第55話 コラボ配信

ーーー配信開始10時間前。


「じゃんけん弱すぎないか?」


「そんなことないですよ!」


生徒会室でじゃんけん大会をしていた。

じゃんけんとは誰でも出来る超簡単かつ、色々な場面で使える汎用性が極めて高いゲームの一つである。

そんなじゃんけんでは、余ったものを取り合ったり、重要なことを決めたりなどで、学生がよく用いるゲーム。


【自分の思い通りにいかせる為には、じゃんけんが強くならないといけないのだ!】


そんな中、生徒会室にあった、カフェのケーキ無料券をかけた戦いでとある一人の生徒会メンバーがじゃんけんが弱すぎるということが判明した。


そう【七条菜沙】である。


絶対音感の持ち主である、彼女。

学力もそこそこあり、この学校では何をやっても『そこそこ』出来るで有名。

しかし、彼女の特性上、音楽以外は『そこそこ』であり、それ以上上手くなろうと思えば、人並み以上の努力を強いられる。


そして、今、彼女はじゃんけんが『そこそこ』で止まっているのであった。


生徒会メンバーはじゃんけんにおいて、前例のないほど強いメンバーが集まっている。

小学校では、給食で余ったデザートを必ず手に入れれる猛者しか集まっていない。


はずだが、一人だけ『そこそこ』なので、このメンバーの中にいると『弱い』の部類に入ってしまうのだ。


「なんで、石墨くんと会長だけがケーキ食べれるんですか!」


「菜沙さんがそんなこと言ったって、俺たち勝ったんですから」


「和也は小学校の頃から強いで有名だからな。まぁ、小学校一緒じゃないけど」


「「欲しければ、じゃんけんに勝て」」


菜沙は涙目になる。

じゃんけんの絶対王者は格が違う。



★☆★☆★☆★




ーーー配信開始5時間前。

生徒会の仕事が終わり、帰宅した直後のことだった。

リビングがやけに静かだった。


いつも騒がしいリビングが静か。

これだけでも、何か嫌な予感を感じる。


「誰もいない、、、?わけがないよね」


部屋は真っ暗。

誰かがいるとしたら、部屋は明るいはず。


「た、助けて、、、」


部屋を開けるとぐったりと倒れ込んでいる美鶴。


「ギャァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!って、え?」


「演劇部のホラー作品の練習に手伝ってたの」


「あぁ、、、なるほど、、、」


特殊メイクなどはされていないが、血まみれのTシャツを着ていたので、それっぽくなっていた。

正直、寿命が3年縮むかと思ったほど、驚いた。


「和也くん、ビビりすぎ(笑)」


「突然されたら、誰でも驚くって」


「もしかして、怒ってる?」


「別に、、、」


「怒ってるじゃん!ねーごめんって〜」


驚いて損をしたというか、男として恥ずかしいところを見せてしまったというか、、、。

なんとも表難い感情になる。


「配信前だから、準備してくる」


「だから、ごめんって〜!」


美鶴の声は家中に響いた。



★☆★☆★☆★



ーーー配信開始30分前。

俺は着々と配信準備を進めていた。

これまでにないほど、今回は緊張している。

予定では雑談配信となっており、初めて話す人だが、まぁ話題は色々とあるから大丈夫だろう。


配信は俺のアカウントで行うことになっている。


配信開始5分前に通話を開始し、配信を開始する。

そして、5分間は待機画面を表示させておき、その間にマイクテストなどを行うことになっている。


準備は万端だった。


本当にあの人なのか、、、。


あの時からずっと思っていたことが、今明かされる。

興味本意だが、調べてみる価値はある。

そして、配信が終わったあと「少しお話ししませんか?」といい、相手を引き止める。


完璧だ。


あとは円滑にことを進めるだけ。


『初めまして〜』


『あ、初めましてです』


15分前には通話を開始した。


ーーー夏風さん、本当にあの人に声が似てるな。


頭にあの人の声が過ぎる。


『八剣さん?音声大丈夫ですか?』


『あぁ、ごめんなさい。大丈夫ですよ』


『たまに、途切れる時ありますからね〜』


『ですよね。ルーターの調子が悪くてとか』


『あ、配信開始押してください』


『了解です』


話しているうちに、15分経ってしまっていた。

そして、配信を開始すると、同接100万人からのスタート。

これだけでも十分やばいが、これ以上に増える。


『どうも〜。最近、フリーになりました。夏風瑠璃で〜す!』


『こんにちは、万年フリーの八剣健斗です』


『www、もしかして自虐ですか?』


『自分からフリーになってるので、半分合ってて、半分間違ってますね』


《万年フリーwww》《草》


コメントが高速で流れる。

今日の配信は、とてつもない同接数になりそうなので、裏方は俺のマネージャーと有闇の二人でやってもらっている。


『夏風さん』


『はいはい、なんでしょう』


『フリーになって、メリットとかデメリットとかありますか?』


『メリットは、、、事務所に行かなくても良くなったってことで、デメリットは、自分から企画を持ってこないといけないってことですかね〜。あと、マネージャーも今はいないので、一人でやらないといけないとことか』


『マネージャーとか募集しないんですか?』


『まぁ、しないですね』


『マジっすか』


『なんか、一人の方がやりやすいっていうか』


『意外とそうなんですね』


コメント欄は大盛り上がり。

中には色々質問などが入っている。


『あ『質問です。健斗くんは、休日何をしますか?』ですって』


『休日ですか〜。基本的にはゴロゴロしたりしてますね〜』


(まぁ、生徒会で忙しいんだけど)


『次『好きな人いますか?』』


『え?あ、いま、、、』


回答によっては、色々と地雷を踏みそうな質問。


『パスで』


『私も気になるんですけど!』


『パスで』


危なかしい配信だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る