69.おじさん、氷樹林の決闘
プレイヤー同士の戦闘ではパーティという概念は無くなる。
何対何の戦いになってもなにかしらの制約が入ることはない。
今回の状況においては5対2。若干、一名はこのような状況においても炬燵で丸くなっているため人数から差し引いたとして、使役モンスターも加味すれば実質、6対2であった。
「結構、腕に自信があるみたいだけど、多勢に無勢。流石に厳しいんじゃないの!?」
そんなことを言いながらもシゲサトは容赦なく弾丸をウルトマに浴びせる。
「ちっ……!」
ウルトマは苦難の表情を浮かべる。
プレイヤー間戦闘では防衛行動をほとんど取らないモンスターとの戦いと異なり、回避行動や武器接触による剣戟が多く発生する。
ジサンの見立てによると、二人は相当な実力者であった。
このような数的不利の状況においてもここまで決定打となる攻撃を上手く避けている。
「君達、こんなことは止めなさい!」
そんなことを叫びながらヒロがウルトマに突撃し、激しい剣戟を繰り広げている。
「どういうつもりですか……!?」
「……」
ヒロの方がやや優勢のようで、ウルトマのHPが目減りしていく。
「くっ……!」
たまらずウルトマは後ろに大きくステップバックして、ヒロからの距離を取る。
「さて……」
(魔法:スロウ)
ウルトマが一息つこうとした時、発生したポップアップがそれを許さない。
[状態異常:低速化]
「なっ……!?」
そのポップアップの出現とほぼ同時にもう一人のおじさんが高速で迫り来る。
(スキル:魔刃斬)
「ぐわぁあああ!!」
魔刃斬を受けたウルトマのHPは一瞬で吹き飛び、膝から崩れ落ちる。
ウルトマはプレイヤーによる攻撃による行動停止状態となる。
「マスター! お見事です!」
ジサンから大人しくしてろと指示されたサラはぴょんぴょん跳ねて喜びを表現する。
「さーて、お友達、行動停止になっちゃったみたいだけど、この辺にしておいた方がいいんじゃない?」
シゲサトがパンマに忠告する。
「フッフッフッフ……」
だが、パンマは不敵に笑ってみせる。
「な、何……?」
「フッフッフッフ………………それじゃあ、お言葉に甘えてー!」
「え?」
パンマは本日、最高速度と思える身のこなしでウルトマを回収し、物凄い速さで去っていた。
「あ……行っちゃった……」
シゲサトが呆気に取られている。
「追いますか? オーナー?」
「え……? うーん……あの速度は離脱系のスキルじゃないか? もう姿も見えないし、深追いは止めておこう」
「そうですね」
「それにしてもあいつら……何者だったのでしょうか」
(……)
ジサンはヒロのことをチラリと見る。
ヒロは黙って、彼らの去っていった方向を見つめていた。
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