異世界で初めて街に入ったりする。

「…様………てください。ッカ様……セッカ様。」


「んん…」


「おはようございます。セッカ様。」


私を起こしたであろうローレスが可愛らしい笑顔で私の顔を覗き込んでいた。


「おはよう…ローレス。まだ夜が明けきってないみたいだけど…どうしたの?」


「もう出発するみたいですよ。」


「もう?随分と早いね…。」


「いつまでも同じ場所にとどまっていたら狙われる確率が高くなるから…だそうですよ。」


「そっか。場所特定されて襲われたら困るもんね。」


「はい。」


「よかった。セッカ様起きられていたのですね。」


私を起こしに行ったローレスの様子を見に来たベルモさんが私に声を掛けてきた。


「さっきローレスに起こしてもらったの。」


「無事に起きてもらえてよかったです。少ししたら出発します。長居するわけにはいきませんし今日中には王都に着く予定なので。」


「わかった。すぐに朝食の準備するね。」


「夕食まで頂いたのに朝食まで…いいのですか?」


「簡単な物だけどね。ちょっと待ってて」


私は8枚切りのパンを出してマーガリンとマスタードとマヨネーズを塗る。


具材は…ハムとレタスでいっか。


早めに出発しないとだからね。


あんまり手の込んだものを出している余裕はないし。


「これでよしっと。二人とも出来たよ。」


「まぁ。これは何という料理なのですか?」


「私のいた国の料理でサンドウィッチっていう料理でね?好きな具材をパンにはさんで食べるんだよ。


今回は簡単なものを挟んだだけだけど。」


「はむっ…シンプルな具材ながらとても美味しいです…!」


「…ぜひ王宮の料理に加えたいです。レシピをお教えしてもらってもよろしいでしょうか?」


「パンに挟むだけ…かな。」


大げさな気もするけど…なんにせよ気に入ってくれたようで良かった。


「とても美味しかったです…。これなら私でも作れそうですね。お出かけの時でも気軽に持っていけそうです。」


「朝食も済んだことですし出発しましょうか。」


サンドウィッチを食べ終わった後、私達は王都へと出発した。


ーーーーーーーーーーーーーーーー


「そう言えばセッカ様はこれからどうするんですか?」


「これから?」


「王都に着いてからです。昨日は長居するつもりはないようなことは言っていましたが…」


「冒険者ギルドに行って登録してお金を稼ぐ手段を確保したらしばらくはクエストなんかをして過ごすよ。」


この世界の情報も集めておきたいし。


地図とかも欲しいし。


「とにかく結構長い間いることにしたからローレスの誕生日にも間に合いそうだよ。」


「本当ですか!?嬉しいです!誕生日にもセッカ様の料理が食べられるなんて。」


「私よりおいしい料理作る人もっといると思うけどね…」


「いえ!見たことない料理…腕も一流…これ以上の方は見たことありません。」


「あはは…そうかな…」


まぁ全部万能調理のおかげで私自身は超絶へたっぴなんですけどね…。


まぁそんなことわざわざ説明する理由もないか。


「あ、そう言えば」


「街に入るのってお金掛かったりする?私そこら辺も知らなくて…」


「通常なら銀貨三枚ですけど…そこは心配ありません。私の権限でタダにします。」


「そんなことしちゃっていいの?王様に怒られたりとか…」


「セッカ様は私の命の恩人なんです。きっとお父様も納得してくれます。」


「いいのかな…?」


「王女様なりのお礼なので受け取ってあげてください。」


馬車を運転していたベルモさんがそう言ってくる。


まぁ…そこまで言われたら受けないわけにはいかない。


「ありがとう。私、ここまででほとんど路銀を使い果たしちゃってどうしようかと思ってたから助かるよ。」


「お役に立ててよかったです。」


「…こんなことしてもらってる私が言うのもなんだけどお菓子くれるって言われても付いていっちゃだめだよ?」


「私そこまでじゃないですよ!?」


「冗談だよ。」


「もう酷いです…。」


「ご歓談中のところ失礼しますがもう着きますよ。」


ベルモさんに声を掛けられて外を見てみると大きなお城が真ん中にそびえたつ巨大な街が見えた。


あれが王都…。


「止まりなさい。通行証はありますか?なければ銀貨3枚です。」


検問所に近付くと門番にそう言って止められる。


王族でも銀貨払うんだ…?


「この馬車の紋章が分かりませんか?申し訳ありませんが急いでるので…」


そう言ってベルモさんは街に入ろうとするが門番に止められる。


「いかなる理由があろうと規則は守らなければ…」


「ちょおおおおっと待ったぁ!うちの新人が申し訳ございません!!!!!どうぞお通りください!」


奥から別の門番が飛んできて通行を許可してくれる。


「先輩!何言ってるんですか!」


「…お前後で説教な。」


「ちょっと!」


門番たちがやり取りしている間に私達は王都へと足を踏み入れた。


この後、先輩門番から話を聞いた新人門番が頭を擦りつけて土下座しにきたのはまた別のお話。
















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