第54話 久しぶりと初めて、そして配信。

『お久しぶりです』


そんなこんなで始まった、俺の久しぶりの配信。


『フリー配信者の八剣健斗です』


同接数は驚異の300万人。

全世界の人が俺の配信をみて、この数となっている。

現在の時刻的にはゴールデンタイムとなっているからなのか、いつもより同接が多い気がする。


そんなことは置いといて、これからのことをファンの皆様に伝えなければいけない。


俺はマイクの位置を調整して、リスナーの人にマイクの音量の確認をしてもらう。

インターネットの通信エラーも起きない環境にしてある。

流石、現環境最強PC。配信をしていても、全く重くならない。


今は立ち絵がない都合上から、2Dのイラストは動かしていないが、このパソコンなら絶対に動かしても問題ないと感じた。


《久しぶり〜!!!》などのコメントで埋め尽くされるコメント欄。

光の速度で流れるコメント欄は配信者である、俺ですら見切れない。


裏ではコメント欄の整理をしてくれる人がいるんだよな〜。


ちょっと感心した。


『今回の重大発表の前に、お知らせしなければいけないことが』


《なになに?》《気になるぅ!》《なんだ〜》


『グッズの再販が決定しました』


《うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!》


今までは一部店舗のみ、余りものを所持しており、ネット通販などでは全て品切れだった。

しかし、再販が決定したことにより、公式サイトから無限に買えるようになった。

缶バッジを大量に購入したり、クリアファイルを大量になったりなどをしている人にはとてもありがたいこと。


俺の活動が再開するとTmitterで呟いた30分後にはもう、製造会社から打診が来ていた。

自分の影響力がどんどん怖くなってきた。


久しぶりの配信に少し戸惑ってはいるが、重大発表をおえるまでは配信は終わらない。

予定では1時間程度の配信となっている。

しかし、この調子でゆっくり話していると、確実に2時間コースだ。


俺の体力が切れるまでに、どうにかして発表を終わらさなければ。


『そして、重大発表なのですが』


熱が収まらないコメント欄。

全世界同時配信ということもあり、タイムラグが発生する。

そして、英語やイギリス語、中国語などの言語を全て日本語に直すようにしているので、その仕組みのせいで、かなりの時間をくっている。


俺のHPは約30まで陥っていた。


体力が持たない、、、!


ここにきて、配信をしたことに酷く後悔をした。

不慣れなことには、当然人間は体力を使う。

そして、体力がなくなったら、何も話せなくなる。喋りたくなくなる。


配信では声が命なのに、それが封じられると終わりと言っても過言ではない。


《再販は神すぎる》《最高か?》


3分経った今でさえ、この話が続いている。

強引に止めるしかないのか、、、?


『重大発表です』


はっきりと言ったその声は、まずは日本、そして世界へと広がっていった。


『この度、八剣健斗は、ドームライブを開催したいと思います!』


すると、突然何もかもが全て固まり、パソコンもその一瞬だけ固まった。

動かない。あれ?


すると、突然動き出し、コメント欄は最高速に達していた。


一度にコメントが大量に送信されたため、固まったのだろう。


一気に同接は落ちたが、1分後には復活した。


普通のパソコンなら、重すぎてサイトが使い物にならなくなる。

それを察したリスナーは咄嗟に、配信をブラウザバッグしたのだろう。


ドーム公演という言葉に、リスナーは驚きを隠せない。

俺も初めは耳を疑った。

しかし、やろうと言ってくれた。


ドーム公演を実現してくれた人がいる。


「頑張った甲斐があるな〜」


その夢を叶えさしてくれた人はまた、マグカップを片手に、ドヤ顔をした。




★☆★☆★☆★




「会長、八剣さんが再始動するらしいですね」


「あ〜それなんか聞いたことある」


「今まで、頑なに配信を拒否していたのに、どういう風の吹き回しでしょうね」


「さあ、俺は本人じゃないからわからないな」


最大限の嘘で固められた、この男。

自分が配信者ですなんてことを言った暁には、大騒ぎになること間違いなしだ。

そして、春休みの終盤に差し掛かった、生徒会にはやることはほとんど残っておらず、対してやることもないので、スマホで動画をみたりなどして遊んでいた。


他の役職についているメンバーも全員スマホをいじりだした。

この学校で唯一、スマホを自由に触っていもいい場所で好き放題にやる、生徒会メンバー。


これではいかん。と我に帰った俺。


「生徒会メンバーたるもの、スマホばっかりいじっていてどうする」


「会長、そっくりそのままお返し致します」


「うっ、、、」


渾身の攻撃を跳ね返されてしまった気分。

特にやることがなかったので、俺は早々と生徒会室を出ることにした。


「仕事があったら、俺の机に置いといてくれ」


「「「はい」」」


ガチャッ。

その音と同時に、生徒会室にいるメンバー全員は顔を見合わせる。


「もちろん」


「な」


机の下に置いてあった資料の山を会長の席へ置く。

そう、つまり全員がサボりと言うわけであった。

会長の机に置いておくことによって、和也の優しさによって、仕事が減る。


そう、生徒会室には優秀な人しかいない。


こういうところで頭脳を使う。

ある意味、賢い戦法と言っても過言ではない。


そんな、生徒会での出来事であった。



★☆★☆★☆★



家に帰っても、結局やるべきことは沢山ある。

まずはオンライン会議。

企画をマネージャーと話し合い、それについての予算などを出していく。

経費などの仕事もフリーの配信者の俺は、マネージャーの仕事になっている。


『次の配信は久しぶりのコラボ配信ということで』


『それで行きましょう』


『コラボ相手はこの方でよろしいのですか?』


『オファー出して、無理だったらこの人で』


『拒否する人なんていないでしょ』


『そうかもしれませんけど、念には念をで』


俺の重度の心配性にはマネージャーも頭を悩ます。

最近は、俺の配信や色々なことの手伝いで、有闇が仕事することもある。

もちろん、その都度給料は渡しているが、たまに自分から率先してやる時もある。


しかも、無賃で。


本当に、そういうところは尊敬に値すると思っている。


『じゃあ、オファー出しておきますね』


そういって、会議は終了。

コラボ相手の方、承諾してくれるといいなぁ。


俺は心の底から、そう願った。

その人は俺の憧れの人であり、一回話すチャンスはあったが、話せなかった人。


女性配信者の中では、かなり有名で、声も可愛くて、性格も良い、さらに歌も上手い。

完璧超人のような人。

過去活動していた時、一度オファーを出したことがあったが、拒否をされてしまった。


そう、人生で初めてオファーを拒否された人。


ーーー今回は通るといいな。


俺はこの願いを叶えるべく、倉見神社へと足を運んだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る