26.おじさん、メッセージ来る

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■ナイーヴ・ドラゴン ランクN

レベル:60(MAX)


HP:1392   MP:0

AT:640    AG:257


魔法:なし

スキル:剛爪、クリムゾンブレス、体を休める

特性:純粋、飛行

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(……ナイーヴ・ドラゴン……今日はよく頑張ったな……しかし、レベルがカンストか……ランクNは60が成長限界ということか……)


ジサンは一仕事を終えた旅先の旅館にて、壁に寄り掛かり座りながら端末を確認していた。


(!?)


と、急に見慣れないポップアップが出現する。


(……メッセージだ)


ジサンは恐る恐る開封する。


[ツキハ:この間は助けていただき有り難うございました。何とお礼を言ったらよいか・・・ぜひ直接、お礼に伺いたいのですが、お忙しいところ恐縮ですがお時間いただけないでしょうか?]


(うお、マジか……)


ジサンは努めて冷静を装う。


[ジサン:気にしなくていいですよ]


(……)


[ツキハ:そうはいきません。何とかお願いできないでしょうか?]


(うーむ、困った……)


[ジサン:わかりました。ですが、今、すでにトウキョウを離れていまして]


[ツキハ:そうですか・・・]


(うーむ)


[ジサン:トウキョウに戻りましたら、一報入れます]


[ツキハ:有り難うございます!!]


(意外と律儀な子だ……)


[ツキハ:あ、それと、差し支えなければですが、ジサンさんはボス討伐はされていないのでしょうか?]


[ジサン:積極的には行っていないです]


[ツキハ:そうなんですね・・・お強いのに意外です・・・で、あれば図々しいようですが、魔王:アルヴァロに関する情報をもしお持ちでしたらご提供いただけないでしょうか?]


(……?)


[ツキハ:今、私達は魔王:エスタとアルヴァロの討伐を目指しています。理由はこの二魔王の報酬が凶悪すぎるからです]


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魔王 エスタ

┗魔具:最強千 最上位プレイヤー同等になれる


魔王 アルヴァロ

┗魔具:呪殺譜 任意のプレイヤー一名を死亡させる

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(冷静に見ると確かにすごいな……)


[ツキハ:特にエスタの方は悪人に渡ってはいけないものだと今回の件で強く思いました]


(……)


強化バフ弱体化デバフ、どちらが効果的かの話に似てるなとジサンは思う。


確かに一見、アルヴァロの方がやばそうだが、長い目で見るとエスタの方が危険ではある。


[ツキハ:差し当たって守護するダンジョンが公開されているエスタの方から行こうと思っています。エスタは挑戦条件に他の魔王を討伐していることがあるようで、すぐに他の人に取られてしまうことはないですが……]


[ジサン:なるほどです]


[ツキハ:なので、もし討伐を目指されていないのでしたら、エスタ、アルヴァロに関する情報が入りましたらお手数ですが、教えていただけないでしょうか?]


[ジサン:わかりました]


[ツキハ:それではお時間とらせてしまい、すみません。ご連絡お待ちしています]


[ジサン:わかりました]


(ふぅ……女の子とメッセージなんていつぶりだろうか……下手したら学生時代の茂木さん以来かもしれない……)


ウエノでの出来事の翌日の夜、ツキハはジサンにお礼のメッセージをしていた。


冷静に考えると来てしかるべきなのだが、ここのところ人付き合いとは無縁であったジサンは全く予期しておらず、内心かなりドキドキしていた。


(さて……)


[ジサン:アルヴァロの情報教えてくれ]


(……)


[ルィ:やっほー! 初めての遠隔利用ありがとね! 魔王:アルヴァロの情報? 有料だよ]


[ジサン:いくらだ]


[ルィ:十億カネです]


(高っ! 相変わらずぼったくりだな。流石に人助けでこれはきついな……)


[ジサン:やめとく]


[ルィ:あら、残念。たまには私のところに遊びに来てねー]


(……遠いからなぁ)


「マスター……先ほどから何をしてるのですか?」


旅館につき、浴衣姿のサラがチョロチョロと寄ってきた。


「ちょっとな……」


「ふーん、怪しいです」


「気にするな……」


「はーい」


サラは深くは詮索してこない。


「さぁ、今日はもう寝るぞ……」


「は、はい……」


ジサンは電気を消して、布団に潜り込む。


「あ、あの……マスター……」


と、サラが小さな声で話し掛けてくる。


「ん……?」


「私のこと……テイムしなくていいんですか?」


(……)


確かに”契りの剣TM”があれば理論上、サラを再びテイムすることもできた。


「……いや、今はこのままでいい」


「そ、そうですか……」


サラは複雑そうであった。


ジサンがこのままでいいとした理由はいくつかある。


まず最大の理由はサラを倒すことはできないと思っているからだ。

”契りの剣TM”によるデバフ状態では、大魔王であるサラに勝利することは超高難易度であった。


ゲーム的にサラが手を抜くことができるのかどうかも不明であった。

実際のところ、ボス:サラには”ドラマチック演出権限”と呼ばれる状況次第で強弱を変更することができる権限は付与されていなかった。


そしてもう一つはサラをテイムしない方がモンスター枠を一つ多く使えるという利点があった。


このような合理的な理由……がなかったとしても恐らくジサンはサラをテイムしなかっただろう。


「あの……マスター」


(……今度は何だ?)


「添寝……してもいいですか?」


「……」


サラはこうして時々、添寝をしたがる。


……寂しいのだろうか?


ジサンはふと思う。

モンスターにも父や母はいるのだろうか……

今の俺は父や母に甘えたいなどとは僅かばかりも思わないが……昔はどうだっただろうか……


「あぁ……」


「有難うございます!!」


「……」


サラが背中側からピトっとジサンにくっつく。


(俺にちゃんとこの子を育てられているだろうか……)


と妙にまじめに考えているジサンは……


はわぁあああああん! ラヴ! ラヴ! マスター!! ラヴ!! 激ラヴ!!


と心の中で叫ばれているとは思っていない。





翌日……


「え……? どういうこと?」


ジサンとサラはチバの南側、カモガワオーシャンダンジョンに来ていた。


ジサンは珍しい海洋ダンジョンということで、トウキョウに戻る前にぜひとも寄ってみたかったのだ。


しかし……


(……これ、ダンジョンじゃなくて、普通の……)


それはダンジョン化する前の”カモガワオーションワールド”の姿であった。


「マスター……今日は”回帰日”のようですね」


(え……? なんて?)


「せっかくだから観ていきませんか? 私、行きたいです!」


「あ、はい……」


こうしてサラを水族館に連れて行ってやることになった。


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こうしてマスターと水族館デートが始まる!


添寝シーンのサラの心情を描写したSSをサポ限で公開しておりますので、もしよかったらどうぞ。(挿絵付きです)

https://kakuyomu.jp/users/kojinayuru/news/16817330666975197057

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