94.ドラグーンさん、先鋒

「よし! じゃぁ、まずは俺が様子見というわけで」


 先鋒:シゲサト。


 立候補もあり、一人目のガーディアン攻略として、シゲサトとヴォルちゃんが選ばれる。

 テイムモンスターは使役者とセットでカウントされるようで、使用可能であった。

 ただし、モンスターの使役はパーティメンバーが五名以下になるようにしなければならない制限がある。

 その枠をヴォルちゃんが使用しているので、ジサンは必然的に使役なしで戦う必要があった。


 シゲサト以外のメンバーは同フロアに用意された観戦用領域に入る。

 観戦用領域には不可視の壁が出現し、手出しはできないようだ。

 すると、ワープ床が出現し、そこから機械兵が出現する。


 機械兵に表示された名称は”ランサー・マシン”。


「油断せずに、シゲサトくん」


「了解です」


 ジサンが簡単に声掛けすると、シゲサトは嬉しそうに返事する。


「さて……」


 シゲサトが臨戦態勢に入る。


 ランサー・マシンは身体と同じ銀色の円錐状の長槍を右腕に、五角形の分厚い盾を左腕に保持して、赤いモノアイを不気味に光らせながらその場で待機している。


「よしっ! 行くよ!!」


 その言葉で戦闘が始まる。


 シゲサトは挨拶代わりに弾丸を掃射する。

 ヴォルちゃんもそれに呼応するように口から吐いた火炎弾をランサー・マシンに叩き込む。


 それらの攻撃はランサー・マシンに着弾する。


「……堅いね」


 しかし、ランサー・マシンのHPは減少していない。

 その分厚い盾で遠距離攻撃を防いでいる。


 シゲサトが戦術について思考を巡らせていると戦闘メッセージがポップする。


[スキル:メガ・ラッシュ]


 ランサー・マシンは槍を前方に構え、シゲサトを目掛けて一直線に突進してくる。


「っ……!」


 咄嗟にシゲサトも通常攻撃で迎撃しようとするが、ランサー・マシンは盾により自身の前方を上手く保護しており、勢いを止めるには至らない。

 その間にもランサー・マシンはシゲサトとの距離を一気に縮め、そして、急停止、強烈な一突きを放つ。

 その一突きはシゲサトをかすめる。


「シゲサトくん……!」


 ジサンは思わずシゲサトの無事を案じる声をあげる。


 シゲサトのHPは1/4ほど減少する。紙一重のところで真横方向へ飛び込むように移動することで直撃は免れたようだ。


 だが……


[スキル:テンペスト・スラスト]


「っ……!」


 ランサー・マシンは体勢の崩れたシゲサトに対し、躊躇なく迫撃する。


 大槍による八連撃がシゲサトを襲う。


 近接戦闘における防衛手段を多く持たないドラグーンにとって、出来ることは回避行動のみである。


 だが、一時は近接戦闘の達人”剣聖”にも上り詰めたことのあるシゲサトは卓越した反射神経による最小限の動きで被弾数を1に抑える。


「――!」


 それは機械兵にとって想定外の出来事であったのか、戸惑うように一瞬、静止する。


 次の瞬間、再び、シゲサトの戦闘メッセージがポップする。


[スキル:噴融炎]


「――!」


 半径二メートル大の地面が紅く染まる。溶融した岩石エフェクトは輝きを放ち、熱エネルギーを解放する。

 次の瞬間には”ランサー・マシン”は地面から吹き荒れる紅蓮の炎に包まれる。


「さんきゅー! ヴォルちゃんっ!」


 シゲサトがスキルの使い手、功労者に感謝を告げる。


「その灼熱じゃ、ご自慢の盾もやんわりじゃない?」


「――――!」


「決めちゃうよ! スキル:撃滅貫通砲!」


 ドラドを仕留めた貫通性能の大技。

 レーザーのような残像を残す一筋の弾丸を至近距離から射出する。


「悪いけど、君くらいはゴリ押しで勝てないとね……」



 ◇



「お待たせしました! 思ったより強めです。気を付けた方がよさそうです」

「ヴォル!」


「お疲れ様です、グッジョブです」


 ジサンは謙虚な勝者を迎え入れる。


「さてさて、勝ったはいいけど、上階にはどうやって行くのかな?」


「あれかの?」


 サラが指差す先には部屋の中央付近には紫色のリング状のエフェクトが発生していた。


 四名と一体はそのエフェクトの中に入る。

 すると、想定通り、ワープが発生する。


 部屋の雰囲気はあまり変わらないが、確かにそこは上階であるようであった。

 今までいた部屋との明らかな差分、それは次のガーディアンの存在である。


 機械兵に表示された名称は”キャスター・マシン”。


「さて……ワシの出番じゃの……」


 その透き通る長い髪をなびかせ……ることなくリュックサックにしまった幼い佇まいの長老エルフが前に出る。


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