87.おじさん、問われる
「マスタぁ……そのお肉はサラのお肉ですぅ! ……むにゃむにゃ」
(……)
一度はベッドに潜ったがすぐに眠ることができず、体を起こしていたジサンは、また変な夢見てるなぁと気持ちよさそうに眠る大魔王さまを見つめていた。
「ふふ……こうしてると可愛いですね」
(お……?)
サラを挟んで反対側で眠っていると思っていたシゲサトも体を起こす。
「起こしちゃいましたか?」
ジサンは尋ねる。
「いえいえ、昼間、バスで寝ちゃったからあんまり眠くないんですよ」
「そうですね」
ジサンも同意する。
一瞬の沈黙の後、シゲサトが質問をする。
「…………そういえば、オーナーってクラスは何なんですか?」
「あ、言ってませんでしたっけ? えーと……」
「あ! 当ててもいいですか?」
シゲサトは眉をキッと逆八の字にしながら言う。
「え? ……まぁ、どうぞ」
「ずばり……アングラ・ナイト! ですか?」
「……!」
言い当てられたジサンは、さてどうしたものか……と考える。
ユニーク・クラスのアングラ・ナイト。
そうだと言えば、匿名で魔王を討伐した意味は薄れてしまう。
だが……
「正解です」
「わー、やっぱりそうだったんですね!」
シゲサトは目を丸くする。ついでに口も物理的に丸くする。
「つまり月丸隊さんと魔王カンテン、魔王エスタを討伐したってことですよね?」
「……あまり他の人には言わないでくださいね」
「勿論です! そこは信じて欲しいです」
シゲサトは慌てたように言う。
「信じますよ」
「……! へへ……有り難うございます」
ジサンはシゲサトを信用していた。シゲサトから滲み出る素直で実直な性格はジサンにも十分伝わっていた。
ジサンの”信じます”という短い言葉に、シゲサトは一瞬、豆鉄砲をくらったような表情を見せるが、すぐに照れくさそうなニヤケ顔を見せる。
「でも、おかげでいろいろと合点がいきました。月丸隊さんと交流があったり、サラちゃんが魔王を凌駕するって言ったりした点、そして何より牧場100Fのオーナーであり、とても強いこと」
「……! い、いえいえ、私なんてそんなに誉められる程ではありませんよ。魔王討伐も月丸隊さんを手伝っただけですし」
エデンソロ討伐という唯一無二の実績を持つシゲサトに誉められてジサンは嬉しくないかと言われれば嘘になるが、ニホン人らしく謙遜する。
「そんなに謙遜しないでください、俺だってピュア・ドラゴンにはそれなりに焼き餅をやいているんですよ!」
「はは……」
まさかあのナイーヴ・ドラゴンがドラグーンに嫉妬される日が来るとはなと感慨に耽るジサンであった。
「あ、そういえば、今度、ドラドをレンタルさせてもらっても?」
ジサンは流れに任せて何となく言い出しづらかったドラドのレンタルを依頼する。
「もちのろんです!」
シゲサトは予想通り快諾し、無事に約束を取り付ける。これでユニーク・シンボルであるドラドをモンスター図鑑に登録することができるというわけだ。
この森を無事に抜けたら一度、牧場にでも戻るかな……とジサンは思う。
(ってか、牧場にワープすれば戻れるのかも……)
と考えるジサンであったが、それを試すのは機械兵をテイムしてからでも遅くはない。
「でも……」
(……?)
ふいにシゲサトはそれまでより少しトーンを落とす。
「オーナー……俺のことオトコだって言っていただき有り難うございました」
「え……?」
「オーナーがどういう想いで言ってくれたのかはわかりませんが、俺、嬉しかったです」
そう言って、シゲサトは流し目気味に微笑む。
(……)
あまり深い意味はなかったのでジサンは少しばかり返答に困る。
「あ! それで是非、聞いておきたいのですが……」
「はい……」
「オーナーは男性と女性、どちらが好きですか?」
「……!?」
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