ごはんと意思確認
晴れてグリナスタを仲間に迎え入れた後。
俺たち三人は遅い昼食を摂っていた。
料理は勿論グリナスタの手料理だ。確かに師匠の言った通り、なかなかに美味い。
美味いうまいとがっつく俺と師匠を見て、グリナスタはとても嬉しそうな顔をしていた。料理を褒められた事が嬉しいのだろうか?それとも俺たちを失った家族と重ねて見ているのだろうか?
それにしても…心が戻るとは一体どういう状態なのだろう?やはり人のあり方としておかしいと感じてしまう。まぁやったのは俺なのだが…
「ま、考えてもわからん」
そう溢し、料理へ箸を伸ばす。
それよりもだ。
俺は久しぶりの美味いメシを掻き込みながら師匠へと問う。
「それで師匠、このメンバーで研究所へ乗り込むってことでいいか?」
しかし師匠の返事は渋い。
「私は一言も救出するとも、乗り込むとも言っていないが?」
まだそんなことを言ってくる。
お前らの血を持って後悔させてやるんじゃないの?
俺は師匠をじとっと睨む。
睨む俺を見て師匠は眉間を揉みながら、
「仲間が…、ユーナが教会国の翼人であることと、調査の目的が王国にバレている可能性があるんだ。国際問題だ。私の手に余る」
悔しそうにそう溢した。
(仲間の女の名前はユーナさんか、無事ならいいんだけどな…。
それにしても。ふむ、確かに個人で動くと話がややこしくなりそうだ…)
「教会国へ戻ったときにそう言う情報は入ってこなかったのか?」
「いや、戻って行方不明の報告はした。が、2ヶ月前は何も言ってこなかったな…」
(んー、行方不明になってもう半年だよな?
何も音沙汰ないって教会国と王国はお互いこの件を把握していないのか?それともただ師匠に伝えてないだけだろうか?)
そう思いグリナスタに目をやると。
グリナスタは一つ頷き、
「アトラ嬢のお仲間であるユーナ嬢捕縛の件は、第五研究所で止まっています。王国へは報告していません」
そう教えてくれた。
有益な情報だ。グッジョブガチムチ。
それを聞いて師匠がグリナスタへ問う。
「それは王国へ隠れて実験を行うためか?」
「そうです。国に報告すればアルケレトス教会国への交渉の道具として連れていかれますので、室長は意図的に報告をしていませんでした」
(メアならやりそうなことだな。モグモグ…)
「ならそれが王国にバレると第五研究所はどう動く?」
聞かれたグリナスタは少し考え、
「恐らく……室長ならシラを切るかと」
そう私見を述べた。
「なら襲撃しても問題はないのでは?モグモグ」
グリナスタの私見を聞き、俺は再度師匠へ問う。
しかし、
「阿呆。ユーナは仮面の翼人が自分の仲間であると研究所へ言ってしまっている。私が襲撃すれば特徴から仮面の翼人とバレるかもしれない。そうなればアルケレトス教会国がアースシュミラの公共施設を襲ったと言われてもおかしくないんだぞ。大問題だ」
確かに問題だ。こっちが不利過ぎる。
だけどなぁ、師匠の態度…なんか煮え切らないな。仕方ない、ここは俺が年上として一肌脱ぐとしよう。
「師匠は仲間を助けたいのか?助けたくないのか?さっきはあんなに怒ってただろ、どっちなんだ?それとも仲間より国の方が大事なのか?」
先ずは意思を固めてもらうとしよう。
俺にそう言われた師匠はというと
「国はどうにでもなるっ!!仲間を助けたいに決まっているだろうが!!」
俺の胸ぐらを掴んでご飯粒を俺の顔に飛ばしてきた。めっちゃ激おこだ。感情が素直で扱いやすい。
じゃあしっかり煮えて下さいよ。
俺は、「モグモグ、わかりました。モグモグごめんなさい。モグモグ」と平謝りして師匠の手をほどき、顔のご飯粒を拭う。そして再度グリナスタに質問する。
「グリナスタ、あと半年はその融合実験って行われないのか?確実な日数はわからないだろうか?」
師匠と俺のやり取りを見ていたグリナスタは、師匠に対する俺の雑な対応に少し面食らいながらも応える。
「え?ええ、ハッキリとは申し上げられませんが…5ヶ月は確実に大丈夫です」
師匠は軽くあしらわれたのがショックだったのか「あ、えっ?あれ?」と困惑していた。
もう意思確認は終わりましたよ?師匠。
「5ヶ月か…」
残り5ヶ月でできる限り修行して、俺とグリナスタが救出、師匠がサポートならなんとかならないだろうか…
そこまで考えた時だった。
━━━━ズズゥン。
重い地響きと同時に地面が僅かに揺れる。
「「「!?」」」
三人とも同時に動いた。
グリナスタは部屋の隅に置いてあった武器を取りに走った。
師匠は
俺はご飯を掻き込んだ。
師匠にどつかれた。
「糞虫が死にたいのか!?」
いや、マジで腹減ってたんです。すみません。
師匠は毒づきながら俺に言う
「糞虫!あの黒い剣は扱えるようになって…いやそれはないか。早く自分の武器を用意しろ!」
まぁまだ少し重いけど。
そう思いながら一つしかない
「………」
師匠は目を見開き絶句している。
お、驚いてくれたか。どうだ師匠、俺を褒めてくれてもいいんだぞ。
しかし師匠は怨みがましく俺を一瞬睨んで、また羽を一枚、俺の目に差し出してきた。
「その剣は返せ、今後はこれを使って戦え」
えー、せっかく慣れてきたのにな…
不満を感じつつも羽と黒剣を交換した。
手に持った羽が光り、その姿を表す。
俺の手に握られたのは30センチほどの平たい黒い棒だった。
小太刀かと思って引っ張ったりもしたが、別に鞘が付いているわけでもない。
え、これでどうやって戦うんだ?
「…師匠、俺に死ねと?」
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