05.おじさん、とんでもない者を配合する

第四魔王:アンディマの討伐が報されてから三か月経過した。


ダンジョンは地下90階層を超えると難易度は急激に上昇していた。


一階層の攻略に一か月の期間を要するのもざらになっていた。


ジサンの目下の目標は92階層の攻略であった。


午前3時。その日もジサンは探索を終え、キャンピングツールの中で休息に入っていた。


アングラ・ナイトがクラスレベル10で習得したスキル”巣穴籠り”により、約5分の時間を要することで、ダンジョンのどこにでも安全な地下キャンプを作成することができた。


このスキルにより、わざわざ生活施設に戻らずに翌日も探索を再開することができ、非常に重宝した。


アングラ・ナイトは地下探索に便利なスキルをいくつか習得できるようで、ジサンはとても気に入っていた。


(さて、今日はいいモンスターは生まれるかな……)


夜間の休息時間はすなわち、彼の密かな楽しみ……モンスター配合の時間である。


===================================

ダーク・フェアリー    ランクP

ゴッド・ゴートン     ランクP

フェアリー・スライム   ランクO

ライトニング       ランクO

ギダギダ         ランクO

===================================


ジサンが現在所持している最高ランクのモンスターは二体のランクP、三体のランクOであった。その下のランクNのモンスターはこつこつと溜めて、50体ほど所持していた。


(Nランク同士でいくか……)


ランクNであれば、うまくいけば野良でもテイム可能である。まずはセオリー通りランクN同士の配合でランクO、ランクPを狙っていく。


(今日はとりあえずランクPが一体出るまでやるか……)


■1回目

ブリザード・ファング(ランクN) × ガイアックス(ランクN)

⇒グランド・スフィア(ランクN)


■2回目

ナイーヴ・ドラゴン(ランクN) × エンペラー・シザー(ランクN)

⇒センシティブ・ドラゴン(ランクN)


■3回目

グランド・スフィア(ランクN) × センシティブ・ドラゴン(ランクN)

⇒ナイーヴ・ドラゴン(ランクN)


(……またナイーヴ・ドラゴンか……まぁ、もう少しやれば良いのが出るかな……)


………………

…………

……


50体のランクNモンスターがいれば、1回の配合で1体ずつモンスターが減っていくため結局、49回の配合を行うことができる。


最初は49回もやるつもりはなかった。


しかし、今日に限って、一体もランクOやPが出現しなかった。


これが最後……もう一回やれば出るだろ……というガチャの魔力にことごとく敗北したジサンはついに49回目。


■49回目

ジクー・ドラゴン(ランクN) × スライム・ヒロイン(ランクN)


(……本日、最高の組合せだ。これで出ないならクソゲ―……おりゃっ!!)


[ナイーヴ・ドラゴン(ランクN) が生成されました]


(……………………うがぁああああああ!!)


ジサンは一人、頭を抱える……


運が悪い日は当然、これまでもあった。しかし、こんなに運が悪い日は流石に初めてであった。


(…………こ、こうなったら……)


ジサンは血迷う。今でこそ最下層到達プレイヤーであるが、元はただの自殺志願のコミュ障。そんなおじさんは衝動を抑えることができなかった。


ダーク・フェアリー(ランクP)

ゴッド・ゴートン(ランクP)


彼の所有する最高ランクの二体。


(さ、流石にもったい……い、いや、仮に失敗してもランクPより下にはならない……)


[配合を実行しますか?]


[はい いいえ]


(やっちまえ!!)


ジサンはやけくそ気味に”はい”を押す。


[サラ(ランクS) が生成されました]


(えっ……S? P、Q、R……エス!?)


その時、普段の配合と異なり、光エフェクトが発生する。


そして、ジサンの目の前に小柄な女の子が出現するのであった。


女の子は130センチくらい。肌はやや褐色で、髪は白銀で少し長い。。スレンダーな割に出るところは出ている。

赤い瞳に、やや小さいが雄山羊のような二本の巻き角。

露出度の高いエキゾチックな衣装、何より小柄なわりに目を奪われるような美しい容姿をしていた。


ジサンは驚き、尻餅をついてしまう。


しかし、その女の子は尻餅をつくジサンの前で跪く。


「我はサラ――魔族の者」


(……………………しゃべった)


「召喚に従い……貴方にこの身、この心、全てを捧げます」


===================================

次話「おじさん、ランクSを野に放つ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る