訓練方法を考えよう
「はぁ、ただいまー」
クマーズを撃退し、無事に拠点へ帰って来た。無事にとは言っても精心的には全然無事ではない。
「今日だけで二度も戦闘、しかも熊ばっかりて、ボッチランニングの開始初日に幸先が悪すぎるわ。いつも護衛してくれていた師匠は実は偉大だったんだな」と軽口をたたく。
とは言え明日もまたクマーズが出てきそうな気がしてちょっと憂鬱だ。
昼食をとってから午後の日課をこなした。
まずは三時間掛けて筋トレ。
腕立て、腹筋、背筋。
道具がなくても体を鍛えられるのは良いことだ。これは人類の誇るべき知恵の結晶かもしれない、しらんけど。
だけど、
「うーん。最近あんまり筋肉量変わらなくなってきた気がする…測定器とかで計れれば良いんだけどな」
黒龍の墓場に来てからまだ1ヶ月と半月だが、現在の俺はかなりムキムキだ。前の世界ならボディービルダーになれるかもしれん。
今までこんなにすぐ筋肉が付いたりはしなかった…。
ボコボコ殴られて打たれ強くなった時も感じたが、この世界に来てから順応性と言うか、成長率と言うか耐久力が急激に上がったような気がする。
とりあえずこれ以上鍛えてもあんまり意味ないかもしれん。
「明日からは筋トレの時間減らして素振りと緑煌眼の訓練時間増やすかな」
一つ問題を解決したが、まだある。
早朝の森林ランニングをどうしようか悩んでいた。現在は朝6時から11時半の五時間以上ランニングに費やしている。長く走れば魔物との遭遇率が上がる。
だがそのお陰で既にスタミナもかなり付いていた。現に今日の戦闘では緊張から来る精神的疲労こそあれど、肉体的には大して疲れていない。
これ以上の体力強化はしなくとも、しばらくは維持のみに努めても良いかもしれない。
「うん、ランニングも今までの半分に減らそう。午前はランニングしながら食糧調達、それに筋トレでいいかな。六時間あれば余裕だろ。
後は…午後は素振りと……」
そこまで言って今日の戦闘を振り返る。
技術もクソもなかった。
一度目はほとんど運の要素が大きい、トドメは爆薬頼りだった。
二度目はただ突っ込んで急所を突くことしか考えていなかった。
「もっと、戦闘を想定した訓練にした方がいいよな…とは言ってもなぁ…一人だしなぁ」
ここにいるのはキューロ一人だ。
技術を教えてくれる人もいなければ、指南書どころか家電すらない。ただアトラが物を捨てれない性格で、ストレージに色々と溜め込んでいたため一応の生活用品は揃った。
ちなみにトイレは外でしている。なかなかの原子人生活を送っていた。
山の斜面に埋め込まれるように作られた拠点は、丸太を半分に切って敷き詰めただけのものだが2階建てだ。それなりに広く作った。二階は寝室が4部屋、一階は水場と訓練所になっている。
訓練所に下りて、丸太やら木の端材を置いている場所に行く。
「とりあえず、打ち込み用の丸太に細工して試してみよう」
そう言って使えそうな物がないか探す。
打ち込み用の丸太の上下に剣に見立てた棒を付け、丸太が回るように細工する。
不恰好だが棒を避けながら打ち込みする分には問題ないだろう。
「でも回転するだけなら、タイミング覚えたら意味ないよな…」
それならばと、天井から蔦を垂らし、薪を結んだ振り子を幾つか作った。
この振り子を避けながら回転してる丸太に打ち込む。二段構えだ。
「うん、なんかごちゃごちゃになったけど、もうこれでいいや」
そんなわけでとりあえず試しに訓練をしてみた。
ベシッ!
「あたっ!」
バシッッ!!
「いっつぅぅぅ!!」
ゴンッ!
「んつぅぅ~~~」
どうやら今後に期待できそうな出来映えだ。
判断基準は全てキューロクオリティだが問題ないだろう。
そして戦闘訓練の後は水浴び。
当初拠点を作る場所の条件は滝がある周辺だった。それは師匠が水場の近くに建設すると駄々をこねたせいだ。
だから滝の真横に訓練所を建設した。したのだが…実は俺しか使っていない。
理由は簡単。水浴びをしなくても俺のリバースで汚れのない体へ復元できてしまうからだ。
師匠は毎日どころかちょっと外に出て、戻って来る度俺を風呂代わりに使い回していた。
体を綺麗にするなら部屋も綺麗にしろよと思う。
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その後もあれこれと色々考え実践した。
魔物とも何度も戦った。いやもう毎日戦った。ちょっと外でるだけで待ち構えてたかのように出てくるんだよあいつら。
襲ってくるやつの大体が熊ばかりだったお陰で、ほとんど苦戦はなかったが。なんだろう…目をつけられてるのかもしれない。
それと食糧調達のために小さい地竜にも手を出した。
初めは竜と言うだけで及び腰になってしまい周囲をグルグル回ってなかなか攻撃ができなかったが、相手の動きが思ったより遅いことに気付いてからは、背後に回り込みチマチマとダメージを与え続け倒すことに成功した。
ごちそうさまです。
ランニングの距離を短くしたからか、ルートを変えたからか、幸い”顔付き”とはあれ以来エンカウントしていない。
できれば一生会いたくない。
「それにしても、最近寒いな」
季節は冬。外は積もりそうな勢いで雪が降っている。
師匠は2ヶ月で戻ると言ったが、既に6ヶ月半経っていた。
もう既に嫌な予感しかない。
「はぁ、明らかにトラブってるよな、この遅さ…」
雪の降る鉛色の空を眺め、俺は今後取るべき行動を考えるのだった。
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