④
大会が終わり、熱戦の余韻だけを残して人がはけ始めたデュエルスペースには、窓から西日が差し始めていた。
「なあ、きみ」チダは優勝賞品のパックの束を机の上にどさりとおいて見せた。「みていただろう? これでもまだ、おれのことを疑うか?」
「とんでもない、きみの実力は本物だ。……無礼なことを言って悪かったよ。本当は、きみの実力を疑ったことはなかったんだ。ただ……」
わたしは白状した。
「きみに、カードゲームをやっていてほしかったんだ」
「へんなやつ」
チダは愉快そうにいった。
「いや、きょうは楽しかったよ。本当に、楽しかった。安い挑発だったけど、誘ってもらってよかった。最近は気が滅入ることばっかりだったからな。カードゲームっていうのは、楽しいもんだな……しかし、このパックは困ったよ」
チダの手はポンと軽くパックの束をたたく。
「賞品としてもらったはいいものの、おれはもう引退した身だ。いまさらカードをもらったところでな」
「……そっか」
「だからさ、半分、買いとってくれよ」
「半分?」
わたしはおもわず彼の顔をみた。
チダは悪戯っぽく笑った。
「おれときみでいまから一戦、やろうぜ。まだやりたりないし、それにこの環境について検討したいこともある。きみくらいの実力の相手なら、やりごたえもあるだろうしな。……それとも、当時のきみの実力は、まさか偽物だったんじゃあるまいな」
「おいおい!」
わたしは胸のあたりが締め付けられた。うれしくて震えそうになった。けれどそれを気取られないようにと、憎まれ口をたたく。
「……言っておくけど、きみが引退している間も、こっちはカードゲームを継続していたんだからな。案外、きみより強くなっているかも」
「そうかい」
「そうだよ」
わたしたちは、卓の対面に着いた。
そして、最初のパックを開封する。──パックにはカードがランダム封入されており、開けてみるまで中身は分からない。そしてわたしたちは、その中からデッキを組み、対戦をする。
火花魔道士は、彼が若かったころの魔術を呼び起こそうとした。 プロ♡パラ @pro_para
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