93.おじさん、製兵所の探索

 ジサンらは神殿風の建造物に侵入する。


「なんだろここ……」


 不審な建造物に警戒するようにシゲサトが呟く。


 建造物からメタルタイプのモンスターが湧いていたことからも想像がついたが、実際に建造物内部にはメタルタイプが溢れかえっていた。


「ここが機械兵が湧いてくるポイントである可能性は高い。もう少し深部の調査への協力をお願いしてもいいじゃろうか」


「構いません」


 ステファの打診に対し、ジサンらは快諾する。


 その後、神殿内部をくまなく網羅するように調査していく。

 不思議なことに大量にいる機械兵はこちらから攻撃しない限り、危害を加えてくることはなかった。メンバー内で出た仮説の中では待機中なのではないかというものが最も有力であった。

 そして、ジサンらは最初の階層1Fにて、恐らく神殿の中央に当たる部分の広い部屋に到達する。


「なんだろう、ここ……ボス部屋みたいだね」


 シゲサトがぽつりと呟く。


「!?」


 ジサンらが部屋の中に進行すると扉が自動で閉じられる。


「な、何事じゃ」


 ステファは動揺を示すが、ジサンやシゲサトはそうでもなかった。

 リアル・ファンタジーのボス部屋では頻繁に起こることであったからだ。


 すると、部屋の中央付近に光学ディスプレイが投影される。


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“未開の製兵所ダンジョン”のルール


 本ダンジョンは四名パーティ専用ガーディアン方式が採用されております。

 神の子を守りし各階層の守護者ガーディアンに挑むことができるのはパーティのうち一名となります。

 下階にてガーディアンに挑戦した者は新たなガーディアンへの挑戦権を失います。

 一名の挑戦者が敗北した場合、その挑戦者はゲームオーバーとなり、他のメンバーはダンジョン外に排出されます。


 ガーディアンへ挑戦しますか?

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「なんなのじゃこれは……?」


 ステファは眉をしかめて、口は開いている。


 ダンジョンそのものへの驚きは大きくはなかったが、突如、出現した"遊戯ゲームのような"ルールには大いに不可思議さを感じたのであった。


「どうします? 一人ずつとなると”瀕死ルール”は採用されないと思いますが」


 シゲサトが誰とはなしに尋ねる。

 瀕死ルールとは戦闘中、HPがゼロとなってもパーティメンバーが生存していれば、その間は死亡することはないというリアル・ファンタジーが取り入れている救済的なルールである。


「瀕死ルール? よくわからぬが……ここまで付いて来てもらっただけでも充分じゃ。一名ずつとなればリスクは増大するじゃろう……旅の者達を道連れにはできまい」


 ステファは険しい表情で言う。


「別にいいですけど」


「え!?」


 ジサンの淡々とした発言にステファは再び驚く。


「俺も大丈夫っす!」


 シゲサトもジサンに同意する。

 サラは勿論、平然とした顔をしている。


「ダンジョン内に別のダンジョンがあるのは珍しいですね。オーナー、もしかしたら、この製兵所は、森を抜けるための条件フラグかもしれないですね」


「確かに……」


「フラグ? し、しかしそうであるか……」


 ステファは未だ戸惑うようにしている。


 そんなステファをニヤリとした表情で煽る奴がいる。


「そういう主はあるのか?」


「え……?」


「我らに付いてくる覚悟じゃ」


「…………っ!」


 ステファは一瞬、ハッとしたような表情を浮かべるが、目を瞑って語り出す。


「一名ずつの方式に躊躇していたのは其方らが窮地に追いやられた時に、ワシが助けてやることができぬからじゃ」


 そして、こちらもニヤリと笑ってみせる。


「つまり……愚問じゃな」


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