在庫処分

<ズゴォォン!!!>


「ぎゃー!」「わひー!」「あぃぇぇぇ!」


 地獄門へ迫ろうとしている探索者に、俺たちはようやく追いついた。


 しかし、背後から奇襲をかけようとした時、ラレースが光の盾を展開できなかったことで、スキルが使えなくなっていることに気がついたのだ。


 これはブッダリオンの使うスキル無効化に違いない。

 そう感づいた俺は、連中がやったことを、そのままお返しすることにしたのだ。


 そう、あの仏道グレネード……つまり爆弾投げだ。


 爺部屋には何故か大量の爆発物があった。

 俺はそれをパク――拝借し、それを今使っているのだ。


「爆発物を投げるのは楽しいゾイ!!!」


『ほいツルハシ、もういっちょー!!』


「なんかアンタら、イキイキしてるね」


『あまり正義っぽくありませんが、良いんでしょうか、コレ……』


「楽しいからヨシ!」


<ズゴォ!!! ズダァン!!!>


 俺たちは、黒い金属球にちょこんと生えた灰色の導火線に火をつけ、右往左往する探索者達の集団に向かって、ひたすら爆弾を投げ込んだ。


 すると、ジジイの爆弾は、ボンッと弾けるたびに、数人の探索者を爆炎と破片でなぎ倒していった。


 爆弾の見た目は、ギャグマンガやレトロゲームに出てきそうなちょっとカワイイ感じなのに、爆発した時の威力がガチすぎる。殺意高すぎない?


 ――ふと思ったんだが……。

 これって、ジジイが俺に使おうとして作りためてたとか、

 そういうんじゃないよね?


 …………。


 …………よし、在庫一掃と行こう!!!


「さぁ、ジャンジャンバリバリ投げてください!!」


「んじゃ、アタシもやるかね」


「お、師匠もいきますか」


鋳鉄いてつか。ちょっと重いね……ま、こんな感じかね」


 師匠は爆弾をアゴの下につけるようなポーズをとると、腰を落とした。


「あれ、火がついてないですよ」


「これで良いのさ」


 そして師匠は、腰を落とした姿勢でくるくると回ったかと思うと、爆弾を持った右手をピンと伸ばして、黒いたまを空中にほうった。


 あ、この人――爆弾をただの鉄の玉として使ってる?!


「おのれ~卑怯者! 正々堂々戦え、このワシは議員の<パキャンッ!>」


「ひぇっ」


 何か偉そうに口上を垂れてたオッサンの頭が、豪華な金ピカヘルメットごと弾けとんだ。おぉぅ……これはお見せできない。


「戦いは基本、エラいやつから落としていかないとね」

「怖ぇ……」


『この様子なら、早々にカタがつくかなー?』


『そうですね。どうも探索者たちはうまく統率が取れていません。この場で同盟を組んだ、寄り合い所帯なのかもしれませんね』


「寄り合い所帯にしちゃ、かなり頑張ってるけどな」


 地獄門の前のホールには、俺が作ったトラップハウスがそのまま残っている。


 門にたどり着くには、溶岩エリアを抜けた上で、回転床と毒やトラップの回廊を突破し、ギロチンハウスの屋根を通って行く必要がある。


 自分で作っといて何だが、これがゲームだったらクレームが来る難易度だ。

 しかし、探索者のほとんどは、すでにギロチンハウスの下に到達していた。


 そこまで進むのに、どれだけの犠牲があったのか。ホールの床は無数の死体で埋め尽くされ、血と肉と骨でもう一つの床ができていると言った感じだ。


 いやはや「魔法のランプ」のためとはいえ、ようやるわ……。


 爆弾で後方でうろついていた連中を始末したので、俺たちは溶岩エリアまで前進できるようになった。ここからならジジイにも声が届きそうだな。


「ジジイ、助けに来たぞ!」


「なんじゃ、やかましいと思ったらお主か」


「イェーイ!!」

「イエェェェェェェェィ!!!」


「お、イエティたちも一緒か」


「うむ、ダンジョンの主から頼みを受けての……」


 俺がジジイに話しかけると、ギロチンハウスのたもとでウロウロしていた探索者たちが突然騒ぎ出した。


「クソッ! ツルハシ男のやつ、やつはモンスターと仲間だぞ!」

「やっぱり……ダンジョンを作り変えられるなんておかしいと思ったのよ!」

「あいつはダンジョンが生み出した怪物だ!」

「人の形をしたダンジョンの化身なんだ!!」


『らしいよー?』

「えぇ……?」


 わからんでもないけど、いくら何でも発想が短絡的すぎないか?

 俺、普通に開拓中に何度も殺されかけてるんですけど。


 ま、こういう連中は、自分が見たいものしか見ないか。


「やはり我々の予想は間違っていなかったようだな」

「うむ、ここで確信した。やはり奴が地獄門を開く『鍵』に違いない!」

「ツルハシ男が来たのはむしろ天の助け……僥倖ぎょうこう……!」


 お、空気変わったな?


「おう! 皆のもの、ツルハシ男を捕まえるのだ!!」

「そうよ!地獄門を開くには開いた本人、つまりツルハシ男を使うのよ!!」


 どうしてそうなる?!


「なるほど。ダンジョンを作り変えることができて、モンスターと話せるツルハシ男はダンジョン側の存在。だから俺は地獄門を開けるってことだね」


『理屈としては間違ってないように見えるのが、なんともかんともー?』


「俺を地獄門に突っ込んでも、頭がねじ切れるだけだと思うけどなぁ……」


『連中の足りない頭も一緒に突っ込めば開くんじゃないー?』


「……ちょっと想像しちゃったんですけど、グロすぎないですかね?」


「しかし何だねぇ……これはまとめて処分したほうが良いんじゃないかね」


「はい。思うに、カブトムシのほうが連中より賢いかと」


『ですが、ツルハシさんを捕まえるには、彼らは一度超えた罠を、もう一度超えないといけないわけですよ。まさかそんな無謀な――』


「事をするつもりみたいだぞ」

『……人ってなんでしょう』


 重甲冑を装備した守り手らしき探索者たちが盾を構え、スクラムを組んだ。


 なるほど、亀甲隊形ってやつだな。あれで毒矢トラップを防いだのか。

 ……その知性を、もっとちゃんとした方向に使ってくれないかな?


「前進ンンンンンッ!!!」




※作者コメント※

あーもうめちゃくちゃだよ(

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