62.おじさん、新しい牧場仲間

「ジサンさん……! お、お久しぶりです!」


ツキハがアセアセとした様子で挨拶する。


流石にスルーして、1Fに降りるわけにもいかずジサンとサラは99Fでエレベーターから降りる。


「お久しぶりです。えーと、どうしてここに? もしかして……」


「そのまさか。99Fを買っちゃったのよ」


チユが答える。


「え、えーと……皆で折半して……」


ツキハがやはりアセアセとした様子で言う。


「ツキハが3、俺とチユが1ずつ出して、ツキハ名義で購入」


ユウタが少し呆れたような仕草で言う。


「そ、そうなんですね……でもツキハさん、モンスター収集してましたっけ?」


「あ、えーと、正直に言うと、ここへのワープ権が一番の魅力でした……前みたいに急にカントウに来なきゃいけないこともあるかもしれないし……」


「そうですか……」


「だけど……実はテイム……始めてみました……!」


「えっ!?」


「流石に私のクラスでは使役はできないんですけど……」


確かに使役はできないもののテイム自体はテイム武器さえあれば可能だ。

月丸隊クラスになればテイム武器の一つや二つ、求めていなくても持っているだろう。

また、牧場があれば、魔物交配のスキルがなくても配合することができる。


「ジサンさんを見ていたら……テイム、ちょっと面白いかもって思っちゃって……」


「そ、そうですか……」


ジサンはこのツキハの発言は少し嬉しかった。

テイム仲間が増えることは喜ばしいことだ。


「マスター……マスター……」


(ん……?)


サラがジサンにだけ聞こえるように小声で言う。


「……あの女は何か企んでる……」


(え……!?)


サラはツキハが自身のマスターに対して、何か好意的なものを抱いており、そのために購入したのではないかということを伝えようとした。


しかしサラのマスターは少々、違うベクトルに暴走するのであった。


(ん……? 待てよ……)


ツキハがテイムを始めたということはまさか100%テイム武器”契りの剣TM”の返却を要求されるのでは? という謎のロジックにより、ジサンは恐怖を覚え、無意識に少しだけ後ずさりする。


「……?」


そんなつもりは微塵もないツキハは不思議そうにジサンを見つめている。


「でもツキハちゃんの購入動機……一番の理由はあな……」


「わぁああああああ!!」


「……!?」


チユが何かを暴露しそうになったのをツキハが大声で掻き消す。

ツキハが急に大声を出したのでジサンは少し脅える。


「と、とにかく……私達もここのオーナーになったので、これからよろしくお願いします……!」


「は、はい……こちらこそ…………って、あっ!」


ジサンが珍しく多少大きめのボリュームの声をあげる。


「ん? どうしました?」


「人を待たせているのを忘れていました」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る