97.機械魔王、大将
「え? メフィルジルって魔王じゃない?」
ジサンと巨大な機械兵が対峙する状況下、ジサン同様、ライダー・マシンか何かが来るのだろうと思っていたシゲサトも驚きを示す。
「は!? 魔王じゃと?」
シゲサトの発言に、今度はステファが反応する。
ステファにも空中に浮かぶ不思議な名称表記は見えており、メフィルジルという音とシゲサトが発した敵の名称は一致する。
ステファにとって、目の前の巨大な機械兵と自身のイメージする魔王像との間にやや乖離(かいり)があったようである。
シゲサトはステファの発言からそこまでの意図を汲み取ることはできず、自身と同様に、こんなところに急に魔王ランクが出現したことに驚いたのだと認識したため、ステファの驚き様を特段、拾うことはなかった。
「オーナー、大丈夫かな……」
シゲサトは純粋にジサンを心配する。
「主、ソロで魔王を討伐したのだよな?」
サラがやや不機嫌そうに言う。
「え? そうだけど……」
「ならば大丈夫かどうか、分かりそうなものだが?」
「え?」
「A
「……っ! …………?」
サラはしたり顔で告げるのであったが、論理式を可視化せずに言われても案外、伝わらないものであった。
◇
魔王:メフィルジル。
唯一のメタルタイプの魔王ランクであり、現存、稼働している機械兵の中では最強と言って過言ではない。
大型の機械兵であり、7メートルほどの高さがある。機械兵らしく単眼の赤く光るモノアイ、そして鋼鉄の体で身を包む。
八本の腕を有し、初期設定(デフォルト)では、それぞれに剣、斧、盾×2、銃×4を保持していた。
メフィルジルから観測したターゲット”ジサン”が行動の兆候を示す。
高度に組まれたプログラムは通常、勝利への最適解を常に選択し続ける。
算出された解はターゲットの初手行動の阻止は不可欠であることを示す。
[スキル:パワー・ガトリング]
四本の腕が持つ銃をターゲットに向けて連射する。
「のわっ! いきなりかっ!」
ターゲットは驚きの声を上げる。
行動目標を達成し、ターゲットの意図行動を阻害し、回避行動を選択させることに成功する。
同時に予想される次の行動の阻害のため、ターゲットとの距離を詰める。この行動も阻害不可欠であると解は示している。
[スキル:五月雨斬り]
盾は意味を為さない。示された解により、初期設定の二枚の盾を格納し、剣に切り替える。
三本の剣、一本の斧でもってターゲットに手数最優先の最大稼働速度での攻撃を加える。
ターゲットによる致命的行動の猶予を与えないための行動だ。
「――――!」
致命的行動の阻害中であったはずだが、腹部への損傷を検知する。
ターゲットによる通常攻撃。
メフィルジルの特性:アイロン・アーマー により、閾値に達しない物理攻撃は全て無効化する。
だが、解は当初より、特性の有効性を否定しており、その計算が正しいことが立証された。
致命的行動と定義されたそれとは異なるものの阻害行動、虚しく、ターゲットによる攻撃を被弾し、ノックバックが発生し、懸命に阻止していた”隙”が発生する。
ターゲットによる魔法:フルダウンの実行を確認。
「公開魔王ってことは残念だが、テイムできないんだよな……」
[ターゲットの解読可能、動機不明な発言、及び、武器:契りの剣TM から ノーブライト への変更を確認]
過程は想定していた順番とは逆であった。だが、結果は同じだ。
[致命的行動の実行を確認……モード:排除より延命へ移行]
◇
[スキル:魔刃斬]
[ターゲットによるスキル:魔刃斬の被弾を確認]
[被ダメージ32%、総被ダメージ121%]
[最終与ダメージ率28%、所要時間8分40秒、延命目標…………達成]
解などなく、本能のままに戦うおじさんは思う。
(……魔王、やはり強敵であった。最後まで予断を許さない闘いであった)
そして無邪気に提示された成長(レベルアップ)を喜ぶ。
(お? 新しいスキル覚えた)
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