丸ノコとのバトル

「おっと忘れてた。丸ノコをどうにかする前に、アレもなんとかしないと」


 このせまっ苦しい部屋をドッグラン代わりにしている丸ノコ以外にも、このトラップ地帯には危険がある。毒矢トラップだ。


 毒矢トラップの嫌なところは、複雑な配置になっていることだ。

 槍トラップは地面でカシャカシャしているだけだが、毒矢トラップは違う。

 壁と床、天井から、立体的な十字砲火をしてくる。


 これ考えたやつ、本当に頭がおかしいと思う。


 まあ、一つだけ良いところもある。

 飛び交っている毒矢は、なんか知らんが緑色の蛍光色で光っているので、やたらに目立ってよく見える。うん、これだけが唯一の救いだ。


 と言うかこれがなかったら処理できなかったな。

 足元や壁の毒矢ブロックはツルハシで殴って直で排除。

 天井にあるやつはツルハシが届かないので、壁ブロックの残りで塞いでやった。


 やーいやーい!!ねえどんな気持ち?

 ふさがれちゃってくやしいねぇ!


 さて、アホなことやってないで、丸ノコを対処しよう。


 丸ノコは勝手気ままに動いているように見える。

 だが、こいつが何かに当たって反射する角度は、大体決まっている。

 ブロックを直線上に置いていけば、次第にその動きを制限できる。


 そうだな、リバーシみたいな感じで、線上に塞いでみよう。


▢◎←← ▢

     俺


 お、うまく言ったようだ。

 少しづつズレてるが、ふたつのブロックの間で丸ノコは跳ね返り続けている。

 左右にブロックを置き、横一方の動きに制限することができたな。


 よし、ここでさらにもう一個ブロックを置いてみよう。

 角度を斜めにして置いてやれば、丸ノコを誘導できるはずだ。


「それっ」<ポンッ>


「どうだ……? 来いっ!」


<ギィンッ!!!>


 ……よし!

 うまい具合に反射して、丸ノコが囲いの方へ向かったぞ!


▢ ↓◇俺 ▢

  ↓

  ↓

  ◎

 ▢ ▢

 ▢▢▢


 後は出入り口を塞いでやればっ……と。


▢  ◇ ▢

  

  俺

  ▢

 ▢◎▢

 ▢▢▢


 ほら、できた。

 危ないのは間違いないが、気をつければなんとかなるもんだ。


 囲いの中にはいった丸ノコを俺がのぞいてみると――

 うへぁ、なんじゃこりゃ。


 自由を奪われた丸ノコは、壁ブロックにぶつかってガチンガチンと音を立てて、ド派手な火花を上げている。ちょっと、というか大分怖い。


 ツルハシで殴って大丈夫かな?

 いや、このままにしておくほうがもっと怖いか。


 何かの拍子で抜け出されても怖いので、俺はツルハシを丸ノコに振るう。

 すると、丸ノコも俺の所持品に入った。


 ということはつまり……。


 コイツを管理しているブロックが無いはずだよ!

 こいつ自体がブロック扱いなのかよ!!!


 なるほど。一見小物や道具なんかに見えて、壁や床扱いの物、ブロックとして取得できるものがまだまだありそうだ。


 ふむ……ほうほうほう?

 ってことはだ、もしかして……ッ!


 俺はダンジョンの壁にかかっているオシャレなランプにツルハシを振り下ろす。

 すると「カシャン」とガラスを鳴らすような音がして、所持品に入った。


「……じゃあ、こっちはどうだ?!」


 ダンジョンのすみっこにある、補強用の三角形のはりや柱をツルハシで叩く。

 すると、それも俺の所持品に入った。


 鉄格子、木の桶、壁の鎖。

 一見ただの飾りにしか見えないものも全部入ってしまった。


「えぇぇぇ……? そんなの、アリ?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る