第28話 缶詰料理

 で、今日も美味い飯が出てくる。

 今回出てきたのはサバや焼き鳥を使った料理だった。


「なんか珍しい料理だな?」

「はいっ、荷物の中に缶詰が多く入っていたのでそれを使わせてもらいましたっ♪」


 缶詰を主食として炒めたり、野菜に添えてサラダにしたりと、色々な使い方があるらしい。

 その発想は無かった……というか、この世界にそんな物があったのか? なんて思ってしまう。

 いやまぁ、料理は工夫次第だから当然といえば当然なのだけど。

 やはり紺は料理が得意なんだろうなと思い、手を合わせた。


「それじゃあ、いただきます」

「はいどうぞ、召し上がれーですっ♡」


 そうして俺達は食事を始める。

 うん、やはり美味しい。その感想を第一に口にしたのはイズミからだった。


「はぁ~~~生き返る~~紺の料理はいつも美味しいわね~~」


 彼女は仕事後の一杯を飲む成人男性のような声をあげる。

 まぁ、めんどくさい作業をしていたからだろう。気持ちは分かる。


「そうだよな、美味いよな」

「アンタには聞いてないんだけど」

「唐突にキレるのやめてくれないか?」


 紺は俺の嫁とでも言いたいのか?

 別にどっちでもいいけれど。


「えへへ、ありがとうございます。お二人の為にもっと頑張りますねっ!」

「いい子ねぇ~よしよし……」


 イズミは紺の頭を撫でて、酔っ払いのように絡んでいる。

 紺もまんざらでもなさそうな表情で、それを受けて入れていた。……仲が良いことは良いことだ。

 ただ、一つ気になる点もある。


「お前なんか顔紅くないか?」


 イズミの頬が赤く染まっているのだ。

 ……熱でもあるのか? と思ったのだが。


「はぁ??? ちょっと暑いだけよぉ~ね、紺ちゃん~♡」

「え、えっと……そうだねーあはは」


 ヤケに紺に距離を詰めている。そしてウザ絡みをして彼女を困らせていた。

 なんか酔っ払いみたいだな……と料理に箸を伸ばすと、酒の缶が見えた。

 ああなるほど……そういうことなのか。


「紺、コイツ酒飲んでるぞ」

「えぇっ!? イズミちゃんお酒飲めたの!?」

「当たり前じゃないのぉ~~アタシをいくつだと思ってんのよぉ……♡」


 仲が良いから歳が近いと思いきや、イズミは20代なのだ。

 当然とは言えないが、法律的には飲めるお年頃なのではあるが……


「アルコール弱いならほどほどにしとけよ?」

「うっさいわねぇ! 紺ちゃんの前だから良いでしょぉ!?」

「いや良くはないけどさ」


 これだけウマい料理が運ばれてくれば当然飲みたくなるのは分かるのだが、イズミは酔うと子供っぽいところを見せるんだなぁと思ってしまう。

 ただ、彼女の場合は年齢相応と言うべきか。


「もう~紺ちゃんってばこんな奴放っておいて一緒に飲みましょうよ~♡」

「いやあの……私は未成年なので……」

「そんな固い事言わずにぃ~ほらほらぁ~~」

「ちょ、ちょっとイズミちゃん……きゃっ」


 無理矢理酒を飲ませようとするイズミ。

 流石に見過ごせない行為だったので俺は立ち上がる。


「おいこら止めろバカ」

「ひゃっ!?」


 軽くチョップを入れてやると悲鳴が上がる。

 どうやら痛かったらしく涙目になっていた。


「いったぁ……なぁにするのよぉ~~!!」

「それは俺のセリフだよアホ。なに未成年に酒勧めてるんだよ」

「はぁ~~~~~~???? 紺はみせいねんなんかじゃ~~~……あぁ~~……未成年だったね♡ きゃはは!!♡」

「…………」


 酒を飲む女といったら焼津先輩のイメージしかなく、こういう悪い酔い方をしている奴を見たのは初めてなので、軽く引いていた。

 しかし、あろうことかイズミは狙いを俺の方に定めてきてしまう。


「ねーぇ、シューチもどうよ~?? 一緒にたのしーお話しましょ??♡」

「ちょっ、イズミちゃんっ!?」


 ぐいぐいと俺の方に距離を詰めてくる。

 それだけならまだしも、腕を掴んでくるので振り払う。


「離せ酔っぱらい!」

「あぁ~ん? アタシはまだ酔ってないもんねぇ~ふへへへ~」

「完全に酔っ払いの発言じゃねえかよそれ……」


 酔っ払いには興味ないし、適当にあしらえば済む話だが困った事があった。


 ……イズミの服が少し乱れている事だ。

 胸元が見えそうになるくらいまではだけていて、ちょっと目のやり場に困った。

 しかし、イズミは全く気にしていない様子だったので、俺だけが意識していると思われるのが何とも言えない気持ちになる。


「あ、もしかしてぇ~アタシのココ、気になってなーい??♡」

「ちょっ」


 俺の視線に気付いてしまったのか、彼女は胸元を指差す。

 すると当然のように見えそうになってしまうので、慌てて目を逸らす。


「……あんまり調子に乗ると怒るぞ」

「え~~だって、アンタがアタシのことエロい目で見てくんじゃん? 仕方ないよね~♡」

「そんなことあるか」

「はいウソぉ~~♡ ホントはもっと見たいクセに~~♡」

「……い、いい加減にしろ」


 あまりにもしつこいのでもう一度チョップを入れる。

 今度はさっきよりも強めにやったのだが、それでも「いたーいっ! 暴力はんたーい♡」とヘラヘラしていた。

 この場をどうにかして収めたいが、収められない。

 そんな時だった——


「——い、イズミちゃんっ!!」


 紺は大声で叫んだのだ。

 普段の彼女からは想像できないくらい大きな声を出したのである。

 これには俺もイズミも驚いてしまい、黙り込んでしまった。


「イズミちゃん、ダメだよ……そんなことしちゃ……」

「え、あ、いや……その、ね?」


 珍しくオロオロとしているイズミ。

 紺の表情を見ると彼女は怒っていて、今にも泣き出しそうな顔になっている。


「……シューチさんが困ってるし、その……なんていうか……そういうの見てるとモヤモヤしちゃって、あっ、ごめん、そういうワケじゃなくって……」


 どういうワケだ。

 若干、引っ掛かるような言い方だが、見ていられなかったのだろう。


「えっと、イズミちゃんが酔っ払っちゃうと、みんな心配すると思うから……ね?」

「あ、あはは~~……うん、アタシはお酒飲んで酔うと楽しくなっちゃうからぁ……紺ちゃんが止めてくれて良かったよぉ~~」


 と、言いながら抱き着くイズミ。

 先程までの態度とは一変して、いつもの感じに戻っていた。


「うぅ……ご、ごめんなさい……私の料理のせいで……」

「あ、謝らないでよぉ~~ほら、酔ったアタシが悪かったからぁ……ね? そうだ、今度飲酒マリオカ〇ト配信とかしようよ、きっと楽しいよ~~?」

「う、うんっ……ごめんね、急に大声なんか出しちゃって……」


 2人は互いに慰め合っているのだが、傍から見ればただのイチャつきにしか見えない。

 ただ、紺は本気で泣いているように見えるのだが……。


「まぁ、仲が良いのは良いことだ」


 そして俺はというと、蚊帳の外になっていた。

 流石に百合に混じる男にはなりたくないからだ。




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 ついにやってしまった・・・

 話が全然浮かばなくて毎日更新が出来なかったです。

 こんな日があったらスイマセン。

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