3章 後半
第57話 さぁ、今の世界をぶっ壊せ。
あれから時が流れ、ついにライブ当日へやってきた。
これまでの一ヶ月と言う期間に、どれだけの人達が関わってきたか、、、。
警察なども総出で行う、このイベント、失敗は許されないものとなっていた。
現場はピリついた空気感になる。
証明、音響、全ての人が手に汗をかく時を過ごした。
リハーサルは計12回。
一部分のみのリハでは100回を超えている。
何度も何度も、立ち位置の確認や、音響の確認など。
ドームを借りているので、プロ野球の試合も別の球場ですることになっている。
これだけの関係者さんにお手伝いをしてもらっていて、俺のパフォーマンスが悪ければ、水の泡となってしまう。
そう考えるだけで、鳥肌と寒気がしてきた。
家を出る前の話。
「頑張ってね!」
「お兄様ならいける!」
「落ち着いたら、いける」
「まぁ、今日くらいは、、、。頑張ってね、、、」
緊張は解けないが、謎の自信が湧き出た気がした。
家族にこうやって、応援されるなんて、いつぶりだろうか。
母親は今も会社で必死に働いてくれている。
「じゃ、頑張ってくる」
朝の5時、そう言って、会場へ向かった。
★☆★☆★☆★
電車には始発に乗り、俺が一番初めに会場に着くことになっている。
俺のファンである、勝が会場にいち早く来て、ラジオ体操をしているはずだ。
親友として、勝のルーティーンを完全に把握している俺には、GPSがなくても、勝がどこにいるのかぐらいわかる。
そう、今日だけは会ってはいけないのだ。
こっそりと、関係者用通路から、舞台袖に入る。
俺が現場に着く頃には、朝日が昇っていて、雲一つない空に茜色の光がさした。
幻想的な空を眺めたいところだが、今から衣装に着替えたり、30分後のメイクなどの準備を進めなくてはならない。
本番まで、やることは山積みだった。
鏡を見ると、自分の目の下にあったクマはすっかりなくなっていた。
有闇化現象から、この日だけ抜け出したようだった。
繰り返すこ・の・日・だ・け、だ。
ジーンズとパーカーの服から、ライブ衣装へ着替えると、少し体が楽になったが、それ以上に緊張感が増した。
そして、朝の7時をすぎると、続々と関係者の人が入ってくる。
そして、現場は着々と準備が進められていく。
メイクの人も到着したみたいなので、それに合わせてメイク室とやらで待機することにした。
睡眠薬などは飲んでいないが、昨日は快眠できた。
夜の8時は、自分には早すぎて、寝れないと思っていたが、有闇化現象が深刻化している俺には簡単に眠に着くことができた。
エナドリを飲んでいないと、ここまで違うのか、、、。
何故か、少し感動を覚えた。
「メイクの力って凄いんですね、、、」
俺の顔を完全なる上方修正した顔(当たり前)。
わかりにくいだろうが、印象が少し柔らかくなった気がする。
「ライブ中は優しく微笑む感じでいくと、いいと思いますよ!ライブ頑張ってください!応援してます!」
メイクの人がそう言って、部屋を出て行った。
「よし、じゃあ頑張りますか」
「和也くん頑張ってね!」
「あ、有闇さん。頑張りますよ!」
俺はいつもより、少し大きめの声を出した。
多分、人生でこれ以上大きい声を出すことないだろう。
そして、舞台袖に移動した。
「健斗さん、準備はいいですか?」
「衣装大丈夫ですか?」
「大丈夫です」
そう言うと、俺は正面を向く。
「最後に円陣組んでおきませんか?」
「あぁ、いいですね」
その場にいる、20人の人が円状になる。
そして、肩を組んだ。
「みなさん、今日は絶対にライブを成功させましょう。そして、八剣健斗のライブはこれほどまでに、完成度が高いのか。と言わせるほどのものにしましょう。さぁ、今の世界をぶっ壊せ。新常識を作りましょう!」
「「「「「「「「「おう!!!!!!!!」」」」」」」」」」」
さぁ、行こう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます