96.大魔王さん、中堅
表記名はセイバー・マシン。
一本の剣を携えた機械兵がサラの前に立ちはだかり、そしてこれまでの二体同様、挑戦者の第一手を待っている。
「全く……ここまで出て来てやったというだけでも大盤振る舞いなんだが……使命(プログラム)とはいえ、格上に配慮するとは小癪(こしゃく)な……」
サラは“挑戦者”を待つという機械兵の態度が気に入らないようであった。
「本来ならばお主ごときには勿体ない代物であるが、その可哀そうな運命に免じて、使ってやるか……スキル:支配……」
サラがそう呟くと、セイバー・マシンは単眼から紅い残像を残しながら、猛烈な勢いで支配者に向けて突撃する。
機械兵とサラが交差する刹那。
[スキル:雪華――]
機械兵の見た目に似合わない可憐さを連想させるスキルを発動しようとする。だが……
「雑魚をいたぶるのは趣味じゃない」
「――…………!」
機械兵がその剣を振り抜くより疾く、小さな力点がターゲットを捉えていた。
不思議なことに観戦者からは、その瞬間だけがスローモーションのように映っていた。
サラの黒い光を発する拳が機械兵のモノアイ煌めく顔面を著しく歪ませ、その運動エネルギーは逆方向へベクトルを変える。
強い衝撃で弾き返された機械兵はボールのように吹き飛ばされ、数十メートル先にあるフィールド端の壁に激突する。その威力で壁に破壊エフェクトが発生するが、HPゲージが損失していたのは恐らくその前の衝撃時点であろう。
「「っ――…………!」」
観戦者二名は絶句する。
二名もそれほど危機に瀕するようなことなく機械兵を退けた。
しかし、この少女はその場から動くこともなく、開始数秒、ただの通常攻撃、一撃で仕留めてしまったのだ。
「お、オーナー……さ、サラちゃんって何者なの……?」
シゲサトが幾分の焦燥を浮かべながらジサンに尋ねる。
「え……?」
見た目に反して強すぎる上に出自不明のサラが何か”特別な存在”なのか、そういう意図で訊かれた質問であることはジサンにも何となくわかった。
しかし、ジサンにとってはそういう意味での特別な存在ではなかった。単純に適当な回答が思い付かなかったというのもあるが……
「……別に何者でもないと思いますが……」
「っ……! そ、そうですよね。変なこと聞いてすみません」
「いえ……」
そんなマスターの回答はつゆ知らず、平然な顔でトコトコと戻ってきた大魔王様は微笑む。
「さ! マスター……! 大将戦、よろしくお願いします!」
(……っ!)
◇
少し前――
順番決めの一幕があった。
「じゃあ、俺、一番手やりましょうか」
誰も仕切ろうとしない状況にしびれをきらしたのか、シゲサトが立候補する。
「あ、どうぞ……」
特に異論もなかったため、シゲサトの先鋒が決定する。
「では、ワシが大将を引き受けよう……この戦いに巻き込んでしまった責任が――」
「NGだ」
「えっ!?」
サラがステファの発言に異論を呈し、その理由を高説する。
「大将とは、メンバー内で一番の強者が務めるものと決まっているだろ? ならばそれを誰が担うべきかは最初から決まっておる」
(サラ、大将やるのかな?)
◇
なんで俺が大将に……ガラじゃないんだがなぁ……と思う大将おじさんであった。
(まぁ、最後の一体も今までの三体と似たようなウォーター・キャットの劣化版のような機械兵……差し詰め、バーサーカー・マシンかなんかだろう……)
ジサンはそんなことを思いながら、気の乗らない足取りで定位置に立つ。
と、ワープ床から最後の機械兵が出現する。
(…………!)
出現したガーディアンを見上げながらジサンは小学生並みの感想を抱く。
(でかい)
表記名は”メフィルジル”。
(え? バーサーカー・マシンじゃないのか? ってか、メフィルジルって公開魔王にいなかったっけ……)
==========================
<難易度><名称>
┗<報酬><説明>
魔王 メフィルジル
┗魔装:珠玉槌 鍛冶スキル、特性の強化
==========================
いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます