101.おじさん、戻る
「行ってしまったな」
「はい……」
ステファの幾分の哀愁を含んだ声にハーデが反応する。
想定通り、森の境界を超えた不思議な旅人達の姿は消えてしまう。
ただ、ちゃんと元いたゲームの世界とやらに帰れたのかはやや不明確ではあった。
もしや向こう側の森に出ているということはないよな? とステファは思う。
ステファは地面を見つめながら、少々、気まずいシチュエーションを考えているとハーデが声を上げる。
「ちょ、長老……!」
「……? ……!」
顔を上げたステファも驚く。
「これは……」
それは彼女らにとっても
ここ半年程、彼女らを悩ませた森の壁は消失している。
森は途切れ、眼前には穏やかな平原が広がっていた。
「……戻ってきた……のか?」
◇
「出られた……のかな?」
シゲサトが呟くように言う。
(……)
明らかに森ではない。
ジサンらは山道の道路のようなところに出る。
振り返れば先程までいた森はそこにない。
「マップ、表示されてますね」
「お? 本当ですか」
シゲサトの言葉にジサンも同様にマップを確認すると確かに森の中では表示されていなかったマップを見ることができた。
(グンマの辺りか……)
「あ、ちょうどいいところにバス停もあります!」
シゲサトはバス停のある方向を指差す。
「このバスって元々、俺達が乗ってたバスですね。ラッキーです! これでまたビワコを目指せますね!」
彼らは魔帝:リバドの攻略のためホンシュウ三湖の攻略途中であったのである。
バス停でバスを待っていると一つの通知がある。
==========================
◆2043年3月
魔帝:カガ
┗討伐パーティ<ウォーター・キャット>
┝ミズカ クラス:魔勇者
┝ユウタ クラス:槍聖
┝キサ クラス:ヒール・ウィザード
┗チユ クラス:ジェネラル・ヒーラー
==========================
◇
ウォーター・キャットは無事に魔帝:カガを討伐したようであった。
バスに乗り込んだジサンはシートに腰かけ、ポチポチとパネルを弄りながら、ぼんやりと思考する。
この通知が初の魔帝攻略の達成の通知であり、シゲサトは「負けてられないですね! 俺達も続きましょう!」と言っていたが、ジサンは内心、安心していた。
ただでさえ、魔王:メフェルジルのソロ討伐で目立ちつつあるのに、魔帝の初討伐にまで関わってしまえば、特定班を本気にさせてしまうかもしれない。そんなことを思っていた。
(しかし、ミズカさんは魔女から魔勇者というクラスにチェンジしているな……道理で魔法職らしからぬ戦い方をしていたのだな……あとはユウタさんも長槍兵から正当進化といえる槍聖へのクラスチェンジ……月丸隊のチユさんは助っ人かな?)
と、おじさんなりにいくつかの変化に気付く。
フレンド登録しているのだから直接、聞けばいいのだが、彼にそのような甲斐性はない。
一方で相手がNPCであれば、それほど怖くはないようだ。
[ジサン:例の答えられない情報って、プレイヤーの情報で合っているか?]
[ルィ:ちょっ! ついに前置きなしに!?]
[ジサン:あっ、すまん。]
ジサンはルィに答え合わせを試みる。
エルフについて情報を得ようとした際、ルィは魔神の居場所や超レアアイテムの情報も提供できるが、答えられないゲームの情報があると言っていたのだ。
[ルィ:まぁ、いいよ。どうせ暇だし]
[ジサン:で、どうなんだ?]
[ルィ:悔しいけど、正解だよ]
[ジサン:なるほどな]
確かにプレイヤーの情報を提供するのはフェアではないと言ったところか……と適当に納得するジサンであったが、その時、ルィとは異なる差出人から一件のメッセージが届く。
(……!)
[ツキハ:こんにちは。お疲れ様です。この度は、魔王のソロ討伐、おめでとうございます]
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます