04 異世界旅行日記

「召喚に成功しました。」

王宮の一角、大きな魔法陣の中心に1人の青年が立っている。

大司教とその弟子たちによる勇者召喚の儀が取り行われたのである。


「ここどこ?」

えぇ~、また異世界?

2度目じゃん。オレはそいう特異体質なのか。

冗談じゃない。勇者なんてやってられん。


前回召喚された時は、右も左も分からず異世界ということもあって

言われるがまま従ったが、金だけ渡されて、あとヨロシクはないだろう。


道中の支援はない。魔族との戦は非協力的。メンバー集めもオレ1人でやった。

挙句の果てには、単身で魔王城へ乗り込む始末。

よく生きて帰ってこれたと我ながら感心したぞ。


なぜ、この世界で生まれた者でもないのに、

自分の命を懸けて、世界を守らにゃならんのだ。

魔族を怒らせた人間側にも責任がある。前回思い知らされた。

お前ら、魔族と交渉して平和条約結べや。

魔族側からしたらオレだけが大量殺戮者の極悪人になってる。

ふざけんな!

異世界に来て何のメリットもない。


「勇者様、お待ちしておりました。」

この場の全員が、膝(ひざ)を付き頭を下げる。

やってられん。


「オレは勇者でないし、あんたらに協力するつもりもない。

 他の者にあたってくれ。」

オレは、勇者のスキルを使って、この世界で自由奔放(じゆうほんぽう)に遊ばせて頂く。

2度目の異世界はバカンス(長期休暇)だ。


「どちらへ?」

「各地を旅行してくる。」

オレはこの場を去った。

ーーー 完 ーーー

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