第2話 一日目
和哉は親睦会という名の寄り道から帰宅してしていた。時間は20時をとっくに過ぎていた。
「ただいま」
疲れ切った声で誰もいない家に挨拶をした。和哉は親に頼み高校生から一人暮らしをすることになっていた。
「家に帰ってきてはいいものの、家事とかやらないとな..」
一人暮らしは自由であるが、今まで母親にやってもらっていた家事を全て自分でしないといけないため少し憂鬱だった。
(学校は明日から早速授業始まるし、予習しておかないとな)
和哉の学校は周りから見ればそこそこ偏差値が高い高校だ。両親から『成績の維持、家事の手抜きは無しと』という条件のもと一人暮らしを許可されたのだ。
「よし、やるか」
小さな声で気合を入れ、教科書を開き勉強を始めた。
次の日の朝、和哉はぐったりしていた。
(調子乗って夜更かししすぎた。眠気がひどい)
昨晩、予習を終わらせ寝ようとしていたら、颯馬から電話がかかってきた。
「和哉起きてるか?」
「今寝ようとしたところだよ」
「それはすまんな。そんなに眠いのか?」
「ああ、同じクラスに智樹と仲良くなってご飯食べに行ってた」
「いいな、僕まだ友達できてないんだわ」
「今度紹介するよ!めっちゃ良いやつだから仲良くなれると思うよ」
などと学校であったことを話しているうちに寝るのが遅くなってしまった。
(今日から授業始まって言うのに、起きてられるかこれ)
不安な気持ちを抱えたまま家を出た。
和哉は学校に到着して一限目の授業の準備を始めた。電車の中で寝たのである程度は目が覚めていた。一限目は数学で和哉の大の得意教科だ。
(昨日はみっちり予習したし、大丈夫だろう)
案の定、今日の授業は自分が予習したと被っていて、余裕を持って問題を解くことができた。
「和哉、よくあの問題解けたよな。他のクラスの人そんなに解けてなかったよな」
授業が終わり、休憩時間に話しかけてきたのは昨日寄り道をした智樹だった。
「ああ、あの問題は昨日予習した範囲内だったからね。教師の説明聞いた上だったし、意外と余裕だったよ」
「うわ、お前優秀だったのかよ。俺勉強からっきしだめだからテスト前になったら頼むわ」
「自分でもやれることはやっとけよ。直前になって泣きついても無駄だからな」
「...善処する」
「なんだその間は。不安になるわ」
二限目以降も特に困ることなく、一日が終えた。困らずとも思っていたよりかは疲れていた。
(まだ二日目だからな。早く学校生活に慣れないと。)
「和哉、今日も一緒に帰ろうぜ」
「おう、いいよ。でも今日はもう一人一緒でもいいか?」
「いいけど、誰?」
「このクラスで、俺と同じ中学だった武田 颯馬だよ」
そんな紹介をしていたら、颯馬本人が和哉と智樹のところに来た。
「僕が 武田 颯馬。よろしくね!」
「俺は 八雲 智樹だ。よろしく!」
二人の自己紹介が終わり、三人で帰宅しようとしていたら、和哉は隣の席の上のとある物が目に入った。
「あれって冬島さんの上着だよね?」
「あっ、ほんとだ。でも冬島さんってさっき教室出て行ってたよね?」
「うん。HR終わったらすぐ帰ってみたいだしね。どうする?まだそんな離れてないだろうし届けにいく?」
「俺行ってくるから二人で先に帰ってて。三人で押しかけても冬島さん嫌がりそうだし」
「確かにな、じゃあ先帰ってるよ。また明日」
「おう、二人ともじゃあな」
そうして和哉は上着を手に取り、軽く走って陽菜を追いかけて行った。
学校を出て先に行った陽菜を追いかけて行った。
(そんなに時間経ってないし、遠くには行ってないと思うけどな)
そんなことを考えながら駅の へ向かっていると、クラスでよく見かけた純白の髪の毛の少女が歩いていた。
(やっと見つけた。でも、見つけたのはいいとして、どうやって話しかけようか。もしかしたら覚えられてないかもしれないし、、)
どう声をかけようか悩んでいると、陽菜はこっちを見ていた。その視線は自分の腕方に向いていた。
「それ、、、私の、、パーカー」
「そうだよね!これ冬島さんの机の上に置いてあったから忘れてるかなって思って」
「うん、、ありがと」
そう言ってパーカーを受け取り駅の中に入って行った。
(冬島さんってやっぱ可愛いな)
そんな当たり前のことを改めて感じた。
家に帰り、今日の出来事を思い返していた。高校生活が始まったばっかにしては色々あった。
(冬島さん、思っていたよりは話しやすかったな。隣で見ている時とは雰囲気違ったな)
思っていた印象とは違い、和哉は明日から少しずつ話しかけてみようと決意した。
冷徹少女の一年周期 @Yutaka_kannagi
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