73.おじさん、調査する
「どっちが速く滑れるか競争だ!」
「えっ!? わ、わかったわ! でもお姉さん負けないよ!」
「なぜ私が……」
(……)
サラとウォーター・キャットの二人は横並びのウォーター・スライダーのてっぺんに腰掛け、スタートの時を待っている。
彼女らはなぜか遊んでいる。
「言うて、邪龍の出現条件わからんしな……」
先刻、ユウタが発した言葉である。
その言葉の通り、誰も邪龍の出現条件がわからなかったのである。
わからないなら仕方ない、せっかくだからもう少し遊ぼうよ! ということで現在のようなレースが勃発したのである。
水着姿の美女三人が巨大な直滑降の滑り台を猛スピードで降りてくる。
「おー、滑ってるなー」
スライダーの終着点付近、ジサンの隣で女子達の滑降を見ていたユウタがそんなことを呟く。
なお、サラは一度滑ってからは怖いと言わなくなった。
最初から怖くなかったんじゃないか? と思うジサンであった。
「狙っている魔帝の出現条件の一つなんですよね。まぁ、邪龍ドラド以外の代替条件もあるから絶対というわけでもないんですけど」
これはミズカが教えてくれたことだ。
ウォーター・キャットの面々は最悪、ここで邪龍ドラドを倒さなくても良いようであった。
「わぁい! 私の勝ちぃ!」
滑り台レースはミズカが勝利したようであった。
「ふん……重量の差が出たか……」
サラは悔しかったのか負け惜しみを言う。
「ちょっ! 待って! 例の斜塔の実験知らないの!? 重力による物体の落下速度は、その物体の質量の大きさに依存しないんだよ! QED!」
ミズカは意外とむきになって反論する。女性にとってその質量の
◇
「さて、ダンジョンの探索に行きましょー!」
遊びが一通り終わったのか、ようやくダンジョンの探索に動き出す。
「きっとダンジョン内に邪龍ドラドに関する何らかの手掛りがあるはずだ。で、どうする? 二手に分かれます?」
ユウタが場を仕切り出す。
「うーん、こんな風に会うのもそんなにないでしょうし、せっかくだから一緒に行きましょうよ!」
ジサンはミズカの提案に特段、反対はしなかった。
ウォーター・キャットの皆さんはレジェンド級のパーティにも関わらず、月丸隊同様、悪い人達ではないと感じていた。
中心人物の性格の差なのか何となく月丸隊よりのんびりした雰囲気が漂っている。
◇
イワキ・ハワイヤン・ダンジョンは水着の着用が条件となっている。
水着とはつまり私服であり、即ち防御力0でないと入れない。
だが、そのせいもあって、生息するモンスターはそれほど凶悪ではない。
レベル70もあれば放っておいても問題ないレベルであった。
ただ、そのレベル70に到達しているプレイヤーはそう多くはなく、ダンジョン内部も人はまばらである。
「あっ! あれは!」
しばらくダンジョン内を歩き回った後、ミズカが気付いた視線の先には水面から湯気が立つ円状の湯船があった。
「お風呂だ! 入りたいぃ!」
サラが言う。
「サラ……今はダンジョン探索中だぞ」
「はーい」
すぐに欲望を垂れ流すサラをジサンが嗜める。
「って、あれ? なんか看板があるね」
ミズカが気付いた通り、確かに湯船の横には看板がある。
「邪龍の湯……?」
その看板には湯の有り難い効能がつらつらと書かれていた。
その中で気になる文言が一つ。
伝説の邪龍は身体に占める布の表面積の割合が30%以下である水着を着用した美女四名がパーティとなり、身体に跨ることでその猛々しい姿を顕現すると言い伝えられている。
(……随分、具体的な数値を提示する伝承だな)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます