108.ドラグーンさん、迎撃激戦
(うわぁ、まるで怪獣大戦だな……)
首長竜に乗るクマと龍に乗るドラグーンが湖上の激戦を繰り広げる。
リバドは湖から次々に魚を釣り上げ、それらが魚雷となり、五月雨にシゲサトとドラドに襲い来る。
「スキル:
フィールドに低い声が響く。
ジサンの戦闘メニューには[スキル:邪手靭鞭]とポップする。
いずれにしてもドラドから生えた無数の鞭状の物体が襲い来る魚群を次々に叩き落としていく。
シゲサトも手数重視の連射系の弾丸をリバド陣営に向けて乱射する。
ボス戦において、プレイヤーはHPが低いため回避行動が重要である。
通常、剣士や格闘職はしっかりと回避し、隙をついて攻撃が基本となる。
魔法職や盾を持つ職業など立ち回りは異なれど、基本は回避だ。
今回のシゲサトは敵のダメージソースの能動的な破壊――“遠距離からの迎撃”を主体に戦うようだ。
おかげでまるでシューティングゲームであるかのように、とんでもなく大味で派手な戦いが繰り広げられている。
シゲサトが放つ弾丸は魚雷群を
釣召喚の特性の性質なのかリバドが乗っている召喚獣へのダメージもリバド本体のダメージに加算されるようで、リバドのHPがジリジリと減少を始める。
(っ……!)
と、リバドが当たりを釣り上げる。
ドラドのような形状の巨大ウナギが矢のようにシゲサト達に襲い掛かる。
すぐにドラドの聖手が同類の撃ち落としに掛かる。
「貫通性か……!」
しかし、ウナギは妨害を跳ね除け、一直線に突き進む。
そして一匹の巨大なウナギは分裂し、小さなウナギの群れとなり、シゲサトに襲い掛かる。
ドラドが最初に使用した防衛スキル:“龍の守り”はスキルの
「うわっ……!」
「
ウナギは数発、シゲサトに着弾してしまう。
一撃のダメージはHPの1/8程度、シゲサトのHPは残り半分程度まで減少してしまう。ドラドにも流れ弾が数発被弾していた。
「くっ……!」
シゲサトは自身のHPゲージを確認し、歯を食いしばる。
[魔法:フェアリー・ヒール]
「えっ……?」
シゲサトのディスプレイに魔法名がポップし、そして減少したシゲサトのHPゲージは完全に充填される。
「…………」
例えば、自身がようやく与えたダメージがほんの僅かの間でなかったことにされたなら、モンスターであっても多少は落胆するのであろうか。
それはわからないが、リバドは一瞬、揺れる釣竿を引き上げる手を停止する。
「きゅうううううん」
湖上にフヨフヨと浮遊している羽つきスライムがぼんやりと発光している。
「フェアイムくん!」
シゲサトは嬉しそうにニコリとする。
「フェアリー・スライム……有難う。シゲサトくんのサポートを頼む。ヒーラーに徹してくれ」
「きゅうん!」
ジサンがフェアリー・スライムをパーティに入れていたのは何も釣りの時のクッションとしてだけではない。
ツキハとの会話を生かし、魔帝戦に備え、ヒーラーの役割を担えるフェアリー・スライムをパーティに組み込んでいたのだ。
そして……
[魔法:フルダウン]
[魔法:スロウ]
シゲサトのメニューに立て続けに
「オーナー……!」
近接主体のジサンは水上での戦闘では、攻撃の機会が限られてしまうが、せめてサポートだけでもと本人の持つ相手にとって極めて陰湿な弱体化魔法を惜しむことなく発動する。
「すまない、シゲサトくん。もっと早く使いたかったのだが……」
発動可能距離まで浮石を移動するのに時間が要してしまったようだ。
「ふふ……
何やらジサンの隣で大魔王さまが呟く。
そういえば、この大魔王さまは飛行することはできずとも、通常攻撃で飛び道具が使えるのであった。
「スキル:黒魔弾」
(っ……!? スキル?)
通常より大きく、通常より遥かに多い黒い光弾が彼女の周りに漂い始める。
「さ、サラ……それは……」
ちょっと可哀そうなんじゃ……と敵陣への憐みを覚える程の
「え? マスター……? 何か言いましたか?」
……発進する。
「あ……いや……」
「……?」
「グギャアアアアアアア!!」
リバドが乗っていた召喚獣が消滅する。
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