102.おじさん、祝われる
[ツキハ:こんにちは、お疲れ様です。この度は、魔王のソロ討伐、おめでとうございます]
(つ、ツキハさんだ……)
メッセージは月丸隊のツキハからであった。
ツキハとは前回、牧場に戻った時に直接会って以来である。
確か、その時はツキハが牧場の99Fを購入したんだったよなとジサンは回想する。
(直接会うと大丈夫だが、メッセージだと何となく緊張するな……とはいえ、無視するわけにはいかない……)
[ジサン:有難うございます]
[ツキハ:魔王のソロ討伐、すごいです! でも、サラちゃんとシゲサトさんは一緒じゃなかったのでしょうか?]
[ジサン:一緒です。運悪く、一人ずつ戦うレギュレーションのダンジョンがありまして、魔王が出てくること自体、知らなかったので驚きました]
[ツキハ:なるほどです。そんなことあるんですね。ちょっとフェアじゃないような・・・でも、それなら事前準備なしで魔王をソロ討伐してしまったということですか。尚更、すごいです! でも、何より無事でよかったです]
[ジサン:ツキハさんのような方にそう仰っていただけると、こちらも光栄です]
[ツキハ:私なんて大したことないですよ。でもお世辞でも嬉しいです]
(……お世辞?)
[ジサン:そう言えば、先ほど、ウォーター・キャットの皆さんがカガを討伐したみたいですね]
[ツキハ:そうみたいですね]
(……)
ツキハはそれだけ返信して、メッセージが止まる。あまり聞かない方がよかったのだろうかとジサンは幾分、動揺する。
だが、少し間を置いて、再びメッセージが来る。どうやら文面を考えていたようだ。
[ツキハ:今回、うちのチユをレンタルしています。なので、貸し1なんですよ]
ジサンは、やはりそうだったのかと思う。
[ツキハ:初めての魔帝攻略だったので、少しでもリスクは下げないと、ということで・・・]
[ジサン:なるほどです。確かにキサさんはヒーラー専任ではないですしね]
(俺達も魔帝リバドに挑む時はヒーラーを入れた方がいいかもな……)
[ツキハ:そうなんです。それは分かってはいるんですけど・・・]
(……?)
ツキハは自分を指名してくれなかったことが少し不満であったようだ。
最近、少し成長の兆しが見えるジサンではあったが、文面からそこまでの感情を読み取ることは難しかった。なので、次のジサンの言葉はただ素直にそう思っただけというものであった。
[ジサン:私ならツキハさんがいいですけどね]
(チユさんは大人のお姉さんって感じでなんか怖いし……)
実際には、かなりの年下であるのだが……
なんだかんだ言って、こうやって律義にメッセージをくれるツキハの人間性にジサンは無意識に好感を抱いていたのだろう。
しかし、再びツキハからのメッセージが途切れる。
(やばい……きもかっただろうか……メッセージを消すか……!?)
と、機能的には可能だが、すでに見られてしまっては意味のない対処法を検討していると、ツキハから返信が来る。
[ツキハ:すごく嬉しいです]
間隔が空いたわりにシンプルな回答が返ってくる。
しかし、社交辞令でもそう返信してもらえると助かるな……とジサンは少し安心する。
[ツキハ:そう言えば、話は変わりますが、ウォーター・キャットが魔帝攻略中に怪しげな集団に待ち伏せされて襲撃されたらしいです]
[ジサン:なんと!]
[ツキハ:その時は退けられたそうですが、結構、強かったそうです。例の魔王討伐プレイヤー狩りかもしれません。ジサンさんは匿名なので大丈夫かもしれませんが、今はシゲサトさんと一緒にいると思うのでくれぐれも気を付けてくださいね]
実はイナワシロコでそれらしき二名に襲われていたのだが、必要以上にツキハを心配させるのはよくないかとジサンはそのことは伏せた。
[ジサン:分かりました。ツキハさんも気を付けてくださいね]
[ツキハ:はい、お気遣い有難うございます]
◇
そしてジサンらは目的の地、ビワコに到着する。
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