第59話 世界的有名アーティスト

『共演?』


『そ、共演』


ライブ1日目が終わった後、華果から連絡が入った。

ライブ会場の近くのホテルに泊まっている俺は、スイートルームのみ用意されている、屋上テラスでのんびりと夜景を眺めていた。


ドーム近くは街全体が栄えていることもあり、交通量が多く、ここ25階まで車の音や街の音が少し聞こえる。


『明日のライブ、共演だからよろしくね〜』


『え?あ、え?』


突然の報告に、俺が動揺しているところ、勢いよく電話を切られた。

共演って、どう言うこと、、、?

スタッフやマネージャーからも聞いていない話。


急遽入ったとも思わない。

もしも、急遽入ったこととしたら、冗談ではないぐらい、今夜は忙しくなる。

このホテルには関係者の3割が泊まっている。


しかし、スタッフがホテルを出ていく姿は確認できない。


どう考えても、イタズラ電話としか思えないが、声のトーンや華果の性格的に、冗談ではなさそう。

俺の予想が当たっているとするならば、明日はとんでもないことになりそう。


だって、華果だから。



★☆★☆★☆★



翌日の朝6時、目を覚まし、ベッドから降りた。

久しぶりの熟睡に俺も気分が上々だった。

食堂へいくと、朝食が用意されており、軽め(?)の朝食が置かれてあった。


有名なホテルだと言うこともあり、料理も申し分ないほど美味しい。

焼きほやては絶品だった。


「あ、有闇さん」


「おはよう、和也くん〜」


目を擦る有闇。


「今日のライブも絶対に成功させましょうね」


「もちろん、昨日も言ってたでしょ?時代、ぶっ壊そうぜ!って」


「まぁ、それに近しいこと言いましたね」


「私、感動しっちゃったな〜」


「今日も誰もが感動するパフォーマンスができるように頑張ります」


「期待しておくね(笑)」


そして、俺は身支度を済ませ、ホテルをチェックアウトしたのち、会場へと向かった。

今日は知り合いはいないはず。

昨日で知り合いは全員来ていると思う。


「あ、健斗さん。これ、お願いします」


「はい、了解です」


今日のスケジュール表のようなものが渡され、22時までは予定がびっしり。

信じられないほどの、ハードな1日が始まった。


「照明、音響、大丈夫ですか?」


「「「は〜い」」」


「バンドの皆さんも、準備はよろしいでしょうか?」


「「「「は〜い」」」」


「では、2日目も頑張りましょう。昨日と同じように、世界を揺るがすパフォーマンスをしましょう」


俺はステージに上がった。

目の前はペンライトで輝く海のような場所。

光が波となって、押し寄せてくるかのような迫力。


感動を誘うかのような、ファンの動員数や物販の売り切れ。

全ての条件が揃っていた。


「こんちには〜」


昨日同様、会場は歓喜の声に満ちる。

男性ファンと女性ファンの比率が大体同じぐらいなので、歓声が低かったり、高かったりなどが起きなく、いい感じの高さで聞こえてくる。


なので、歌っている間に声を上げても、歌唱の妨げになることがない。


「そっち大丈夫?」


「動いたから、動かして!」


「カメラ!動かして!」


「音量とか大丈夫ですか?」


裏では慌ただしく、色々なことが行われていた。

その間、俺は自分が思う、全身全霊の、最高のパフォーマンスを披露した。

自分の中で、これ以上にないほどの。


まさに、世界で一番のパフォーマンスを。


「ありがと〜!!!」


演奏が終わると、俺は舞台袖にはけた。


「今日は最後何もないですよね?」


「そうだね、アンコールも禁止になってるから」


「じゃ、お疲れ様です」


ここで、ライブの二日目が終わった気でいていたのは、ここだけの話。

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