39.おじさん、最強のモンスター
「ぐぬぅうううううう……!」
ジサンが隣の船を見ると、ユウタが青ざめて腹を押さえ、うずくまっている。
(これは……)
「どうやらゲーム的
「なんと……」
AIのもたらした恩恵により従来型の病気は多くが克服された。
故に通常の疾患はいとも容易く完治することができる。
しかし、稀に一定の条件下でシック状態に陥るという。
シック状態は状態異常とは別に管理されており、一般的な状態異常回復アイテム等は無効である。
(……おっ……疾患名が表示されている…………”オークの呪い”?)
「ユウタ! 昨日、調子に乗って、オークカツ食べ過ぎたでしょ!!」
「うぅう゛う……否定できねえ……」
「オークの呪いって重篤なのかな……!? ユウタ……死ぬの……!?」
「何ぃ!? 俺は死ぬのか!? ならば、俺も女の子の中にでも……うぉおお゛おおお! 痛い!!」
「何、馬鹿なこと言ってんの!?」
(……マジか……!? ユウタさんにもしものことがあれば、世界の危機じゃないか…………俺に何かできることは…………あっ……!)
[ジサン:オークの呪いについて教えてくれ? いくらだ?]
ジサンはダメ元で、ぼったくり物知りシェルフに訊いてみる。
[ルィ:やっほー! ご利用ありがとね! 10,000カネだよー]
[ジサン:何!?]
[ルィ:何さ!?]
[ジサン:いや、良心的だなと思って]
[ルィ:失礼な……! すんごい武器とか魔王とかチート級の情報じゃなければこれくらいだよ!]
[ジサン:そうか……では頼む]
◇
「2~3日、安静にしていれば治るそうです」
「えっ!? 本当!?」
「はい……」
「よ、よかった…………」
ツキハとチユは心底、安心した様子である。
「でも、何で知ってるの?」
「あ、いえ……知り合いに物知りがいまして……」
誤魔化すのが苦手なジサンであるが、嘘じゃないので何とか言い訳できる。
「な、なるほど……ジサンさんは交友関係も豊かなんですね!」
「え……どうでしょう……」
多くはないが濃いメンバーが揃っているのは間違いない。
「この後、どうするかは考えるとして、とりあえずユウタには帰ってもらいましょうか……」
「そうね……」
チユの意見にツキハが合意する。
「す、すまねえ……」
「私も付き添おうか……?」
チユが言う。
「いや……付き添いはいらねぇ……これ以上、誰が欠けてもエスタに挑めないだろ?」
「……ごめん」
ユウタは付き添いを拒否する意地を見せつつ、ダンジョン脱出アイテムを使用する。
◇
ユウタが去ったことで一旦、パーティ編成をツキハ、チユ、ジサン、サラに変更する。
これにより船が一隻となり、一つの船に集約される。
「ごめんなさい……ユウタがこんなことになってしまって……」
「いや、仕方のないことです……」
「それで……本来なら仕切り直しと行きたいのですが、先程、少し言いましたが、アルヴァロの居場所が判明したようです」
「はい……」
「先ほど、”ヒロ”さんから連絡がありまして……」
(誰?)
「あ、ジサンさんに職質していたエクセレント・プレイスのメンバーのヒロさんです」
(……あいつか……!)
「自治部隊が独自で持つネットワークからの情報でアルヴァロの居場所を特定したと……可能であれば私達に協力して欲しいと……」
「はい……」
「まさかあんなところに配置するとは思わなかった……アルヴァロの居場所は、”空の大樹”……私達が討伐したラファンダルの居た場所に出現したそうなの……」
「なんと……」
「裏をかかれたわ……AIさんお得意の”先入観を抱くな”ってわけね」
“先入観を抱くな”とはゲーム開始時にAIから発信された二つのメッセージの一つである。
(すごく近い場所にいたのだな……)
「空の大樹ってことは当然、トウキョウに戻らなきゃいけない……まぁ、それはちょっと後で考えるとして、まずは目の前の脅威、エスタを倒さないと……」
「そうですね……」
「エスタは挑戦条件に”他の魔王の討伐”がある。これってつまり他の魔王より強い可能性が高い……」
「…………」
(可能性は高そうだ……最強の男……ユウタさんが抜けたのであれば、こちらも最善を尽くす必要がある……)
「だけど、私とチユ、ジサンさん、あとはジサンさんの使役モンスターで挑めば何とか……」
「いえ、サラも付けます」
「えっ!? サラちゃんも……? 確かにジサンさんより強いとは聞いていますが……って、その前にサラちゃんは挑戦ができないよ……!」
「……あと、こいつも付けます」
「え?」
[使役対象を”ドミク”から”ディクロ”に変更しました]
赤いロングヘアにオリエンタルな衣装。スタイル抜群のグラマラスボディ、特徴的な
「えっ? えっ?」
「やーっと出番ですか? 旦那様……」
「すまんな……」
「豚は話し相手には不十分です。ですが”子メンティスの佃煮”は極上でございました」
「そ、そうか……」
「え、えーと……」
ツキハ、チユはキョトンとしている。
「……紹介します。魔王:ディクロです」
その説明ではキョトンは全く解消されない。
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■ディクロ ランクR (ユニーク・シンボル)
レベル:100
HP:2523 MP:3956
AT:512 AG:665
魔法:ドレイン、ハード・ハート
スキル:搾り取る、ハート・ディフュージョン
特性:誘惑、幻惑
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