68.おじさん、同情する
「君達はまさか……! どなたです?」
シゲサトが現れた二人に尋ねる。
(……知ってるんじゃないのか?)
男女のペアである。
二人とも白い装備に身を包んでおり、雪の世界を背景にすると幾分、視認性が悪い。
「名乗る程の者でもないさ。名はウルトマという。こっちはパンマ」
普通に名乗っているなぁ……とジサンは珍しく相手に対して突っ込みを入れたくなる。
男性は口元に不敵な笑みを浮かべている。
頭の中心部分だけ頭髪を残し、それ以外を刈込んだ特徴的な髪型をしており、サングラスを付けており、表情は口元からしか読み取れない。
ジサンは、確かに氷の照り返しって結構強いんだよなぁなどと呑気なことを考えていた。
「貴方ってシゲサトさんで間違いないかな?」
今度は女性の方……パンマが口を開く。
ショートカットで、少々、丸顔であり、機嫌良さそうにニコニコしている。
「そうですけど……何か御用でしょうか?」
シゲサトの疑問にウルトマが明確に答えてくれる。
「えーと、まぁ……平たく言えば、キルしに来た」
「え!?」
その言葉と同時にウルトマ、パンマは殺意を露わにし、武器を取り出す。
当然、ジサン、シゲサトらは身構える。
「まさか、お前達が魔王討伐者を消しているのか!?」
「さぁ、どうだかね……答える義理はない」
「何でそんなことするんだ?」
(あ、いや、シゲサトくん、相手は答える義理はないと……)
「正義の執行……とでも言っておこうか……」
(…………)
ウルトマの一貫性のない言動にジサンは少々、混乱する。
「まぁね、ノルマなので悪く思わないでね!」
パンマは無邪気にそんなことを言う。
かつてサイカもそんなことを言っていたが、ゲーム化した世界でまでノルマに追われるなんて大変だなぁとジサンは思う。
「なっ!? 身勝手な……!」
「よくわからない連中ですが、私達も加勢しましょう」
ヒロがシゲサトに向けてそう言う。
「「え?」」
(……?)
ヒロの発言になぜか驚いたのはウルトマとパンマであった。
(私”達”と言ってもニャンコは相変わらず炬燵から出てくる気配はないが……)
「あ、はい、お願いします……まぁ、理由はよくわからないけど、相手がその気なら、どっちにしても返り討ちなんだよな……!」
シゲサトも結構、血の気が多いと思うジサンであった。
「マスター……! キルしてもいいのですか? キルしても……!」
「「え……?」」
サラがウキウキした様子で言う。
やはりモンスターとしての血が騒ぐのだろうか……などとジサンは思う。
襲撃時、そのような反応を返されたことがなかったのか二人は再び戸惑いを表す。
相手の方々の力量はわからないが、何となく気の毒に思うジサンであった。
「キルはダメだ。サラは少し大人しくしてろ」
そう言ってポンとサラの頭に手を乗せる。
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