心構え
「……ジジイの部屋、こんな
「ファファファ、最初からこんなもんじゃよ」
心構えなしにジジイとラレースを引き合わせたら、まずバトルが始まる。
なので念のため、俺はラレースを外に待たせておいて、ジジイに彼女の事を伝えるため、一人で部屋に入ったのだが……。
何か増えてるのだ、部屋の住人が。
いや、住人と言って良いかは、ちょっと微妙だな。
どう見たって彼らは生きてないから。
爺部屋に新しく増えていたのは、
骸骨はホウキを持って灰まみれの床を清め、燃えカス等のゴミを拾っている。
まあ、これで大体何がここであったのか、大体予想はつく。
調度品を見てみると、何やら生々しい焦げ跡まであるしな。
「ふーむ、やってきた探索者をしばいて、その死体を使役したのか?」
「手伝いも欲しかったところじゃしのー」
「俺は別になんとも思わないし、平気だけど、大丈夫かな……」
「ふむ?」
「いや実は、ダンジョンで会った人とパーティを組むことになってな」
「ほう、信頼出来る仲間と会えたなら良いではないか。なにせこのご時世だ」
「いやぁ……それが
「ファ?! まさかそやつをココに連れてきたのか?!」
「そのまさか何だな~これが」
「アホじゃろ!? いや絶対アホじゃ!!」
「ダメ~?」
「ダメに決まってるじゃろ! どう考えてもワシのこと抹殺してくるわ!!」
「でもそれ、多分ジジイのせいもあるぜ」
「何?」
「俺の話術でこう、リッチだけど気のいいジジイってことになってんだ」
「当然じゃな」
「腹立つな。でもこれよ、探索者の死体使っちゃ不味いだろ」
「ジジイ一人だったら、ん~ワンチャン許されたかも知れないけど……」
「むむむ……ならば仕方ないか」
「元にもどす方法ってある?」
「もちろんじゃ。『ターンアンデッド』で
「なんだ、ちゃんとあるじゃん。骨は元からあったオブジェってことにしようぜ」
「……お主も結構ヤバイよな」
ジジイは早速「ターンアンデッド」を唱え、骸骨を死体に戻そうと試みる。
先程まで元気よく(?)動いていた骸骨たちが電気を受けたみたいに
これも中々に邪悪な光景だな。
「むむ……新鮮なせいか、なかなか還らんな」
「ジジイ急いで!」
「そう急くな! あーもう! 声かけられたからまた戻り始めちゃったー!」
「あの、お時間がかかるようでしたら、上で宿を取りますので……」
あ、扉を開けてラレースさんが部屋に入ってきちゃった。
今はダメー!!
カタカタと音を立てながら立ち上がるスケルトンたち。
それを見たラレースは盾を構え、戦鎚を握りしめた。あっヤバイ。
「――ッ! リッチがアンデッドを創っている……ッ?!」
「いやこれは、ジジイが悪いんです! 助けて!!」
「なっ! ワシのせい?! 貴様!」
「やはり! 最初から何か怪しいと思っていたんです。不死者の罠でしたか」
「そうです!この骸骨を作ってるのは、この爺です!」
「なっ貴様ァ!! 騎士様! コイツも悪いんですよ! うちの家具とかパクっていったんです! 泥棒ですよ泥棒!!」
「不死者が何を言おうと……耳を貸すことはありません」
「イヤー!!! 信じて!!!」
「今さらツルハシ、貴方のことを疑うものですか。私は貴方のことを信じる!」
「ツルハシ男……、いま助けますよ」
「ちょま、あ……
「絶ち割れ――震天動地、『
ラレースが戦鎚で地面を叩くと、ハンマーを叩きつけた場所から真っ直ぐに衝撃が走る。そして進路上のすべてのもの――
立ち上がりかけていた骸骨、高そうな家具、全ての物が粉々に破砕された。
<ズガガガガ!!!!ドゴオオオオオ!!!!>
「ほげえええええええ?!!!!」
全ての物には勿論、進路上に居たジジイも含まれる。
ジジイは全身を粉々にされ、そこらへんの骸骨と混じり合ってしまった。
わー。
これはちょっと……元に戻るのに時間がかかりそうだな。
ジジイには悪いが、一旦話を通すために静かになっていてもらおう。
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