66.おじさん、会話する
(いや……気にしないでいいよと言いつつ、それは流石に気になるだろ……何だそのアイテムは……)
ジサンはスキー炬燵を眺めながら思う。
(あったかそうだな……)
「あのぉ……」
「はい!?」
炬燵に見蕩れていたジサンに緑のおじさんが話しかけてきていた。
「あなた……何者なんです?」
「えっ?」
「シゲサトさんってソロで魔王を倒した人ですよね? 何で貴方みたいな冴えなそうなおじさんがパーティ組んでるのでしょう?」
(いや、だから貴方もおじさんでしょ。俺が言うのも何だが、割と冴えなそうだし……)
「いや、実は私もシゲサトさんもテイマーでして……それで協力して、仙女の釣竿を目指す流れになった次第です」
「へぇ……そうなんですか……どうりで……」
「えぇ……」
ヒロはジサンが使役していたフェアリー・スライムとシゲサトが使役していたヴォルちゃん(超縮小版)を交互に見る。
二体とも寒そうにしている。
「「…………」」
お互いに少し沈黙する。
が、ヒロが再び口を開く。
「ちなみにですが……どうして、そんなにゲームを攻略したいんですか?」
「え? いや、別に攻略とかは特に……」
「え? じゃあ、目的とかは?」
「え? 目的? これと言ってないですが……」
「はぁ……」
ヒロは呆れた……というよりは面食らったような顔をしていた。
(攻略というか、ただ、のめり込んだだけだ。目的、いくつかやりたいことはあるけれど、絶対に果たしたい訳でもなく断固たる目的と言うにはやや語弊があるだろう。せいぜい目標くらいか……)
「なんかすみません……そちらは世界の平和のために戦っているというのに……」
「あ、いや……はい……まぁ、そうですね……えぇ……でも、ちょっと予想外の返答だったもので……」
「そうですか」
「「…………」」
再び沈黙が流れる。
と、その時。
「オーナー……! モンスターだよ!」
「!?」
シゲサトが告げる通り、凍りついた石のようなモンスターが10体程度現れた。
(トウケツ・スライム……初めて見たモンスターだ)
6体はジサンら、4体はヒロとニャンコにエンカウント状態となる。
「ヒロさん、大丈夫ですか?」
ジサンは一応、心配する。
「あらら……」
が、ヒロに慌てた様子はない。
剣を取り出し、素早く動き回るトウケツ・スライムを的確に捉え、次々に斬りつけていく。
トウケツ・スライム達は一撃でHPがゼロになる。
ニャンコは全く心配していないのか、単に寒いからなのか、炬燵から出てくる気配がない。
(おぉ……流石に結構やるな)
「オーナー……! あと一体ですよ!」
「あ……」
ヒロの様子を見ていると、こちらもすでに掃除が終わっていたようだ。
どうやらジサンがテイムするように一体残しておいてくれたようだ。
「きゅぅうううう……!」
「あ……! 逃げる……!」
最後の一体は怖気づいたのか逃げようとする。
(あ……! 待て……!)
ジサンは咄嗟にトウケツ・スライムを追跡する。
「へぇ……速いな……」
ヒロはその様子を見て、素直な感想をこぼしていた。
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