初配信

==ダンジョン板@ツルハシスレ(2)==

////ツルハシ男がダンジョンの壁を壊した模様wwwwwwww////


1:名無しさん@迷宮警備員

継続スレ立てるのはじめてなんだけど

これでいい?

・池沼ツルハシ男、ダンジョンの壁を壊したぽい?

・現場に配信者集合、祭りに

・壊す方法は不明。ユニークアイテムかスキル?


2:名無しさん@迷宮警備員

>>1乙

こうしてみると、今わかってる事少ないな


3:名無しさん@迷宮警備員

配信もツルハシ男がやってるやつは無さそうだ

内容のないイナゴばっか


4:名無しさん@迷宮警備員

まて、チャンネル登録数少ない順から探してたら

なんか出たぞ

<動画アドレス>


5:名無しさん@迷宮警備員

たぶんブラクラだとおもうけど

>>4のアドレス踏む勇者おる?


6:名無しさん@迷宮警備員

踏んだ。なんか音が小さくてよく聞こえん


7:名無しさん@迷宮警備員

なんか画面グラグラして慣れてない感じがリアルだな

手元しか写って無くてよく分からん

なんかガチっぽくね?



「えーと、これでいいのか大国主オオクニヌシ?」

『うむ、接続待機中じゃ。しばし待つが良い』

「ほいほい」


 俺は表示枠を操作して、Sintubeシンチューブに接続した。

 動画共有サイトの神気版だ。


 このシンチューブ以外でダンジョンの中を中継する事はできない。明確な理由は不明だが、ダンジョン内に侵入すると、電気を使用する撮影機材が全て死ぬ。


 まあそうでなくても(ごく一部の趣味の連中を除いて)無修正のダンジョン配信を見たいというやつはいないだろう。グロすぎるし。


 そう。シンチューブには便利なオートモザイク機能がある。

 もし配信者が危険に瀕すると、映像の中の人間は、可愛らしいお人形の姿に切り変わる。認識阻害とか、倫理フィルターとか言うやつだな。


 まあ、だからどうなの? という気はする。


 可愛いお人形の手足や首がブチブチむしられたり、黒焦げにされたり、酸で焼けていくのを、ジャンクフードをコーラで流し込みながら、「こいつバカだねぇ~」なんて言いながら視聴するのは、ちょっと人の心がなさすぎる。


 いや、人に心があるなんてこと、期待する方が間違いか。

 あったら第三次世界大戦なんて起きてね―わな。ハハッ。


『よし、接続したぞい。配信開始じゃ』

「オッさんきゅー」


 さて、バカなことを考えていたら繋がった。


 俺の「ツルハシ一本でダンジョン開拓します」チャンネルの登録数は、と。

 ……驚きの0。ゼロ。ナッシング。虚無。


 うん、逆に考えよう。伸び代しか無い。そういうことにしておこう。


 判っていたけど、ちょっと悲しいな。


 ……チャンネル名もっとキャッチーなのにすればよかったかな?

 いや、もういいや。配信始まってるんだし。


 あ、同時接続者……1人?

 マジか、もう見てくれてる人居るんだ。


「えーと、ツルハシでダンジョン開拓します、です」


 俺の頭の上に大国主オオクニヌシを乗せ、カメラを任せる。


 そして表示枠の位置を調整する。横目で配信の状態を確認するためだ。

 ……うん、こんなもんで良いだろ。


「理由はよくわからないんですけど、ダンジョンの壁を壊して、置き直すことが出来るようになりました、です」


「なので、えーとこれから攻略の助けになりそうな開拓と、建築……します」


 なんかめっちゃ緊張する。ダンジョン配信者ってよくこれ出来るな。

 

 ……同時接続者がなんか増えてきた。2人?

 あ、チャンネル登録してくれたらしい。なんかハートが浮いた。


 なんか、ちょっと嬉しいな。

 よし、気合を入れ直して、と。


「今日開拓する場所は……泥人広場にしようとします。えっと、ダンジョンに入ったことのある人なら、わかりますよね?」


 『泥人広場』とは、初心者殺しで有名な場所だ。泥人とは『マッドマン』というモンスターのことを指している。


「知らない人のために、一応説明します。マッドマンは子供から大人までの大きさをした泥人形の姿で、力は弱くて足も遅いです」


「だけど、それを補うように、アホみたいな数でこっちを囲んできます。弱いけど油断できない、厄介なモンスターです」


「弱いなら、倒せばいいじゃない。そうおもうでしょう。こいつが初心者殺しと言われるのは、あるギミックが関係してます」


 俺は説明をしながら歩き、目的地の前に到着した。


「あ、泥人広場につきました……誰もいませんね。ここを通るの、高ランクの探索者でも危険で、とても難しいので不人気です」


「マッドマンは倒されて数が減ると、500体前後を維持するようにリスポン……つまり湧き直します。なので、真面目に相手をすると全く前に進めません」


 俺は足を止め、深く息を吸い込んだ。

 ここですることを、画面の向こうにいるたった二人の視聴者に宣言するためだ。


「なので、一体も倒さずにココを通れるようにします」

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