61.おじさん、視察する
「それじゃあ、一回牧場に戻りましょうか」
「はい」
カスミガウラでのリバド出現条件を満たしたジサンとシゲサトはワープ権を行使して一度、牧場の様子を見るために戻ることにした。
何しろワープ権は一人のオーナーが週一回、パーティを引き連れて牧場に戻り、牧場を出なければ再び元いた場所に戻ることができる。
オーナーが二人いれば週に二回も牧場に戻ることができるということだ。
この権利を使わない手はないだろう。
「ワープします!」
「はい……!」
シゲサトがメニューをタッチする。
◇
「成功ですね」
無事に牧場にワープできたようだ。
1Fのエレベーターホールに三人は着地する。
「それじゃあ、また後で、ここで待ち合わせしましょう」
「わかりました」
そう言って、シゲサトは98F、ジサンは100Fの牧場へと向かう。
◇
「旦那様、お疲れ様でございます」
牧場に入ると、ジサンが来ることがわかっていたかのように、モンスターリーダーのディクロが迎えてくれる。
「おぉ、ディクロもお疲れ様」
「とんでもありません」
「何か変わったことはあったか?」
「いえ、大きな変化はありません……ただ……」
ディクロは目線を逸らすように言う。
「ただ?」
「いえ、大したことではないのですが、ここ最近、急にファーマーの独り言が増えたような…………」
「え……」
ジサンはふと生産対象について確認してみる。
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生産対象:
フックラ・オーク(素材)
ソフト・オーク(素材)
ホゲホゲ・オーク(素材)
サワヤカ・オーク(素材)
タクマシ・オーク(素材)
チキチン・チキン(素材)
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◇
「こいつとこいつの合成に成功すれば、より肉質が滑らかに……成長も早く、病気にも強い……ただ、脂身が増して少し舌触りがしつこくなるかも……でも、言葉を解することもなくなり、より家畜として……」
「茂木さん」
「ひゃいっ!?」
ジサンはディクロからの怪しげな情報に基づき、生産施設に足を運ぶ。
突然、ジサンから声を掛けられたサイカは驚いたのか変な声をあげる。
「あ、小嶋くん、来てたんだ」
「はい……調子は……どうですか?」
「おかげ様で……」
「ぎぃぎぃい」
「はい」
もはや付帯物と化しているギタギタも元気そうであった。
「ただ、前回、許可を貰って品種改良を始めてみたんだけど、なかなか思うようにいかなくって……」
「そ、そうですか……なんか新しいオークと……チキンが追加されてますが……」
「そうそう! このサワヤカ・オークとタクマシ・オークが品種改良で生まれたオーク。あとは少し幅を広げてみようかと思って、チキンにも手を伸ばしてみたの」
「そうなんですね」
副産物として、品種改良で追加されたオークはモンスター図鑑にも登録されていた。これはジサンにとって
「ただ、中々、うまくいかなくって、サワヤカ・オークは肉質なんかのパラメータは良さげなのだけど、知能のパラメータが高め……言葉が上手で、しかも妙に爽やか……流石にちょっと抵抗があるわよね……」
「豚に情など不要」
サラが口を出す。
「そ、そうかもしれないけど……」
「サラ……ここは茂木さんに任せよう」
「はい……マスター……」
最終的にはサイカの判断に任せようと思ってはいるものの、正直、一定以上の知能がありそうなオークの出荷はジサンもあまり気が進まなかった。
「それで、もう一匹のタクマシ・オークは妙に筋肉質になってしまって……あんまり食べるのには向いてないかな……」
「そうなんですね……」
「ごめんなさい……小嶋くんに納得のいく美味しいオーク肉を届けるまでもう少し時間が掛かりそう……」
「あ、はい……」
(…………俺に……?)
◇
「……さて、戻るか……」
「はい……! マスター!」
シゲサトとの待ち合わせ場所、1Fのホールに戻るべく、エレベーターに乗る。
エレベーターが下り始める。
(……お?)
が、予想外に早くエレベーターが停止する。
99Fでエレベーターが止まったのだ。
そして、エレベーターの扉が開く。
そこには当然、エレベーターに乗るために待っていた人がいたわけで……
「あ……」
ジサンが先にその三人の存在に気付く……
「あ!!」
「あらあら……」
「おっ、噂をすれば……」
ツキハを筆頭とする月丸隊のメンバーである。
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