60.ドラグーンさん、告白

「俺、元々、身体が女だったんです」


 P・Owerの二人が去った後、シゲサトが唐突にカミングアウトする。


「そ、そうですか……」


(……元々……とは?)


「でもですね、性違和っていうのかな……昔からなんだかちょっと違うなーって思ってまして……」


 ジサンは色々あるんだなぁ……と思いながら黙って聴く。


「グロウくんもあれで悪気があるわけじゃないんです……」


「はぁ……」


 ジサンは自治部隊にトラウマがあるせいもあり、あまり良い印象を抱いてはいなかった。


 グロウはシゲサトに好意を抱いていた。

 シゲサトはそれを拒絶した罪悪感から、ある意味でグロウに弱みを握られていた。



 ◇



 時間を遡る。

 それはゲームが始まりしばらく経った頃――


「健一郎くん、俺、魔王討伐を目指したい! 一緒にパーティ組まないか?」


 シゲサトは魔王討伐を目指そうと決意し、仲のよかった同級生の男友達を勧誘していた。


「今はグロウな」


「あ、そっか! グロウくん……!」


 シゲサトは言い直す。


「全く……調子のいい奴だ……」


「あはは、ごめんごめん」


「んで、勧誘の件だが……すまん、シゲサト、それは無理だ……」


「……! そ、そっか……そうだよね……」


「お前を命の危険に晒すことなんてできない……お前は俺にとって一番大切な人だから」


「え? もう……グロウくんは大袈裟だなぁ」


 シゲサトは苦笑いする。


「…………」


 だが、グロウの顔は真剣そのものであった。


「……グロウ……くん?」


「いや、大袈裟なんかじゃない……いい機会だ……言おう……」


「え……?」


「シゲサト……お前のことが好きだ」


「っっ!? え、えーと…………それは恋愛感情的な意味……だよね?」


「そうだ……男として……女のお前が好きだ……だから……もう自分のことを”俺”なんて言うの……やめろよ……」


「…………そ、そうなんだ……」


「俺は最近、組織化され始めたという自治部隊に入ろうと思っている……シゲサトも入らないか? 人々を守りたい……そして何よりお前のことを守りたい……」


「…………ご、ごめん……」


 シゲサトは身体はとしても、心は男であった。


 少なくともグロウのことを異性として見てはいなかったのだ。



 ◇



「イバラキ部隊のグロウです。ご報告があります。魔王:エデンを討伐したシゲサトをカスミガウラで発見しました」


 ……


「えぇ……恐らく仙女の釣竿を狙っています」


 ……


「いえ、とんでもないです。こちらこそ……」


 ……


「自治部隊の威信をかけて全力で守りましょう」


 グロウはP・Ower本部へと情報を提供する。

 魔王討伐をしたパーティを襲う謎の襲撃犯の拿捕。


 魔王:ガハニを討伐したP・Ower(K選抜)が殺害されたことで自治部隊ではその機運が高まっていた。


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