リッチな同居人
「しかし、ずいぶん遅くなってしまったな。今から地上へ戻るのは……」
「夜の10時ですか。深夜に地上を歩くのは危ないですからね」
「入り口で宿を取るのも、お前の問題があるしな」
「あっ」
(そうか、俺がこのダンジョンに仮拠点を作ってることを彼女はまだ知らない)
(入り口の探索者村で宿を探そうとするよな、当然……)
「この部屋で野営は少し厳しそうだな、息が詰まりそうだ」
「えっと、それなんですけど……実は仮拠点を作ってまして」
「何か妙な感じだと思っていたが、やはりか」
「えっ?」
「あるにはある、と言っていたのに、その後作ると言い出したろう?」
「言葉のつながりに違和感を感じた」
(ラレースさん、ちょっとポンコツっぽいけど、普通に観察力あるな……
何かちょっと誇らしげだし。)
「どうした?」
「い、いえ、その~……別の問題がありまして」
「お邪魔するんだ。多少散らかっていようが、構わないよ」
「同居人と言うか、先に住んでる住人が居まして……リッチなんです」
「リッチ、ダンジョン内に、仮拠点を作れるほどのお金持ちか」
「まぁ。お金持ちと言ったら金持ちですね?」
爺は上等な家具とかたくさん持っていたし、金持ちには違いない。
「投資に見合う金を取ろうとするのは当然だ。持ち合わせは……」
「たぶん、お金とか神気とか……どうでもいいんじゃないかなぁ~?」
「お金や神気はどうでもいい? ――ッ!」
自分の体を抱きしめるようにして、イスごと俺から後ずさるラレース。
ちがーう!! だからそっちじゃない!!
「いやー……体は体でも、血肉の方かなぁ?」
「とか言ってる場合じゃない! 死体です! リッチはリッチでも、アンデッドのリッチです!!」
「……えぇ?」
すごい顔で見られた。
彼女と反対の立場だったら、きっと同じ反応するだろうから何も言えねぇ!!
「いやぁ実は仮拠点、リッチの『爺部屋』の中に作ってまして……」
「なんでそんなことを?!」
言われて思い返すと確かに。何でそんな事したんだろう。
あの時は名案だと思ったけど、あらためて問われると何も言い返せねぇ……!
「いいアイデアかと思ったんですが」
「モンスターと同居するとか理解し難いな。しかもアンデッドとは……」
「いえいえいえ!! 部屋は別ですよ?!! 爺と添い寝とかしませんからね」
「そうなのか。てっきり死体愛好家なのかと思ったぞ」
「なにそれこわい」
「いや、ダンジョン探索者では珍しくない趣味だぞ? 例えば女性探索者の――」
「あーあー聞きたくないです!!」
「以外と神経が細いな」
「ラレースさんが極太なんです。いい加減ここを引き払って拠点に行きましょう。じゃないと寝る時間がなくなりますよ」
「そうだったな。もう行くとするか」
「ここからだと普通に階層を上がる階段へ行くのが早いですね。爺部屋は1階層の奥の方ですし。」
はぁ、何かどっと疲れたぞ。
ちょっと心配なのが、アンデッドの爺と
ま、いっか。爺、丸ノコにやられるくらい弱いし……大丈夫だろ!!
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