74.おじさん、発見する

 女性の表面積は約1.4平方メートルである。


 ここで、ビキニスタイルの水着のおおよその面積を算出する。

 まずはボトムである。底辺ウェストを30センチメートル、腰から恥骨までの高さを20センチメートルと見積り、前後2枚の三角形として近似する。

 一方、トップスの布部分はやや大きめに半径10センチメートルの2つの円であると近似する。

 また紐部分は十分小さく、ゼロであると仮定すると、


(0.3×0.2÷2×2)+(0.1×0.1×π(3.14)×2)≒0.12平方メートルである。


 これを百分率で表示した場合、

 0.12÷1.4×100≒9%

 となり、邪龍出現条件の身体に占める布の表面積の割合が30%以下を十分満たせそうである。


「な、なんて邪悪なの……!?」


 邪龍出現条件を確認したミズカが焦燥の表情で呟く。


「え? 俺達の邪龍さんって何? 何言ってるの? ミテイさん……! ちゃんと聞こえてたよ!」


(……)


 ミズカがまた何やら呟いている。


「あー、あの子のことは気にしないで。サイコパスだと思っていただければ大丈夫です」


 ユウタが苦笑いしながらジサンらに言う。

 それはあまり大丈夫ではないのでは? と心配になるジサンであった。


「言うて、俺た……えーと、邪龍……どこにいるかもわからないしねぇ」


 いや、ユウタさん、あなたも今、俺達の邪龍さんって言い掛けただろ! と思いつつ、ジサンなりに邪龍さんのことを分析する。


「確かにどこにいるかわからなかったら跨り様がないですね。このダンジョン内のどこかにはいると思うのですが……」


「案外、堂々といるかも」


「そういうもの」


 キサがぽつりと呟き、サラが同意する。


「お、オーナー……あれ……」


「ん……?」


 ジサンが気付くと、シゲサトが俯きながらも腕を上げ、何かを指差している。


(……)


 シゲサトが指差す先は、このダンジョンのシンボル的な存在。巨大なウネウネと曲がりくねったウォーター・スライダーである。


「シゲサトくん、ウォーター・スライダーがどうかしたの?」


「……邪龍」


「…………………………あっ!!」


 一瞬の間を置き、シゲサト以外の数名が驚きの声を上げる。


 言われるまで気づかなかったが、確かに遠くから見ると、それは長い胴体に手足がついたニホン風(大陸由来)の龍の姿そのものであった。


「だけど、もう一つ問題がある。美女が四名……」


 ユウタが明らかな美(少)女、三名を目視しながら言う。


(サラ、ミズカさん、キサさん……)


「流石に性別は魔帝:ジイニの”雌雄転換”でもない限り変えられないしね……今回は諦めるしかないか……」


 ミズカが残念そうに言う。


「ちょっ……! ちょっと待って!」


 俯いていたシゲサトが声をあげ、皆がそちらを向く。


「も、もしかしたら……俺なら条件を満たせるかもしれない……」


「え……」


 事情を知らぬ三名、及びサラが怪訝な目を向ける。


「えーと……もしかして……」


「いや、ちゃんとした女と呼べるかはちょっと微妙なんだけど……試してみてもいいとは……思う……」


 シゲサトは少々、辛そうに言うのでジサンは心配になる。


「で、でも……最後に布面積の壁が……」


「っ~~!」


 ユウタが非情なことを言うと、シゲサトは目を大きく広げ、顔を赤くする。


「シゲサトくん……無理はしない方が……もしかしたらフレアとかでも代替できるかも……」


(フレアなら特性:応援で俺がいないパーティに参加することができる。精霊に水着を強要するのはそれはそれで気が引けるが……)


「お気遣い……有難うございます、オーナー。ですが、俺がテイムしないと意味がありません!」


「……!」


「ユニーク・シンボルのドラゴンを前にして、こんなことで引き下がってはドラグーンの名が泣きます!」


 シゲサトの目に力が入る。


「俺、やります……! 漢なら一肌脱がなきゃ!」


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