67.おじさん、狙われる
ダンジョンの最奥に到達する。
カスミガウラ・ミズウミダンジョンのシクイドリはトリッキーな遭遇条件であったが、ここイワナシロコ・アイシクル・ダンジョンでのターゲット”ナイスクリーム”はシンプルにダンジョンの最奥に待ち構えていた。
ナイスクリームは体長50センチほどの小型で、アイスクリームのような不定形な姿にどこか憎めないニヤケ顔の目口が付いており、雰囲気としてはスライム系のモンスターに近い。
見た目だけで言えば、あまり強そうではないが魔帝討伐の条件となっていることを鑑みると、低ランクということはないという予想が立つ。
ボスのような位置づけなのかナイスクリームの方から攻撃を仕掛けてくることはなく、こちらの挑戦を待ち受けている。
「では、私達は見ていますので」
ヒロはそう言うと、一定の距離を取るように脇に逸れる。
「承知しました」
「それじゃ、ちゃっちゃとやっちゃいましょ。オーナー!」
「そうですね」
「ぐりぃいいいいいい!」
ジサンらが接近し、臨戦態勢になることで、ナイスクリームもその気になったようだ。
どこか憎めない奇声を上げて威嚇する。
「いくよ! ヴォルちゃん、やっちゃえ!」
その掛け声に呼応するように、ヴォルちゃんが口から火炎弾を放つ。
「ぐりぃいい」
ナイスクリームのHPが1/4ほど減少し、早くも残り3/4となる。
「やっぱり氷は融かすに限るよね!」
「ヴォっ!」
シゲサトとヴォルちゃんは上機嫌だ。
「ぐりぃいいいい!」
怒ったナイスクリームは目を三角にして、ジサンの方に突っ込んでくる。
「お……?」
ジサンもそれを受ける構えだ。
(スキル:陰剣)
「……ぐりっ!?」
ナイスクリームの体には、なぜか斬撃エフェクトが発生していた。
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ナイスクリーム ランクO
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戦闘は恐らく”分”の単位を使う前に終了する。
緑のおじさんは元々のターゲットよりもなぜかその場に居合わせたおじさんの方に目を奪われていた。
◇
「もう一体探さなくていいんですか?」
ジサンはシゲサトに確認する。
「い、いや、ドラゴンじゃないから大丈夫っす! ジサンさんがテイムしていればパーティとして条件は満たしているはずだし」
「そ、そうですか……」
シゲサトの大人な対応に、ジサンは何だか前回の自分の行動が少々、幼稚だったようにも思えて、少しへこむ。
実際、時間さえ掛ければ再戦できるシクイドリと異なり、ナイスクリームと再戦する条件は不明であった。考えられるものとして一度、ダンジョンを出てからもう一度、最奥に到達すればリポップすることは有り得るかもしれない。
だが、シゲサトにとっては本当にそれほど重要ではなかったようだ。
「でも、ドラゴンの時は妥協しないですよ! 覚悟しておいてくださいね!」
「……! わかりました!」
その言葉を聞き、ジサンは安心する。
「さ、そろそろこの寒いダンジョンからおさらばしましょうか」
ヒロがそのように提案するとほぼ同時であった。
「待って、何かいる」
シゲサトが緊張感のある声で警告する。
(……?)
「あらら、ばれちゃいましたか」
「……!?」
ダンジョン最奥部の入口側から二人のプレイヤーが現れる。
「君達はまさか……!」
シゲサトが驚くように言う。
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