第27話 出品

 紺が荷物ゴミ漁りをした後、すごく満足そうな顔をしていた。


「イズミちゃんっ、これだけ欲しいんだけど貰っても良いかな!?」


 紺は荷物の半分ほどを選んだ。

 というか、本当に選別したのか疑問である。


「……うん、シューチもいいよね?」

「元々全部返すつもりだったから構わないぞ」


 ということで、今回の荷物騒動は終わりを迎えると思ったのだが


「それよりイズミちゃん! これはどういうことですか!」


 まだ何かあるのかと思ったら、そこにはいくつかの食料が入ってあった。


「あー料理配信で使おうと思ってた野菜たちね、でも最近買ったばかりだし腐ってないから大丈夫よ」

「自分で調理しろよ」

「忙しいから無理に決まってるじゃん」


 堂々と開き直るイズミに、紺は怒りながら詰め寄る。


「何を言ってるんですか、この人に食材を渡しても同じ結果になっちゃいますよ!!」


 なんだ急に失礼だな。

 俺だって頑張れば調理くらい……いや、黙っておこう。


「ほら見てください、これなんてカビだらけじゃないですか! これを食べたらお腹を壊しますよ!!」

「おい、納豆は元々腐ってるだろ」


 と、紺が手に取ったのは納豆であり、黙ることが出来なかった。


「うぅん、でも勿体ないじゃん。どうしたらいいのよ~」


 そう言いながらイズミは目を逸らす。

 どうやら紺には頭が上がらないようだ。


「というわけで、私が今から料理を二人に振舞います♡」

「「えっ!?」」


 唐突に宣言する紺に対して、俺たちは驚きの声を上げた。


「どうしたの急に、そんなの悪いわよ」

「遠慮しなくて良いんですよ。でもその間、二人にはお願いしたいことがありますので♪」

「ん、頼みごとか?」


 一体何だろうと首を傾げる。

 すると紺は満面の笑みを浮かべながら言った。


「はい、実はですね——」



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「じゃあやっていこうとは思うが……写真を撮るのは上手か?」

「自撮りが下手な女の子なんていないわ」


 不用品の写真を撮ってくれと言ったつもりなんだけどな。

 俺は商品説明を考え、イズミが撮った写真を使って出品する係をお願いした。

 今回、紺にお願いされたのは不用品をフリマアプリに出品しようという事だった。


 俺たち二人は紺に悪い事をしたので文句は言えない。

 それにご飯も作ってくれるらしいから、ご褒美と思えば大した作業ではないだろう。


 ——そして現在、目の前にある不用品の数々を前にして困っていた。


「……多すぎるだろ」

「ごめんなさい、こんなにも要らない物があるなんて思わなかったから……」


 確かに予想以上の量があり、しかもその大半が服などの日用雑貨品である。

 特に下着類が多く、箱の中に入っているだけでも結構視線に困るものがあった。

 しかし、捨てるとも言えない状況なので、ここは頑張って売っていくしかないだろう。

 まず最初に手を付けたのは不用品の一つでもある段ボールであった。

 中身を取り出して広げてみると、そこには大量の化粧品が入っていた。

 それも高級ブランドのもので、おそらく全て未開封である。


「すげぇな、これが本物なのか」

「ふふん、凄いでしょ? 私、メイクとか大好きだからさぁ。視聴者がいっぱい送ってくるんだよね」


 イズミは自慢気に話すが、それを俺に送ってきたのかと思うと残念な気持ちになる。

 こうして、俺たちの不用品オークションが始まった。


「さてと……これをこうして、と」


 イズミが緑一色の布に商品を置き、写真を撮り始める。

 不用品の中から取り出したのか、とても使い勝手の良さそうな布だなと思い尋ねた。


「この緑のカーテン良いな」

「グリーンバック知らないの」


 これは配信時に背景を変えることが出来る魔法の布だという。

 クロマキーというモノを用いて色々するというが、専門的なことはよくわからない。

 あぁなんかよく配信者がやってるよな~って感じ。

 そういうことをイズミが自信を持って説明してくれるので、配信者らしいことが伺える。


「だけど、お前って顔晒す配信はしないんだよな」

「そうね、あの可愛い女の子使ってる」

「なんでこんなもの買ったんだ?」

「……なんとなく?」


 曖昧な答えが返ってきて思う。

 彼女はお金にルーズな方かもしれない。企画の為とは言いつつも、興味を持ったモノには惜しみなく投資する。

 そんな印象を受けた。

 しかし、俺はその感覚に嫌な気持ちは覚えない。


「まぁ、無駄遣いだけはやめとけよ」

「配信で稼げばいいのよ」

「簡単に言うけど、大変なことなんだぞ」

「わかってるわよ。だから私はこの仕事をやってるのよ」

「あー、なるほどな」


 納得してしまう。

 確かに、負けず嫌いな彼女の考えそうなことである。


「それよりも最近ヤケに紺とべったりじゃないの」

「え、そうか?」

「そうよ、もしかして付き合い始めたんじゃないかって疑ったわよ」

「んなことあるわけないだろ」


 俺は呆れながら答えるが、内心はドキッとしていた。

 紺は可愛いし性格も良い。もし付き合えたら幸せだと思う。

 でも俺はただの追っかけだからな……。


「ほら、またボーッとしてる。本当に大丈夫なの?」


 と言われてしまったので、適当に相槌をする。


「いや、紺にはイズミがいるから太刀打ち出来ないなと思ったんだ」

「その話掘り返すのやめてくれる?」

「すまん」


 イズミは紺に一度フられていたんだった忘れていた。

 だけど、彼女はクスリと笑った後


「大丈夫だって」

「ん、なにがだ?」


 そんなことを言うので聞き返すのだが


「それより出品できたの? ちょっと見せなさいよ」

「あぁ……うん、ちゃんと出来てると思うんだが」


 と、作業に戻ると紺の声が聞こえてきた。


「出来ましたよ~あっ、なに二人でイチャついてるんですかっ!」

「紺にフラれたからこっちに乗り換えようかな~と思ってw」

「そういうのだめです! え、えっちです!」

「どこもエロ要素はないと思うが」


 そして、俺たちは三人でまたメシを食べることにした。



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 今日の分、仕事前に駆け足で書いたのでミスってないか心配です。

 ご指摘待ってます!←

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