ラレースが良いなら」


「『……』」


「うん、何?」


「よし、こっちの確約は取れたから――」

『ツルハシはここで退場ー!』


 俺は師匠に首を掴まれると、地面の上で引きずられた。

 ほわっつ?!

 

「何々、何なの???」


「そうだね、2人には積もる話があるだろうからね」


『うむー!』


「さ、出てった出てった!!」


「えぇ~!?」


 俺は話をしていたら、いきなり追い出されてしまった。

 まるで意味がわからんぞ!!


 誰か説明してくれ!!!





※作者コメント※


長いです。


次作に関して、下記の要素を考えてます。


・ジャンルは現代ファンタジー。


・現代日本に人間がモンスター化するファンタジーな病気が出てきて……


・主人公はモンスター化の奇病で家族を失ったが、人型モンスターに妹の面影を見て、そのモンスターを追跡する。そしてなぜこの奇病が世界に広まったのか、その秘密にせまっていく。


・モンスター化はワクチンがあるけど、万能ではない。倒したモンスターの血清を自分に打つことで、数日から数週間、そのモンスターの能力を使える。


・男主人公で外道な性格。血清をパクろうとした主人公は、間違ってサキュバスの血清を打って女体化する。


・モンスターには銃や剣なんかの物理攻撃も効果がある。


・パートごとに事件が完結するタイプの語り口でいく。戦闘やアクションよりも、会話劇がメイン。ネタ&人情話を多めに。


・メインストーリーはシリアス。ただし日常はアホアホ(銀魂・このすば系)


 と言う感じです。


 ツルハシよりも多少、世界は崩壊してないかなーくらい?


 あとは血清を使って人間をモンスター化、発電させてる某ロボトミ社みたいなのがいたり、町に全滅屋・仕事屋・掃除屋みたいなのがいる設定にしようか……。


 現ファンするなら、ディストピアになってねぇとなぁ!?

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