異世界で初めての料理をしたりする。
「これで良しっと。」
ローレスに乗せてもらって街へと向かうことになった私は出発する前にさっき倒した盗賊たちを縛っていた。
この盗賊たちは街に着いたら衛兵に引き渡されるらしい。
なんか色々と尋問されるんだとか。
まぁ私には関係のない話なんだけど。
「ローレス。縛ったけどこれどうするの?積荷と一緒にしとく?」
「いえ。引きずっていくので縄を馬車に繋げておいてください。」
「分かった。」
「…アニキ。俺たちどうなるんすかね。」
「…静かにしてろ。この場で死ぬぞ。」
「はいっす…。」
なんか悲壮感が漂ってる気がするけど…まぁ私には関係ないや。
「お二人様ー!そろそろ出発しますよー!」
「はーい!乗りましょうかセッカ様。」
「うん。とりあえずこれでよしっと…」
運転手さんの呼びかけに返事をして馬車に盗賊が縛られた縄を付けて私達は馬車に乗りこんだ。
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「一つ質問をさせていただきたいのですが…」
「答えられる範囲でならどうぞ?」
「セッカ様はどこから来たんですか?」
「私は…東の方だよ。ここよりもずっと遠くのね。」
嘘は言ってない。ほんとのことも言ってないけど。
異世界の人に『こことは違う世界から生まれ変わってきました』なんて言えるわけないし。
それにこれって異世界ものの定番台詞っぽいから言ってみたかったんだよね。
「遠いところ…東…ヤマトの出ということですかね?」
「うーん…まぁそういうことにしておいて」
「分かりました。」
どうやらあまり詮索はしないでくれるらしい。
正直助かる。
「私への質問はありませんか?セッカ様。」
「そうだなぁ…あ、ローレスって王族…なんだよね?」
盗賊たちもローレスのこと王族って言ってたし。
「はい。フレイローズ王家の第三王女ですよ。」
「今更の話だけどもしかして私も様とか付けないと不敬罪で死刑だったりする?」
「命の恩人にそんなことしません!そんなこと言う輩がいたら私の権限で再起不能にします!」
「よかった。」
後半の言葉は聞かなかったことにしよう。うん。
「もう一つ質問していい?」
「何でもどうぞ。」
「これから行く街ってどんなところなの?」
「私のお家がある場所…つまり王都です。
王都エラ。それがこれから行く街の名です。
この国の中心となっている場所です。」
「へぇ…ちなみに冒険者ギルドなんかはあるの?」
「ええ。着いたらご案内しますよ。」
「うん。ありがとう。」
「ご歓談中すみません。お二人様。」
「もう着いたんですか?」
「いえ。もう日が沈んできたので今日はここらで野宿にしようと思うのですが…
でも王女様とその恩人の方をこんな森の中に野宿させるわけには…」
「野宿…!初めての経験ですわ…!」
ローレスは目をキラキラとさせている。
どうやらローレスは野宿というものをしたことがないらしい。
まぁ王族だからそんなことしたことないよね…。
「私は問題ないけど…ローレスは?」
「私も問題ありません!いざとなればセッカ様が守ってくださりますから…ね?」
「…うんまぁ守るけど。」
そんな可愛い顔されたら守らないわけにはいかないじゃん。
「では野宿の準備をしますので少々お待ちください。」
「あの…えっと…」
「あ、申し遅れましたね。私はベルモと申します。王女様の専属運転手をさせていただいております。」
「よろしく。私はセッカ。」
「じゃあ改めて…ベルモさん。私が食事を用意するよ。」
「セッカ様が…ですか?しかし食材は…」
「大丈夫。全部任せていいからベルモさんはローレスと座って待ってて。」
「セッカ様が言ってくれているのですから。私と一緒に待ちましょう?」
「お二人がそこまで言うなら…」
「じゃあ待っててください。」
そう言って私は二人から見えないところに行く。
ここはあんまり見せられないからね。
「作るのは…カレーでいいか。」
野宿…それすなわちキャンプのようなもの…ってことならカレーだよね。
必要なのは…じゃがいもとにんじんとたまねぎとお肉…それとカレールーか。
確か《万能調理》のスキルで何でも出せるって書いてあったけど…試しにやってみようかな。
私は必要な食材を頭の中に思い浮かべる。
「うわっ!」
頭に必要な材料を思い浮かべるとそのままの食材が目の前に現れた。
調理道具と調理台も出てくる。
これは便利だなぁ…。
「とりあえず野菜洗って…あ、水…」
失敗した。野菜を洗うのに水が必要だった…。
でもここに水はないし…。
「…もしかしたら魔法で行けるかも?」
さっきは盗賊の魔法を見よう見まねでやったから出来たけど…
今回は出来るかな?
確か…属性を先に言うんだっけ。
「水よ弾けろ。アクアボール。」
野菜に向けて私は水魔法を放つ。
これでちょうどいい感じに野菜が洗えた。
いい感じに野菜とお肉をカットして鍋に入れたらもう一回水魔法で水を出す。
鍋を火にかけてしばらく待ったらルーを入れてもう一回火にかける。
その間にご飯の準備をする。
さっき炊き立てのご飯想像したら炊飯器ごと召喚されてきた。
やっぱこの能力便利すぎる…。
「ご飯よそってカレーかけて…できた!」
「わぁ…!なんですかこれ!」
「カレーって言うの。二人とも食べてみて」
「では…私から…ん!おいしいです!これ!」
「…材料はシンブルに感じるのにとても奥深い味です。」
「好評みたいでよかったです。おかわりもありますよ。」
「「ぜひお願いします!」」
「はいー。」
カレーは好評ですぐになくなってしまった。
私的にも満足できたし…いい感じかな。
また今度作ってみよう。
「さてと…寝よっか」
「寝る前に…セッカ様に一つお願いしたいことがあるんです」
「お願いしたいこと?」
「今度ある私の誕生パーティーで料理を作ってくれませんか?」
「パーティー?」
「はい。私の婚約者を決めるパーティーでもあるんです。
重要なパーティーなんですが…料理長が体調を崩してしまって…」
「それで私に?」
「はい。」
「…いつまで王都にいるかわかんないから出来るか分からないけどそれでもいいならいいよ。」
「ありがとうございます!」
「じゃあお休み」
「おやすみなさいませ…」
私達は二人そろって眠りについた。
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