64.おじさん、止められる

「アイシクル・ダンジョンに行かれるのは自粛した方がよいかと」


「いや、だから何で君達にそんなこと言われなきゃいけないんだよ!」


「ですから、魔王討伐者が何者かに命を狙われる事例が発生しており……」


「それは知ってるけど……」


(……)


 ジサンらはフクシマはイナワシロコ・アイシクル・ダンジョンへ挑もうとしていた。


 しかし、いざダンジョンの入口に来ると、なぜか待機をしていた赤の武装をした人々、P・Owerのメンバーの固そうなお姉さんらにダンジョン攻略の自粛を要請されていたのである。


「ってか、ダンジョン攻略だけ自粛しても意味なくないですか?」


「プレイヤー間の攻撃が有効なのはダンジョンだけですのでそれなりに有効かと」


「う……」


 シゲサトは抗議するもお姉さんも中々、強かった。


「どうしても止めるの?」


「どうしてもです」


「それってもう自粛要請じゃないよね?」


「……」


 お姉さんは眉間にしわを寄せる。



「まぁまぁ、行かせてあげなよ」



「!?」


 シゲサトとお姉さんが問答をしているところに別の男性の声が響き渡る。


「やぁ……!」


 男性は右手を軽く上げて、お姉さんらに挨拶する。


(あ……)


 そこにはジサンが辛うじて見覚えのある緑のおじさん、及びネコ耳の少女がいた。

 かつてジサンに職質をしたエクセレント・プレイスのメンバーであった。


「ひ、ヒロさん!? どうしてこんなところに!?」


「P・Owerさんが情報を展開してくれましたから……それより流石にそれはやり過ぎじゃないかな?」


「そうニャ! 実際、目的は守護じゃニャくてターゲットの捕縛ニャ?」


「し、しかし……」


 お姉さんはタジタジとしている。


(……もしかして、この緑の人、まぁまぁ有名なのか?)


「じゃあ、僕が彼らに付き添ってあげるから……それでいいかい?」


「…………ヒロさんがそう言うなら……」


 お姉さんはあっさりと納得する。


「シゲサトさん……すまないがそれで納得してくれないか?」


「えー…………まぁ、いいですけど」


 シゲサトはこのままではらちが明かないと感じたのか、渋々、合意する。


 ジサンも少々、嫌であったがシゲサトが合意してしまった以上、仕方ないかと諦める。


「ってあれ……」


「……!」


 ヒロがジサンを見る。


「………………どこかで見たことあるような……そちらの子も……」


(よかった……忘れられている)


 ジサンはほっとする。


「いえいえ、きっと初対面ですよ」


「そうですか……」


 ヒロは少々、腑に落ちない表情であった。


 何はともあれ、こうして奇妙なメンバー達のダンジョン攻略が始まるのであった。

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